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転校先の清楚可憐な美少女が、昔男子と思って一緒に遊んだ幼馴染だった件【2026年アニメ化決定】  作者: 雲雀湯@てんびん2026年アニメ化決定
第8章

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370.茉莉と沙紀


 土曜日の放課後。

 繁華街に隣接する都市公園の一画で、茉莉が情けない声を上げた。


「あわわ……ぎゃっ! いったぁ~……」


 中高一貫のお嬢様校として有名な、楚々として高級感のある制服姿の茉莉は、ダンスの途中でバランスを崩して芝生の上で尻餅を突き、目尻に涙を浮かべる。

 一方、今の瞬間を逃せないとばかりにすかさずスマホで切り取った隼人は、ほくほく顔で煽るように言う。


「お、いいぞ。いいのが撮れた!」

「よくなーい! うぎぎ……」


 悔しそうに言い返す茉莉に、そのすぐ隣にいた沙紀が気遣わし気に手を伸ばす。なお沙紀も、茉莉と同じお嬢様校の制服姿だ。


「大丈夫ですか?」


 茉莉は沙紀の手と顔を交互に見て小さく息を吐き、その手を掴む。


「ありがと」

「どういたしまして。一度休憩いれますか?」


 今何をしているかというと、いわゆる〝踊ってみた〟の動画を撮っていた。ティンクルの曲を茉莉が友達と一緒に練習しているという趣旨である。本日は同行した沙紀が躍れるということもあり、急遽この企画へと切り替えた。


「……そうね、座れるところに移動しましょ。近くにあった自販機の近くに、いい感じのとこがあったはず」


 茉莉が先導する形で移動して自販機でそれぞれ飲み物を買い、すぐ傍にあったベンチっぽいオブジェに腰を落ち着け喉を潤す。

 周囲でランニングしたり、フリスビーやバドミントンをしている他の公園利用者を眺めながら、茉莉は少し不貞腐れたように隼人へ愚痴る。


「たしかにさー、今日のコンセプトは〝茉莉と遊ぼ〟にしようと言ったよ。一緒に撮るのに打ってつけの相手がいて、女の子だっていうから許可もした。何なら同じ学校の子っぽくした方がいいよねと、自分の予備の制服を持ってくと言ったのも私だよ」

「あぁその制服、俺でも知ってる有名なお嬢様校のやつだよな? びっくりした」


 すると沙紀が、茉莉の代わりに少し弾んだ声で答える。


「そうですね。今日のことはびっくりしましたけど、こんな形であそこの制服着られるとは思ってなくて、ちょっと得した気分です。えへへ。でも制服に着られてないかちょっと心配で……」

「うーん、俺は似合ってると思うけど。なぁ?」


 隼人が茉莉へ話を振ると、茉莉も憮然とした表情で頷き答える。


「うん、そんな心配は杞憂、ていうかそんじょそこらのモデル以上じゃね?」

「そ、そうかな?」

「っていうかさっきの話の続きだけど、まさか噂の舞姫が来るとは思わないじゃん!」

「「舞姫?」」


 舞姫。初めて聞く言葉に首を傾げ、顔を見合わせる隼人と沙紀。

 すると茉莉は2人の反応に「あ~」と唸り声を上げた後、しかめっ面で隼人に確認するかのように問う。


「その子、以前おばさんの学校でさ、チアの恰好して一緒に躍ってた人でしょ?」

「あぁ、そうだ。あれもかなりバズってたな。正直、踊りに関しちゃ春希以上だと思う」

「それよ! あまりに高レベルのダンスに、ついたあだ名が舞姫。だというのに、おばさんの幼馴染ってこと以外誰も知らなくて、関係者が血眼になって情報欲しがってる。おじさ……うちのマネージャーだって心底欲しがってたし」

「へぇ、すごいな沙紀さん」

「あ、あはは。ちょっと照れますね。あの後、私の周りで特に騒ぎとかなかったので」

「春希がちゃんと、どうにかしてくれたくさいなぁ」

「ですねぇ」


 芸能関係者にも沙紀の評価が高かったことに、なんともむず痒い顔を見合わせる。

 そして隣で茉莉が、いじけたように唇を尖らせた。


「っていうかアンタもおばさんの幼馴染って話だし、連れてくる相手として予想すべきだったというか……動画越しで凄いのは知ってたけど、こう、おばさん以外にも間近で実力差を見せつけられる相手がいて、ちょっと凹む」


 そう言って茉莉はがっくしと肩を落とし、項垂れる。

 隣で何ともいえない顔になる隼人と沙紀。先ほど撮影した時も思ったが、やはり沙紀の踊りは茉莉よりも明らかに図抜けていた。

 しかも沙紀は既出のものだけでなく、新曲で未発表のものでも少し教えてもらっただけで、茉莉よりも優れたものを見せる。それだけ沙紀の、こと舞い踊ることに関してのスキルの高さが顕著だった。茉莉も決して下手じゃないだけ、ことさらに。

 それでも茉莉は沙紀に、動画を撮る際自分に合わせて手を抜くというのをよしとしなかった。そしてムキになった結果が、先ほどの転倒だ。

 別に隼人は茉莉を凹ませようとして、沙紀と引き合わせたわけじゃない。打倒春希のための、何か刺激や切っ掛けになるかと思って連れてきたのだ。これでは本末転倒。

 隼人は何か話すきっかけがないかと、先ほど撮影した動画や写真を確認していると、ある違和感に気付く。それが妙に気になる、むむむと唸り、言葉として口から零れた。


「あれ、今日の茉莉って少し表情が硬いな。まるで緊張しているみたいというか」


 すると茉莉はぎょっとしたような目をして、驚きの声を上げる。


「え、うそ!?」

「些細な違いだと思うけど、前回と比べるとよくわかると思う。特に失敗した時のやつとか顕著だな」


 隼人が差し出したスマホを覗き込み、茉莉は渋い表情になる。

 そして彼女と一緒に確認していた沙紀が、少し申し訳なさそうに呟く。


「もしかして私のせいでしょうか……」

「それはない。てか、初対面の人にもしっかりファンサしてるアイドル舐めるな」

「す、すみません」

「ていうかこれは、多分、う~~~~……ちょっと耳貸して」

「うん?」「えっと、私も?」


 茉莉は少しの躊躇いの後、こちらに手招きして顔を寄せる。

 そして周囲に人がいないことを確認してから、自ら今回の不調の原因を囁いた。


「今度さ、ベイエリアで初めての単独ライブやるんだ」


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― 新着の感想 ―
ちゃんと認められてる証ですね。 上手く行って欲しいです。
沙紀さんと茉莉さん、相性は悪くないようで何よりですね。
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