15.周辺探索
Side: 府谷恭平
あの地震から2日経った。
ここが何処だか未だにわからない、情報が無さすぎるのが原因だ。
「隣りの村と揉めて無ければ色々と話を聞けたかもしれませんね。」
死村くんが言う。
「水は必須なので仕方ないさ、それはそうと情報を集めたいが何か良い方法はないかい?」
「外に出て話を聞くか、人を招いて話を聞くかですよね。」
「そうだよなぁ、ドローン飛ばすだけでは限界があるし。」
「募集を掛けたらどうです?周辺探索に行ってくれる希望者を。」
「いや、流石に居ないだろうとは思うがやるだけやってみるか。」
とチャットで募集を掛けたところ、1人だけ応募して来た。
「下平さん、本当に大丈夫ですか?」
「猟師をしていたので山歩きは得意です。」
「確かに山歩きも周辺探索にはなりますが。」
「大丈夫です、人に会えば話くらいはしてみます。もっとも、どんな動物が狩れるかの方が気になりますが。」
周辺探索の希望者で募集を掛けたところ下平さん1人が応募してきた、理由は狩猟対象となる動物の調査だ。
山の中なら、敵対的な人物に遭遇しても逃げ切れるとの事だそうだ。
調理班からも肉の調達は依頼されていたし、この際、下平さんを中心に狩猟班を立ち上げてもいいかもしれない。
「武器は普通の弓矢だけで大丈夫ですか?」
「こちらの方が慣れてますので。」
確か弓矢での狩猟は禁止されていたのでは?と思ったが突っ込むのは止めておこう。
今はそこは重要ではない。
「とりあえず、揉めている村とは反対方向を重点的にお願いします。」
ドローンで確認したところ、そちらの山向こうには集落があるみたいなので、上手いこと友好的なコミュニケーションが取れないかなぁと期待している。
「それではお願いします。危なくなったら直ぐ帰って来て下さい。」
Side: 下平兵
山に分け入っていく、後ろを振り返ると微かに天尊配送センターが見える。
「確か、ここら辺はアウトレットモールがあった所だったかな?」
このアウトレットモールにも配送で良く行っていたなと思い出しながら歩く、ふと獣道の様な場所に出る。
「猪や鹿のような足跡がある、少し辿ってみるか。」
獣道を辿り山を登ると見晴らしの良い場所に出た。
尾根を越えたらしく眼下に集落が見える。
「確かに集落があるな、直接話しかけてみるのも一つの手だが、上手く行くイメージが湧かないな。」
と悩んでいると、遠目に騎馬武者が何騎か集落に駆け込んでいるのが見えた。
給水機で隣り村と揉めた事が関係しているかもしれないと思い、近づかない方が安全だろうと判断した。
「このまま訪ねても厄介事に巻き込まれそうだ、最初は森の中で少人数を相手に話をしたいな。」
ふと視線を手前に戻すと人が倒れているのを発見する。
こんな近くで遭難者か?と思ったが、気になったので行ってみることにした。
近くで見ると武者鎧を着ている、矢が所々刺さっており落武者みたいに見える。
気を失っているみたいなので声を掛けてみようと近づいてみる、すると。
「お主何者だ、猟師にしては珍妙な格好をしているようだが。」
後ろから声が聞こえた。




