女神の使い魔召喚の儀 後編
集会場につくと、既に子供達の両親もおり、教会から派遣されてきた司祭が法衣服を着てまっており、既に準備が整っていた。
「では、これより召喚の儀をはじます。 名前を呼ばれたらご両親と共にお隣の部屋に設置した召喚の間へきてくださいね。」
「エド・ジャクソン君」
エドが、一番最初に呼ばれたのだった。 少し緊張で顔がこわばっている。
「エド、がんばってね」
そう声をかけるエマは可愛らし笑顔でいうと、緊張がほぐれたのかエドも笑顔になり頷き手を振るのだった。
暫くすると、大人たちのどよめきが聞こえる。
「最上級精霊のサラマンダーだ。 職業:上流騎士、しかも、この年でステータスの称号が騎士になっている。」
「まさか、狩人の俺の息子が騎士とは。 しかも上流騎士とはな」
「父さん、俺、騎士になるよ!」
そう言って、エドの喜ぶ声が聞こえて、両親と共に召喚の間から出てきたのだった。
召喚と儀と一緒にステータスカードが作られ、人種、性別、職業、体力、魔力、属性、称号が記載されている。 職業と属性は変わる事がないが、年齢や努力次第で体力、魔力、称号がかわる。 ただ、称号については、幼い年齢で記載がある事は稀である。 また、この時代、職業によって今後の進路が決まっていくのである。
次に呼ばれたのはティナだった。
エドの時と同様に大人たちのどよめきが聞こえる。
「また、最上級精霊でウィンディーネ、職業:高位魔法師とは。 称号がすでには魔法師とはすばらしい」
そして、ティナは誇らしげに両親と共に戻ってくる。
次は、エマがよばれる。
「聖女様の誕生だ!」
驚愕した声の主は、司祭の声だった。
「なんと! 人型の天使様とは。 すばらしい」
司祭の声と共に、大人たちの賞賛する声が聞こえるのだった。
そして、エマが恥ずかしそうに、両親に手を繋がられて戻ってきたのであった。
最後に司祭が、シリルを呼ぶ。 召喚の間にいたのは、シリルの両親と司祭のみだった。
シリルの両親は、辺境伯という立場からエド達の召喚の儀の立ち合いもしていたのだった。
「シリル、周りは周りだ。 あまりにもこの地で、最上級やらでて驚いたがな。」
そういう父親は、今までの結果への興奮が冷めやまらない状態だが、目は優しい。
「緊張しないでね。」
そう言って、少し緊張しているシリルの横にきて優しく頭をなでる母親だった。
「うん。わかってるよ。 大丈夫、俺は俺だよ」
そう言って、自身の緊張をほぐしつつ、両親に笑顔を見せるシリルだった。
「そうですな。 我々も少し興奮しておりました。 では、これより、シリル君の召喚の儀を行います。 といっても簡単でそこの魔方陣の中央にいって、魔力を注ぐだけです。
その後、魔方陣が起動して、シリル君の使い魔が召喚され、ステータスカードも一緒にでてきます。 さぁ、中央へ」
司祭の言葉を聞いて、シリルは一歩ずつ慎重にゆっくりと魔法陣の中央へ進むのだった。
そして、魔方陣の中央に立ったシリルはしゃがみ、魔法陣に魔力をそそぐ。
魔方陣全体に魔力が渡り、そして淡い光に包まれる。
...光が消える...そこには、いるはずの使い魔がいない。。 ステータスカードだけが、ポトリとシリルの前に落ちるのだった。。 何が起きているのかわからないシリル。 使い魔の召喚の失敗なのか? わけがわからないシリルは、司祭を振り向く。
「何! 聞いたことがない!」
そう叫んだ司祭は、シリルの目の前にあるステータスカードを拾い内容を見ると、更に驚愕し、嫌悪した顔になり、そのカードをシリルの両親に見せるのだった。
シリルのステータスカードはこうなっていた。
----
名前:シリル・マクレーン
性別:男性
人種:人間
職業:無職
体力:D
魔力:-
属性:-
称号:女神に嫌われし者
---
それを見た両親は青ざめる。
「過去にも聞いた事のない事例です。」
青ざめている両親に、そういう司祭はなんとも言えない表情になっている。
「違う、違う。 あり得ない。 それに、この称号はどういう事だ司祭!」
そういって叫ぶ、父親の顔は、怒りと嫌悪が交じり合っている。
「そんな事、ありえないわ」
そういう母親は泣き崩れてその場で臥せってしまっている。
「マクレーン辺境伯。 どうかここではお静かに。 周りに聞こえてしまいます」
そう言って司祭は、父上を鎮めてから、シリルから離れた場所で母親を介抱しながら小声で話しあっているのであった。
その様子から、とりあえず良い状況ではない事はシリルでもわかる。
「と、父さん? 何がおきてるの? 母さんは?」
勇気を振り絞っりながら、父親に訪ねるシリルだった。
シリルの方へ近づく父親の表情に優しさはなく、拒絶の目線を向け、そして無言のままシリルのみぞおちを殴るのだった。
「ぐはぁ」という言葉を最後に、シリルはその場で気絶するのだった。。。
◇◇◇
そして、冷水がかけられて、起き上がるシリルの目の前にいたのは、父親だった。
「と、とう父さん?」
そう言って、シリルが父親の顔を見ると、気絶する前と同じ拒絶し、冷たい目線をむけている。 信じたくないが、なぜそんな目線を向けるのかわからないシリル。
すると、今度は頬に激痛が走る。
「ぐぁああああ」と殴られ冷たい床に転がるシリル。
「こんなはずじゃなかった!」「貴様、貴様、貴様」
と叫びながら、父親は殴る、蹴るの暴力をふるってくるのだった。
そして、シリルが動けなくなり意識が朦朧としている。
足跡が遠のいていくのが聞こえ、ガチャっと鍵が閉まるのわかる。 そして、何か自分に当たるのだった。
「この無職! おまえの処遇についてはとりあえず考えるが、おまえは病気で死んだ事にする!」
と吐き捨てる父親の声がし、ズカズカと遠くへ行く足音だけが聞こえる。
それから静かになり、冷たい床からようやく起き上がったシリルは、ようやく状況を理解する。 シリルのいる場所は、屋敷の地下牢であった。 そして、自分に投げつけられたたの自分のステータスカードだった。
この時、シリルは初めて自分のステータスカードをみて、「なんだよこれ」といってこの理不尽な仕打ちを恨むのであった。