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転校先の清楚可憐な美少女が、昔男子と思って一緒に遊んだ幼馴染だった件【2026年アニメ化決定】  作者: 雲雀湯@てんびん2026年アニメ化決定
第7章

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329.プレゼント選び


 春希の提案に、すぐさま恵麻と伊織が反応した。


「わ、いいね、面白そう! 皆でケーキ作りとか、一度そういうのやってみたかったんだよね~」

「あぁ、なんか青春っぽいしな! プレゼント交換も! それにテスト後にそういうご褒美みたいなものが待ってる方が、勉強にも気が入るってもんだ」


 2人と同じくクリスマスパーティーへ心踊らせた隼人は、弾んだ声でこの場を締めくくる言葉を口にした。


「じゃ、決まりだ。皆にも声を掛けないとな!」


 早速とばかりに春希対策本部と書かれたグルチャを呼び出しメッセージを書き込めば、たちまち皆から賛同の言葉が返ってくる。他の皆にとっても、クリスマスパーティーの提案は魅力的らしく、異を唱える者はいなかった。



 期末テスト期間は、勉強の合間にグルチャでクリスマスパーティーについて話し合いながら、瞬く間に過ぎていった。

 ちなみにいつもなら教室や図書館、ファミレスなどで勉強会をしたりするところだが、春希のことは大丈夫と思いつつも大事をとって集まらないことに。

 グルチャでサンタは小5まで信じていただとかの話や、クリスマス前日のトナカイがついやりがちなことの大喜利といった、無駄話で盛り上がって脱線したのはご愛敬。

 そういう時は会話の外部にいた人たちが、『いつまでもお喋りしてんなよ~』『そろそろ勉強に戻ろうな』と窘めてくれたりも。

 とはいえ、なんだかんだこの話題がいい息抜きになって試験勉強は捗ったといっていいだろう。

 期末テスト自体も、それなりに手応えがあった。それは皆も同じのようで、伊織も今回は確実に全教科赤点を回避しただろ! と、喜んでいる。

 もっとも伊織の場合は、恵麻が付きっきりで勉強を見てもらったというのもあるだろうけれど。なお伊織から、ずっと2人っきりで緊張してしまい、勉強に集中せざるをえなかったらしい。相変わらず初々しい2人である。

 そんなこんなで期末テストが終わった日の午後。

 隼人と一輝は伊織に誘われる形で、シャインスピリッツシティにやってきていた。クリスマスパーティーでのプレゼント交換に持っていくものを選ぶためだ。

 伊織はクリスマスムード一色に染まった専門店街をキョロキョロ見渡しながら、難しい顔で少し困った声色で呟く。


「むぅ、こういうのって何を選べばいいんだかわからん……」

「さぁなぁ、俺もどういうものがいいか見当つかなくて。つか、クリスマスパーティーなんて洒落たもの自体初めてだし。てわけで、困った時の一輝頼みなんだが……」


 隼人もまた伊織と同じような表情をしながら、相槌を打つ。この時期なら色々とクリスマスに向けたプレゼントにうってつけのものがあると思ってやってきたのだが、あまりにも数が多く種類も豊富なので、ほとほと困ってしまっていたのが本音だ。

 2人から期待に満ちた、どこか縋るような目を向けられ、苦笑しながら答える一輝。


「そうだね、オシャレなアイシングクッキーとか少し高価な茶葉、それから少し珍しい香りのする石鹸とか、誰が引き当てても嬉しい、いわゆる消えものなんかが無難かな」

「なるほど、確かに」


 その言葉に納得し、感心の声を上げる隼人と伊織。

 しかし続く一輝は一転、茶目っ気たっぷりに片目を瞑って言う。


「でもプレゼント交換って元が誰のものか、わからないからね。そういう無難で実用性があるものもいいけれど、誰が送ったかわかりやすいのもいいんじゃない? 隼人くんなら卓上おでん鍋、伊織くんならクリスマス仕様の和菓子とか。インパクトもあるでしょ」

