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第3章〜動き出す歯車〜

 食事もショーも終わり、僕たちはマンツァーノからのんびりインディアンロード方面へと向かって歩いていた。

「ねぇ、次に真由ちゃんは何がしたい?」

「えっ、私ですか?」

「言ってなかったっけ?敬語はダメだって」

 途端にちょっぴり慌てる真由ちゃん。天然なのかな?よくわかんないけど、この新鮮な感じのリアクションがもう毎回見てて楽しいんだよなぁ。

「あ、えっ、えっと、私はアトラクションとか乗ってみたいな!折角だし!」

「うん!やっぱりそうこなくっちゃね!じゃあ二人でアトラクション巡りだね!」

「うん!なんだかワクワクするな…!」

 真由ちゃんは、リュックの背負い紐の部分をぎゅっと握りしめ、満面の笑みを浮かべる。

 …多分この子は、相当トラストと僕のことが好きなんだろうな。じゃないと、普通こんな顔できないもん。だったら…僕がやれることは一つだけ。全力で真由ちゃんを楽しませてあげるだけだ!!

「ねぇ、真由ちゃんはどんなアトラクションが好きなの?」

「えーと、私は基本何でも好きだけどストーリー性があるアトラクションとか絶叫系とかが一番好きかなぁ。ほら、ここで言えばシン・ラットとか、エレベーター・ディセントとか。星夜くんは?」

「うーん…僕もストーリー性のあるアトラクション大好きかなぁ。絶叫系とかは僕も乗るよ〜。高いとこは苦手だけど」

 ほんと!?真由ちゃん、こんなのんびりした性格してジェットコースターとか平気な顔して乗っちゃう系女子!?

「じゃあ、とりあえずシン・ラット行く?あそこなら待ち時間いつも五分・十分ぐらいだからすぐ乗れるはず!」

 へぇ、そんな待ち時間情報とかも細かく頭に入ってるんだ。凄いな、真由ちゃん。なかなかのやり手。

「うん!行く!」

 そして、僕たちはインディアンロードへと向けて出発した。

 歩くこと十分ほど。

「あ!ファンヌーみーつけた!」

 やっとシン・ラットの目印となる金の看板が見えた。

 これがあったということは…到着だ!

 中に入ると、真由ちゃんの言っていた通り大して列は長くはなかった。

「なんか久しぶりだなぁ〜、この感じ。高校生以来かなぁ」

「そうなの?」

「うん。私ね、高校生の時親友の女の子一人と男友達一人と、当時の元カレと私の四人でね、一回ここ来たことあったの。でもね、私の元カレは親友の子と手繋いだりとか、二人がけのアトラクションで親友と座ったりとか…。男友達の方はそもそもアトラクション自体に乗ってなかったから私一人でさ。すごく…辛かったんだ。でも今は、こうやって星夜くんと来れてよかった!これだけでも最高の思い出だよ!」

 その元カレ最っ低!!僕が成敗してやりたい!真由ちゃんにそんな辛い思いさせるなんて許せない!!

「そっか…そんなことあったんだね…。でも、僕はこの後も最高の思い出作り一生懸命手伝うから精一杯一緒に楽しもう!僕とトラストの力を合わせれば、きっと真由ちゃんも本当の魔法にかかるかも?」

 そう、僕はマジックって言う肩書の魔法を操れる。そしてここは夢と魔法の国。じゃあ、二つの魔法の力が合わさって人一人ぐらいは本当の魔法にかけられるんじゃない?

 うん、これで更に確信が持てた!真由ちゃんを今日一日全力で楽しませてあげるって言うのは僕の絶対的な使命だ!やってやるぜ!

 そう僕が心に改めて誓ったのとほぼ同じタイミングでゴンドラが搭乗口に着く。

 やったー!久しぶりのシン・ラットだー!ワクワクするなぁ〜。

 そして、出航の準備が整うや否や一気に加速する。それと同時に来る、ふわっとした感じ。顔に当たる風が、シン・ラットの水の匂いをいい感じで僕の鼻に薫らせてくる。

「どうしたの?」

「今のふわって感じのがすごく気持ちよくて。わかる?」

「あー!わかるー!なんか急に来るからちょっとびっくりするんだけど、風が気持ちいいんだよねー!」

「うん!やっぱわかるよねっ!」

 真由ちゃん、やっぱりすごく気が合うかも。好きなアトラクションのタイプもほぼ一緒だし。

 因みに、まだゴンドラは出航して数メートル程。ストーリー自体はまだ始まっていない地点。

「あっ、あっちにファンヌーいるよ!」

「え?ほんと?どこどこ??あ、ほんとだ。戦ってる〜、可愛い〜!」

 やばい、超可愛い。作り物だとは思わせないくらいの愛くるしさがある。流石は夢の国だなぁ〜…。そしてそれからゴンドラでシン・ラットの世界を数分間堪能した後、僕たちはゴンドラから下船し、トラストの世界へと戻った。

