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第4章〜彼のホントの顔〜

 そして、僕は真由ちゃんの手を引いてビデオ・イクスエリピスへとやってきた。今まで仕事で来ることは何度かあったものの、こんな感じで来るのは初めて。

 まぁ、一応今回も仕事なんだけどね。

「こんにちは」

「あ、クレッセント・ムーンさんですか?予定時刻よりも大分早いようですが…」

「ごめんなさい、ちょっと今回はアシスタントのコが急遽入る事になったので早めの下見をさせて頂けませんか?」

 すると、隣で会話を聞いていた真由ちゃんが突然うろたえる。どうしたんだろう、突然の話の流れについていけないのかな?

「「星夜くん、私アシスタントなんて聞いてな…」」

「「しーっ!」」

「なるほど。承知しました。では、まだ映画が上映中ですので、この通路の先にあります、奥の楽屋でお待ちください」

「はい、わかりました。ありがとうございます!」

 すると、そのキャストさんは一礼しどこかへ行ってしまった。

 さてと。じゃ、そろそろ僕たちも行きますか!

「だって。さ、行こ?まだまだ真由ちゃんに話したい事いっぱいあるの!」

「あっ!待って!」

 楽屋に着くと、真由ちゃんはとても興奮した様子で辺りを見回していた。

 なんだか、真由ちゃんを見てると僕の若手の頃を思い出すなぁ…。僕もまだ若い頃はこんな広い楽屋に連れてこられた時とかは驚いてああやって辺り見回してたっけなぁ…。

「星夜くん、私…普段飲食で働いてるからそんなエンターテイメントのお仕事なんてできない…」

「ふふっ、誰が『舞台に出ろ』なんて言ったかな?大丈夫。真由ちゃんは僕の裏方のアシスタントさんになってもらうだけだから。それに、すぐじゃないよ。ちょっとずつ慣れていってもらえれば大丈夫だから」

 へぇ。真由ちゃん、飲食で働いてたんだ。明るいから接客業のイメージはあったけど…。チェーン店かな?自営業かな?

 そう考えていると、だんだん真由ちゃんの表情は暗くなってきた。

 …どうしたんだろう。何か嫌なことが起きそうな予感。

「どうしたの?」

「ダメです…」

「え?」

「やっぱり、私じゃ宮澤さんのお仕事のお手伝いさんは務まらないです…!きっと、私なんかよりも適任の人が探せば見つかるはずです。今日一日、夢を見させて頂きありがとうございました!さようなら!」

 そう言い放つと、真由ちゃんは勢いよく楽屋を飛び出して行ってしまった。

 予想的中。当たって欲しくなかったけどね。えーと…どうしよう…。まずこの楽屋から出て見える案内版に従って外に出れば走っても一分はかかる。でも、裏口から行けば四十秒…。そこからメインゲートで帰る筈だから…。そうだ!

 僕は、楽屋のロッカーに入れてあるこのパークの人気キャラクターの着ぐるみを身につけた。

 本当はこれ、許可取らないとダメなんだけどね…。でもこの際、そんなこと言ってらんない…!早く行かないと…!

 僕は、猛ダッシュで楽屋から裏口へと向かった。

 真由ちゃん…。どうして急に出て行っちゃったんだろう。今まであんなに楽しそうにしてくれてたのが、それは全部嘘だったとは思えないし…。もしかすると真由ちゃんの中で何か対抗心みたいなのができちゃってそれで最後にはあんな感じで出て行くって感じになっちゃったのかなぁ…。

 イクスエリピスの裏口のドアを開けると、真由ちゃんはまだ出てから数メートル地点にいた。

 よし!この位置なら人が群れてれば必ず目につく筈!運が良ければ癒し求めに来るかも!まぁ、どっちにしろこっちから近づくんだけどね。

 そして、真由ちゃんに向かって前進し始めた途端。

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 わぁ。女子達の黄色い歓声。寧ろ悲鳴にも聞こえる〜。

 一気に、若い女の子達が集まってきた。でも、そんな子達に丁寧に対応している時間は今の僕にはない。大きく一歩ずつ確実に真由ちゃんに近づいて行く。それと同時に徐々に親子連れやカップルなども増えてくる。

 すると、ちらりと真由ちゃんの横顔が見えた。

 やっと、やっと着いた…!?

 僕は興奮気味にそちらの方へと歩みを進める。するとやはり、そこにいたのは真由ちゃんだった。僕は、思わず着ぐるみを着ているのを忘れて笑みを向ける。

 やっと捕まえた。とりあえず、話だけでも聞き出さなきゃ。

 そんな思いから、僕は無理矢理真由ちゃんを通路裏へと引きづり込んだ。それでも、僕と知らない真由ちゃんは抵抗する。

 ごめんね…。

「ちょっ、ちょっと!何するんですか!!離してくださいよ!私帰るんです!」

「…そんな寂しい事…言わないでよ…」

「えっ…?星夜くん…?」

 僕が着ぐるみの頭部分を取ると、真由ちゃんは抵抗を止め、とても驚いた表情をしていた。喜びとも、戸惑いとも言えない複雑な表情をしている。

「真由ちゃん…僕…真由ちゃんじゃないとダメなの…。今日、パークで僕が怖がってた時、真由ちゃん色々助けてくれたでしょ?あれは、心が温かいキミじゃなきゃできないよ…。それに…」

「それに…?」

「真由ちゃんは僕に似てるから…」

 真由ちゃんなら、僕の考えとかもきっと理解してくれるから…。だから…。

 そして僕が幾つか真由ちゃんに質問を投げかけると思った通りの回答が返ってきた。

「すごい、なんでわかったの?」

「ふふ、それはね、僕と相手にやってあげたいなって思う行動が一緒で人に対する思いやりの心が深いってわかったから」

 僕は、そう言いながら微笑む。ちょっとあざといかもしんないけど、真由ちゃんにはこれで戻って来てもらいたい。すると、真由ちゃんの瞳に涙が浮かんできた。

「ほらほら、泣かないで。真由ちゃんにはずっと笑顔でいて欲しいから…」

「うん…。ありがとうございます…。お陰で元気出ました」

「ふふっ、元気になってくれて良かった。でも敬語は厳禁だよ?」

 良かった。とりあえず、元気にはなってくれたみたい。でも、僕のここまで来た目的。イクスエリピスまで連れ戻さなきゃ意味ないよね!

