10.領土拡張計画
Side: 府谷恭平
「現在、水の供給が有りません。貯水槽の水が無くなったら一切水が使えなくなります。」
舟酒さんが済まなそうな顔をしている。
いいんですよ気にしなくて。
「それで再度、給水機の設置を行いたいと思います、皆んなで。」
「また、彼らが襲って来たらどうする、所長。」
舟酒さんが訊ねる。
「今回は安全に給水出来る環境を作ろうと思います。その為に皆さんの協力が必要です。特に建設班。」
「む、ワシらか?」
栗井場さんが反応する。
「はい、水が安全に汲めるように、ここから川までの土地を柵で囲んでしまおうと思います。だいたい川まで100mなので幅も同じくらい、100m × 100mの範囲を有刺鉄線の柵で囲んでしまおうかと考えています。」
「まぁ、作業自体は難しく無いとは思うが、槍を持って襲って来るんだろう?そうなったら作業どころでは無くなるぞ。」
「そこで、作業に携わらない方から防御要員を募り、盾を持って投石などから作業者を守る算段です。さらに迎撃要員としては連射弓を持った警戒担当を当てる予定です。」
「もう少し詳しく話しをして貰ってもいいか?」
「ええ、開始時刻は日の出と同時、朝5時半くらいです、相手が油断している時間帯を狙います。ドローンで安全を確認したら、速攻で川沿いに有刺鉄線を張りながら柵を立てていきます。この時、防御要員、迎撃要員とワンセットで作業者を守ります。川沿いが終わったら両端の柵をセンターに向けて延ばしていきます。この時点で迎撃要員は対岸を警戒しながら遊撃となります。柵がセンターに到達したら完成です。」
とりあえず柵が出来てしまえば給水機の設置は問題無いだろう。
「ドローンで偵察した時に、敵が待ち構えていたらどうする?」
「前回と同じ10人くらいなら決行します、十分対応な数なので。20人を超えるとなると要相談ですかね。先に連射弓で追い払ったタイミングで作業を行う事になるかと思います。」
「まぁ、それならいいだろう。」
「よろしくお願いします。」
建設班はほぼ全員の20人での参加となるようだ、少ない分は連射弓を作って貰っている為だ、迎撃要員は夜番、早番の8人が参加、防御要員を募ったところ14人の参加があった。
これにプラス警備員4人、偵察班1人が加わり、総勢47人での作戦となる。
この後各班から進捗を聞く、先ずは建設班、太陽光パネルと小型風力発電機の設置は1週間ほど掛かる見込みとのこと、調理場と浴場については床のセメントは打ち終わったとの事で乾燥に3日ほど掛かるらしい。
「浴槽は無くて良いんだな。」
「はい、浴槽はポータブルバスを使用する予定です。」
とにかく風呂は早急に必要なので、なるべくシンプルに作る。
床はコンクリートの打ちっぱなしにスノコでも敷けばいい、壁はペンキを塗っておけば、とりあえず使用には耐えるだろう。
調理場は流しが置ければ、あとはIHなどの調理家電と冷蔵庫で何とかなると思う。
詳しくは調理班に要確認だな。
調理班と農業班の合同で行っている冷凍保存作業は、一先ず終わったとの事、お疲れ様。
今後、調理班は、賞味期限を迎える食材をメインにした献立の検討を行う模様。
農業班は、プランターに植える植物の選定と実際の種蒔きを行うとのこと。
あと今後不足する葉野菜を見据えて水耕栽培も検討したいと言っていた。
明日の作戦に参加する人には、『朝5時に完全装備でエントランスに集合』と周知して解散した。
その他の人も同時に解散、ゆっくりベッドで休んで下さい。
連射弓を使う警戒担当の夜番と早番の人には残って貰った。
実際に試射を行って貰う為だ。
死村くんが夜番に志願したのは単に好奇心からだったみたいだ。
連射弓を興味深そうにいじっている。
下平さんにも試射してもらった。
彼は弓の経験があるみたいで、普通の弓も使えると言っていた。
今回は連射弓だが、今後、普通の弓で戦ってもらうのもありだろう。
残りはセンターメンバーにお願いした。
呑家くんや大苺くん、安里川くんら女性もメンバーに入っている。
こういう無理を言える間柄であることは本当にありがたい。
安里川くんは膨れていたけど大丈夫だ。
彼女はドが付くほどのSだ、嬉々として矢を撃つ様が目に浮かぶ。
ノリノリでやってくれるに違いない。




