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転校先の清楚可憐な美少女が、昔男子と思って一緒に遊んだ幼馴染だった件【2026年アニメ化決定】  作者: 雲雀湯@てんびん2026年アニメ化決定
第8章

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366.#茉莉うっかり


 茉莉と連絡先を交換して、半月近く過ぎた。

 5月も後半になれば、随分と暖かくなってくる。

 早朝、寝汗をたっぷり掻いた隼人は、布団を蹴とばした状態で目を覚ます。

 寝ぼけまなこで枕元のスマホを手繰り寄せ、茉莉からの複数回にわたる通知を見て、あぁまたかと欠伸ついでに大きなため息を吐いた。


『なんでこっちがバズるのさ!』

『てか、私が考えたやつがことごとく外してるの何で!?』

『また私のイメージがーっ!』

『バズらないより、よっぽどいいけど!』


 隼人は茉莉のメッセージを確認した後、画面をスワイプして戻していく。すると茉莉がメッセージを送ってくる発端となった、昨夜隼人が寝る前にSNS投稿用に彼女へと送った写真が出てくる。茉莉がバッティングセンターで思いっきり空振りして体勢を崩し、今にもこけそうになってあわあわしているものだ。なお実際この後、盛大にこけて尻餅をついた。

 隼人はしてやったりとほくそ笑みながら返事を打ち込む。


『よかったな、また〝#茉莉うっかり〟で知名度が上がるぞ』


 すると朝早くにもかかわらず、すぐさま茉莉から返事が返ってくる。


『よくなーい! 最近、現場とかでもスタッフの人たちの見る目がやけに生暖かいし! あとおばさんもそのことで、皆と一緒になって揶揄ってくるしさ!』

『それだけ、そういうキャラとして愛され受け入れられているってことだろ。アイドルとしてもおいしい(、、、、)んじゃないか?』

『そうかもしれないけど! うぅ、私もっとオシャレでキラキラした感じの、誰もが憧れる正統派アイドル目指してたのに……』

『背伸びして詰めの甘さをみせる、うっかり系アイドルも微笑ましくていいだろ。見向きもされないより、よっぽどマシだ』

『ぐぬぬ……』


 茉莉は最近、自分のイメージアップを図るためSNSへの投稿に力を入れ始めた。

 今回のものは〝もし茉莉とデートしたら――〟というコンセプトのもと、話題の店でパフェを食べたり、猫カフェでにゃんこと戯れたり、アミューズメント施設ではしゃぐといった様子を撮ったものだ。

 そのカメラマンを務めたのが隼人である。ある日の放課後、茉莉から急に繁華街まで呼び出しを受け、付き合わされた。

 あの時はよく知らない相手、しかも異性と会うなんて危機感を持てと苦言を呈したが、茉莉からは不思議な顔をして『でもアンタ、春希(叔母さん)の幼馴染なんでしょ?』と首を傾げられた。まったく、どういう判断基準なのやら。

 最初、その時に撮ったものを茉莉が厳選して毎日小出しにして投稿していたものの、どれも反応は今ひとつ。

 伸び悩む茉莉に、もし反応が悪ければすぐ消すという条件付きで、隼人が個人的にシャッターチャンスと思って捉えたイレギュラーなものを投稿しようと持ち掛けた。今回のバズってるのもその一つだ。

 他にもこれまでパフェのクリームを落として慌てた顔をしているものや、猫カフェでオモチャで釣ろうとするもにゃんこにガン無視されて涙目になってるものとかがバズっている。もっともどれも本人が意図しない形のものなので、茉莉は不服そうなのだが。

 しかし隼人としては、どれも素の茉莉の良さが現れたものだと思っている。

 また、こうした茉莉の残念な写真ばかりがバズっているわけじゃない。ゴールデンウィークのイベントで隼人が撮った、春希と茉莉のツーショットも大いに話題になった。

 そのおかげもあって、このところ茉莉の評判の風向きが明らかに変わった。

 おっちょこちょいだが、愛嬌があって、春希に負けない魅力があるんじゃ――そう思わせることに成功している。

 事実、茉莉は決して実力が低いわけじゃない。先日のゴールデンウィークのイベントに参加していた中でも飛び抜けていた。ただ、春希の隣だから霞んでしまっているだけ。

 ひとたび彼女の強みを打ち出していけば、こうして話題になるのも必然だろう。しかも本人も常に研鑽を怠らないとなれば、なおさら。

 これまで茉莉は、春希の影に隠れて埋もれていた状況だった。そこへ脚光を浴びさせたのは、まぎれもなく隼人の功労だと思うと、密かな自信につながってくるというもの。

 その時、ふいに茉莉から質問のメッセージが届いた。


『そういや撮った写真って、どれくらいストック残ってんの? 私がお願いした分は、あと2枚残ってるはずだけど』

『あぁ。それに加えて、俺が撮ったのが1枚。土産物ブースでお寿司の形をしたキャンディー片手に、買おうか迷ってるやつだけだな』

『う゛、また変なものを……とにかく、アップする写真が少ないなら、また撮りに行かなきゃ。そっちの中間テストってもう終わったよね?』

『一昨日にな。今日あたり成績票が配られるはず』

『ふぅん。じゃ、近いうちにまたコンセプト考えるから、予定空けといて』

『面白いリアクション、期待してるぞ』

『私は芸人じゃないってーのっ!』


 ムキになって叫ぶ様子の茉莉がありありと想像でき、隼人はくすりと笑って起き上がり、朝の支度を開始しながらふと思う。

 茉莉とは知り合って間もないというのに、まるで古くからの知り合いのように打ち解けていた。

 打てば響くようなやり取りは、どこか春希にも似ている。やはり姪というのが関係しているのだろうか。

 なんだかんだ茉莉の手伝いをしているのは、春希の親戚というのも大きい。

 ちなみにSNSへの投稿は、プライベート的なことをアップするということもあって、茉莉本人が行っていた。

 北陸の時のものを上げようとしたが、撮影者が隼人とバレかねないということもあって、現在は見送っている。茉莉がどこか写真が有名になってきたタイミングで、春希を驚かせたいからといって、撮影者が隼人だというのを伏せてくれと頼まれたからだ。隼人としても、別にSNSで人気になりたいとかそういう気持ちがなかったので了承した。


「できることをする、か」


 先日、茉莉が口にした言葉を呟く。

 自分が撮ったものがどれだけ評価されているのか、実感はない。

 ただ、茉莉が言うには相当なものだとか。

 また単純に、自分が撮ったものが認められるのは嬉しい。

 うん、今の状況は悪くない。

 見ているだけ――否、見ているからこそできることがある。

 そのことを気付かせてくれた茉莉に、隼人はある種の恩を感じているのだった。


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― 新着の感想 ―
動いたもん勝ちなんですよね。しみじみとそう思います。
茉莉さんのうっかりを見て、方向は違えど春希さんの血筋だなと思いました。
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