2.不機嫌な彼女
相変わらず、タイトルやあらすじにもっと良いのがないかなぁ……と悩んでいます。
どうやら先程の受け答えは拙かったらしい。
隼人は隣の席の美少女から、どこか不満気な空気を感じとっていた。
もしかしたら勘違いかもしれない――だけど視線が合うたびに目をそらされてしまうと、その線は薄そうである。
(う、どうしたもんか……)
そんな隼人の気持ちなどお構いなしに、授業が始まっていく。
当然ながら、以前の学校とは授業内容が違う。疑問はさておき、今は遅れまいと必死になって耳を傾ける。しかし、どうしようもないこともあった。
「すまん、悪いんだけど、この間のプリントって?」
「……」
教材などで、彼女に世話にならざるを得ないこともある。嫌でも彼女を意識をしてしまう。
「あー、ええっと……」
「……これです。そこからじゃ遠いでしょう、机、近付けたらどうですか?」
「あぁ、ありがと」
「いいえ」
幸いと言うべきか、なんだかんだと快く見せてもらえるので、完全に嫌われているというわけでは無いようだ。
彼女の事がよくわからなかった。
(うぅ、妹なら、甘い物でもやれば機嫌が直るんだけどな……)
田舎で同世代、それも異性となれば、妹くらいしか居なかった。
いくら隼人でも、さすがに妹と同列に考えてはダメだというくらいの分別はある。
ならばいっそ直接聞いたほうが早いなと、休み時間になると同時に話しかけようとした。
「その、二階ど――」
「なぁなぁ霧島、今朝の質問の続きだけどさ」
「あーしもちょっと気になったところがあるんだけど!」
「向こうでは――」
しかしそれも、クラスメイトの質問に遮られてしまう。
学校にも慣れ始め、同じような日々に退屈を感じ始めていた彼らにとって、隼人は恰好の餌食と言える。
「……ふぅ」
クラスメイトに揉みくちゃにされている隼人を見て、彼女はどこか呆れたようなため息を吐くのだった。
◇◇◇
質問攻めは休み時間のたびに繰り返され、結局彼女と話す機会が無いまま昼休みを迎える。
さすがに昼休みともなれば、隼人より食事の方を優先するらしい。あちらこちらでグループを作って弁当を広げる様子が確認できる。チャンスだった。
(何とか話をしないとな)
気にするほどの事ではないかもしれない。だけど、何かが心に引っかかってしまっていた。
出来ることならそれを取っ払いたいと思うし、二階堂は相当な美少女でもある。隼人も健全な男子として、お近付きになりたいという思いもあった。
「二階堂さん、ちょ――」
「――すいません、二階堂さんはいますか?!」
「あ、はい、ここです」
またしても失敗してしまう。
今度は彼女の方が、小柄な女の子に呼び出されていった。
突き出した手と言葉が空しく宙を舞う。
そんな姿を晒した隼人に、何人かの男子生徒がニヤニヤしながら近付き肩を叩く。
「はは、早速二階堂さんに目を付けるとはやるな、転校生。気持ちはわかる」
「うんうん、あの容姿な上に気立ても良くて勉強も出来る。更に運動部にだって引っ張りだこ」
「今だってあれ、生徒会関係の仕事の話じゃないかな?」
「俺はそういう――いやでも、凄いな」
話を聞くに、まるで絵に描いたかのような優等生ぶりだった。
なるほど、二階堂は確かに美少女だ。
しかも文武両道で、性格も見た目通り謙虚で穏やかとなれば、物凄くモテるに違いない。
(同じ二階堂でもアイツとは大違いだな……て、そもそも性別からして違うか)
そんな事を思うと、思わず苦笑がこぼれる。
「狙うのはいいけど、あれは高嶺の花だぞ」
「中学の時も相当モテてたらしいが、誰一人浮いた話が……あぁ、そういやお前、入学早々フラれてなかったっけ?」
「うっせ! 転校生――霧島も変な期待をしないほうがいいぞ」
「別にそういうつもりじゃ……」
案の定、相当にモテているようである。
隼人はからかわれるものの、別に付き合いたいとかそういった感情を持ったわけではない。
確かに可愛いと思うしそれは否定しない。しかし今日見知ったばかりであり、よくわからないというのが素直な感想だった。
それは二階堂にとっても同じだろう。
だからこそ、余計にわからなくなってしまった。
そんな彼女がどうして、初対面のはずの自分に、不満気な空気を出して素っ気無い態度を取るのだろうか?
「うーん、わからん」
首をいくら捻っても答えは出ない。
疑問と共に、早く話をしないとという気持ちだけが募っていくのであった。