「ねぇ次どこ行きたい?」

「んー…ガイドブックルーレットで決めない?」

「ガイドブックルーレットってなに?」

「うん。バーってガイドブックめくっていって、開いたページのアトラクションに乗るの!」

「おー、それいいね!」

 そして、真由ちゃんがガイドブックのページを一枚ずつパラパラパラとめくっていく。

「ココっ!『エレベーター・ディセント』おー!どうする?」

 おぉ。ニ番手で絶叫系?いいね!でも今回は付添人が僕のマネージャーのカッシーじゃなくて、真由ちゃんっていうトクベツな環境。今回はちょっと普段とは違う感じで楽しめそうな予感…!

「ここでいい?」

「勿論!」

 どうしよう、僕ったらもうドキドキしてきた。でもこのドキドキってどっちのドキドキなんだろう…。…着けばすぐにわかるかな?

「うん、わかった。じゃあ、行こう?」

「うん!」

 そして、僕はこのドキドキの正体を突き止める為の第一歩を踏み出した。

 エレベーターディセント、到着!このドキドキは一体なんなのか解明してやるぜっ!

 僕がまだここでファンキャストやってた時は、よくカップルみたいなペアが入ってくのを目にしてたけど、もしかしたらその男性側も僕と似たような心境だったのかな…。

 …ん?なんか後ろから視線感じるんだけど…。何かあるのかな…。

「うわぁっ!びっくりしたぁ!」

「ん?あぁ、これね〜。確かに最初はびっくりするよね。でも慣れてくればそんな驚かないよ〜」

「うんっ、よくそんな冷静でいられるね…」

 びっくりしたぁ〜…。もぅ心臓に悪いよ…。それにこんなの、ここにあったっけ?

 っていうか、何で真由ちゃんキャストじゃないのにこれの存在知ってたんだろう…?ていうか、それ以前に全く怖くないのかな…。

「どうしたの?」

「…真由ちゃんって、怖いものとかないの?」

「え、全然あるよ〜!初めて見るホラーとかも怖いし、災害も怖いし。でも何よりも怖いのは、この幸せな時間がいつか終わっちゃうことかな」

 え。

 それって、要するにはずっとこの時間が続いて欲しいって、僕と一緒に居たいって思ってくれてるってこと?

 真由ちゃんも僕と一緒のこと思っててくれてたんだ…。

 …あれ?なんか必死に隠してるみたいだけど、照れてる?頑張って冷静な大人っぽくしようとしてるとこ、なんか真由ちゃんらしいなぁ…。

「ありがとう。真由ちゃんと一緒にいる時間ずっと続けばいいのにね…」

「うん…。でも、幸せな時間にはいつか終わりがあるからまた次の幸せな時間が訪れる。だから、今を楽しも!」

「…うん!」

 次の幸せ…か。…次ってあるのかな。

 僕たち、ここで逢えたのは偶然なのに、次ってあるのかな…。公演で出逢えたとしても一お客さんとしてしか接することができないなんて…そんなの…嫌だ。

「じゃ、あとしばらくしたらちょっと面白いことが起きるからそれまでは待機だね」

 そしてかれこれ三十分ほど。僕たちは小さな小部屋へと案内された。一体、なにが始まるんだろう…。

「本日は、ビル・ツリー二世のツアーへようこそお越し下さいました。はじめに、ビル・ツリー二世の記者会見を流させて頂きます」

 同時にお姉さんがボタンを押すと蓄音機から音声が流れ出す。

 記者会見中盤。突然、記者会見のテープが止まり、怪奇現象がおこる。

 ええぇっ!?どうなってるの!?あのひげのおっさんちょーやばいやつじゃん!あの呪いの像もちょー怖かったし。

「すごいいい感じでゾッとするよね。あのベソニネファトカーケシとかいう呪いの像もすっごくカッコ良かったし!」

「真由ちゃん…強すぎ…」

 真由ちゃん…本当に耐性ありすぎ…。

 …って言っても別に僕もそんなにすっごく怖いってほどでもないんだけどね…。

 そして、遂に搭乗口。

 僕は少々ドキドキしながら荷物を座席のポケットにしまい、シートベルトを閉める。

「ねぇ、星夜くんってさ高いとこどれぐらい苦手?」

「えっ?」

 急にどうしてそんなこと聞くんだろう…。

「どうして?」

「ふふっ、なんでもない!」

 えっ。

 すると、突然エレベーターは動き出す。

 絶叫は好きなんだけど…一番最後の絶景見せるとこが怖いんだよなぁ…。

 そして何度か急上昇急降下を繰り返す。

 時折、真由ちゃんの方を見てみたのだがいつ見ても超楽しそう。マジの怖いもの知らずって多分こういう人のこと。

 すると、目の前にさっきの呪いの像が現れた。ベソニネファトカーケシだっけ…?