「お、そういうのも面白そうだな……って、俺は調理器具のイメージかよ!」

「掃除道具でも隼人っぽいと思うぜ、なぁ一輝。なんせオカン(・・・)キャラがすっかり定着してるからな」


 隼人が抗議の声を上げるも、すかさず伊織がツッコミを入れ、次第に皆から笑い声が上がった。



 要するに自分の趣味満載のものにすればいい。

 買うべきものの方向性が決まっても、そこからは別の意味で迷うことになった。

 狙いを絞ったとはいえ、それでも興味を引かれるものが非常に多いのだ。

 予算だって有限、悩ましいというもの。

 だけど、こうして目移りするのもすごく楽しい。

 隼人たちはそれぞれ好みが違うということもあり、集合時間を決め、一旦分かれてプレゼントを探すことにした。

 足取り軽く、あちらこちらを見て回っていく。都会にもすっかり慣れたものだ。

 やがてなんとか候補を2つにまで絞るものの、どちらも捨てがたい。

 時間ギリギリまで粘り、一番最初に見つけた方に決めた。自分の直感に従った形だ。

 待ち合わせ場所には、伊織と一輝が一足早く戻っているようだった。2人とも納得したものが買えたのか、満足した表情をしている。

 こちらに気付いた伊織が、ニッと歯を見せながら片手を上げた。


「よっ、隼人。いいの見つかったか?」

「あぁ、バッチリ。当日を楽しみにしててくれ」

「オレに当たるかどうかわかんないけどな」

「それもそうだ」


 そんな軽口を叩き、笑い合う。

 ひとしきり笑い終えた、ふいに一輝が訊ねてきた。


「そういや伊織くん、伊佐美さん個人へのプレゼントはどうしたんだい?」

「っ、それは……っ」


 みるみる顔を赤くしていく伊織。

 こうもあからさまな反応をされると、何かあると言っているようなもの。

 隼人と一輝は顔を見合わせた後、にっこり笑顔で伊織に詰め寄った。


「へぇ、これは何か特別なものを用意してそうだな、一輝」

「うんうん、付き合って初めてのクリスマスだし、気合も入るだろうね」

「いや別に、大したことは……」

「おいおい、どうでもいいようなものだと、伊佐美さんが悲しむだろ」

「そうだよ、伊織くん。大切な記念日なんだから、記憶に残るようなものにしなきゃ」


 揶揄うように煽る、隼人と一輝。

 伊織はぐぬぬと言葉を詰まらせ、真っ赤になって俯くことしばし。

 やおら顔を上げ、半ばやけっぱち気味に叫ぶ。


「あーもー指輪だよ、指輪! 互いに同じの、ってペアリング買うことにしてんの!」

「「おおーっ!」」


 意外な、しかし思い切ったチョイスに驚きつつも、隼人と一輝は思わずぱちぱちと手を叩く。

 友人の交際が順調にうまくいっていることに頬を緩めていると、伊織はキッと眦を吊り上げ、鼻息荒く水を向けてきた。


「隼人こそどうなんだよ。二階堂さんにプレゼント渡したりしないのか?」

「へ、春希に? これがあるだろ」


 そう言って隼人は、先ほどクリスマスパーティー用に買ったプレゼントを、ひょいっと掲げる。

 すると伊織は目をぱちくりさせた後、くしゃりと顔を歪め、額に手を当てつつむず痒そうに言う。


「いや、そうだけどさ。えぇっとほら、日ごろの感謝を込めてとか」

「うーん、そんな予定ないなぁ」


 伊織の言葉にきょとんとしつつも、眉を顰める隼人。

 春希とは幼馴染だ。知り合いの中でもとびきりと言っていいほど、仲もいいだろう。

 特別な相手なのは確か。

 しかし誕生日ならいざ知らず、クリスマスにわざわざ何かを贈るほどかと問われれば、首を傾げてしまう。プレゼントなら、クリスマスパーティーで何かしら貰えるだろうし。

 だけど伊織のやきもきしている姿を見ていると、妙に胸が騒めく。

 すると今度は、伊織と似たような表情をした一輝が話しかけてきた。


「話は変わるけど隼人くん、北陸ではずっと二階堂さんと2人きりだったんだよね」

「あぁ、春希と一緒のおかげですごく楽しめたよ」

「宿とかも同じ部屋だったんだよね。どうだった?」

「どうって……メシも豪華でうまかったし快適で、あちこち行ってヘトヘトだったからぐっすり眠れたよ」

「あはは、そっか」


 困ったように笑う一輝に、隼人はムッと眉根を寄せる。

 ……仮にも春希と、同世代の女の子と一つ屋根の下で一晩2人きりだったのだ。ここでどういうことを聞かれているのかわからないほど、隼人は鈍感じゃない。

 でも、そういう男女のあれこれが目的で北陸へ行ったわけじゃないのだ。

 純粋に春希のためを思い、笑顔になれる場所を求めて行っただけ。

 まったく意識をしなかったり、ドキドキしなかったと言えば嘘になる。

 だけどそこにそうした感情を挟むことは、ひどく幼馴染を裏切るように思えてしまって。

 隼人が苦虫を嚙み潰したような顔をしていると、一輝は肩を竦め、しみじみといった声色で締めくくった。


「隼人くんも姫子ちゃんに負けず劣らず、花より団子だよね」

「む、そこと一緒するな……って伊織も笑うなよ!」


 その一輝の言葉におかしそうに笑う伊織に、隼人はジト目でねめつけるのだった。


あいこい1巻発売中です

にゃーん

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― 新着の感想 ―
にゃん!
花より団子な隼人さんに対し、好意を寄せてる女子二人はクリスマスはどう動くのでしょうね。
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