「それで、さっきの話に戻るんだけど、真由ちゃんもしかして何かを気にして部屋出て行っちゃったの?」

「え?どうしてわかったの?」

「真由ちゃんが出てった後、僕追いかけながら考えたんだ。実は真由ちゃん、何か自分の中で何か引っかかることあって出てったんじゃないかなって」

「う、うん…。まぁ…ね…」

「ねぇ、教えて?何に引っかかって出て行っちゃったの?僕それわからないとこのまま引き下がれないよ…」

 僕は真由ちゃんに必死に想いを伝えたが真由ちゃんは苦い顔をする。…そっか。そうくるなら押してダメなら引いてみる作戦!

「…無理、しなくてもいいよ。よくよく思い返せば最初に無理なお願いしたのは僕だし、全然強制じゃないし。それにこんな僕だから…嫌いになっちゃったよね…ごめんね…」

「嫌いになんてなる訳ない!」

「…え?」

 えっ真由ちゃん急におっきな声出してどうしたの…?作戦は成功したけど…なんか真由ちゃんの中にはなんか僕が考えてるのとは別の考えがありそう…。

「…私ね、最初は星夜くんのことファンキャスト宮澤さんとしてミーチューブで知って、ずっとファンキャストさんとして、憧れてた。でも、今はもうとっくに星夜くんは引退してクレッセント・ムーンさんとして活躍してるのに、私クレッセント・ムーンさんの方の星夜くんの顔は全然知らなくて…。それなのに、突然トラスト・アクアで一緒に迷子の子供助けたんですって理由だけで、星夜くんと一緒にお仕事するなんて他の追っかけやってるファンの皆さんに失礼なんじゃないかなって…」

「…それで出て行っちゃったの…?」

「…うん…」

 ……は?たったそれだけの理由で?

 いや、別にお友達同士として楽しくキャッキャ遊んでる分にはそういう考えしてもらっても全然構わないんだけど、僕はちゃんと真由ちゃんのこと信頼してこの人なら仕事上でも僕をしっかりサポートしてくれそうな大切な『パートナー』として考えさせてもらってる訳だから、そこは真由ちゃんにもしっかりと汲み取って欲しいんだけど。

 とりあえず、ここでぼーっとしてる訳には行かない。無理矢理にでもイクスエリピスに連れて帰る。

「えっ、ちょっと、星夜くん?どこ行くの?」

「いいから黙ってついてきて」

 ちょっと真由ちゃんの扱いが乱雑だけど、今は仕方ない。流石に僕も人間だし、怒る時は怒る。ただ、ここでは怒れないから必死に抑えてる。寧ろ堪えてることに対してを褒めて欲しいぐらい。

 イクスエリピスに着くと、僕は即ドアの鍵と窓の鍵を確認し、外に怒号が漏れないようにした。

 そんな僕の説教なんて、誰得でもないからね。

 一度空気を深く吸い、そして…

「…バカ!」

「!」

「僕は周りの人がどうとかどうでもいいんだってば!!とにかく目の前にいる人を笑顔にしたい。それだけなの!わかる?だから、その為にはあの時目の前にいた優介君や僕を笑顔にする為に一生懸命になってくれた、真由ちゃんの力が必要なんだよ…。それは他の人にはできそうでできないことなの…。真由ちゃんならそのことがわかるでしょ…?」

 僕は心の内を思うがままにぶちまけた。気づけば、僕の瞳にも真由ちゃんの瞳にも涙が溜まっていた。特に、僕なんかは視界が涙でぼやけてもう全然見えない。

「…ごめんね…。わかる気がする…。私、昔から変わってるってよく言われててさっきもそれでファンの人からの批判が来るのが怖くて。でも、星夜くんとなら、私頑張れる気がする…!私…やってみるよ!協力させて…!!」

「!よかった!協力してくれるなら僕は大歓迎するだけだよ!!じゃあ、これから改めてよろしくね!」

「うん!よろしくお願いします!」

 そんな今流した涙も無駄にはならないかもしれないな。

 真由ちゃんが仲間になってくれた今、僕はまたこれからもっともっと心も身体も強くなれる気がする。

 そんな真由ちゃんと僕との物語は、今、やっとスタートラインから歩み出した。

 今回もお読み頂き、誠にありがとうございました!

 星夜のブチギレシーン、いかがだったでしょうか?

 起こるパターンというのは基本的には二つありまして、静かに怒るパターンと、今回の星夜のようにわーっと一気に言うのと。(因みに私は怒れないタイプです)周りには色んなパターンの人がいますが、やっぱり瞬発的に恐怖を感じるのは、わーっと言う方、後からゾクゾクしてその人の闇が計り知れなくなるのは静かに怒る人の方だと、私は思います。まぁ、怒らせなければいい話なんですけどね。

 皆さんの周りにもいる方の怒り方のタイプからその人の内面がわかるかも…?是非、推測してみてくださいね!

 それでは、改めて、最後までお読み頂きありがとうございました!

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