「現実世界のお前自身にお別れの挨拶をするんだな」

 えっ!?何言ってんの!?

「お別れっ!?」

 急に悪寒が走り、咄嗟に真由ちゃんの方を見たのだが何故かうっとりしながら手を振っている。

 えぇ。なんで…?

 そう思った、次の瞬間。

 窓の向こうに広がるトラストアクアの景色。思わずその景色に足がすくむ。やっぱり、絶叫好きでも、これだけは苦手だ…!

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 無理ーーーーーっっっ!!!!

 僕は、落ち続けている間、目をぎゅっと強く閉じて真由ちゃんの手を強く握り締めた。

「星夜くん〜?もう終わったみたいだよ〜?」

「…ほんとに…?よかった…」

「じゃあ、とりあえずここから出よ?」

「うん」

 そして、僕たちはエレベーター・ディセントから外へと出た。

 だが、まだ高所での立ちくらみが残っているのか、足元がおぼつかない。

「星夜くん、大丈夫?ほら、そこのベンチでちょっと休もう?」

「うん…」

 こうやって優しく気遣ってくれるのが真由ちゃんのいい所なんだよな…。

 僕はそんな甘えの気持ちから真由ちゃんの肩にもたれて目を伏せた。ちょっとだけでいいからこうしていたい。

 そんな僕の思いに応えてくれるかのように背中をさすってくれる真由ちゃん。

 温かくて安心する…。さっき怖かった出来事がまるで全部嘘のようにさえ感じられる。

「…怖かった…。僕…本当はああいうホラーなやつとか凄く苦手なの…」

「…やっぱそうだったんだね。よしよし。よく頑張った。誰かに頼りたい時は、思いっきり助けてって言ってもいいんだよ」

 こう言うとこ!真由ちゃんのこういうとこがすっごい大好きなの。だから一緒にいたいって思える。もしかしたら一緒にいて安心する人って意外と近いけどわからない場所にいるものなのかもしれないな…。今日、パークで真由ちゃんに出会えたみたいに。

「…やっと落ち着いてきた。ごめんね、迷惑かけて…」

「ううん、大丈夫。人には得意も不得意もあるよ!私も昔はエレベーター・ディセント乗って大泣きしちゃったし…。星夜くんもきっと、いつか克服できるよ!もしダメだったならそのままでもいいしさ」

 そうか…。この子は僕のことここまで心配して気遣ってくれてるんだ…。なのに僕はまだ何もしてあげられてない…。じゃあ僕ができることって…。

「僕、真由ちゃんみたいな人に初めて逢ったよ!だから僕、もっとキミのことを知りたい。ねぇお願い。この後時間空いてる?もしよかったら僕の下見付き合ってくれない?」

「えっ、と、時間はあるけど、それって星夜くんのマジックショーの下見でしょ?一般のゲストの私が入っちゃダメなんじゃ…」

 やっぱりそうくると思ってた!でもこの僕ならどうにでもできるんだなぁ〜。

「大丈夫。僕がなんとか言い包めるからさ」

「…うん、わかった!私も一緒に行ってみたい…!」

 おぉー!嬉しい!!普通の人ならここでも『いやでも…』ってなるのに真由ちゃんならなかった!やばい、僕、やっぱり真由ちゃんのこと…。

「…ぃっ!うんっ!じゃあ今から行こう!」

「えっ?今から?」

「うん!予定よりちょっと早いかなぐらいだから大丈夫だよ!さ、こっちだよ!ついてきて!」

 今回もお読み頂き、誠にありがとうございました!

 今回は今までの四作の中で、最も裏物語らしい裏物語になっていたのではないでしょうか。ですが、今回は真由編。

 え?「真由よりも星夜の裏物語出せよ!」ですって?えぇ、えぇ、勿論、分かっています。でも、何事も楽しみは後に取っておく、というのがこの世の習わしでしてね?

 勿論、もう既に準備はしてありますよ。第10章に。まだ書き途中ではあるんですけどね。なのでお待ちくださいませ…ふふ…。

 きっとそれまでの作品も、その作品も貴方あなたに気に入ってもらえると思います。そんな作品になるよう、私は精一杯努力しますので、これからもお時間のある方はどうぞよろしくお願い致します。

 それでは、改めて、最後までお読み頂きありがとうございました!

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