表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/15

第11勝〜二つの世界〜

「星夜くん!起きて!星夜くん!」

 僕はその朝、真由ちゃんに体を大きく揺さぶられて目を覚ました。

「うぅ〜…何〜どうしたの〜…もう少し寝てようよぉ〜……」

 僕は夜型な為、まだ眠気が酷く寝たい気持ちが強かった。

 てかメタい話、みんなに小説として説明するのが面倒なくらい眠い…後は察して……おやすみ…。……ぐぅ

「ねぇ、そんなことよりどうして昨日の夜、あんなことしたの?ただ遊ぶ相手が欲しかっただけなの?私は星夜くんのなんなの?」

「!」

 ごめん、みんな。前言撤回。察しなくていいよ。

 僕は、真由ちゃんの言葉にビクリと体を震わせた。目も勿論、覚めた。

 僕が真由ちゃんを単なる遊び相手…?そんな訳…ない!!

「遊ぶ相手が欲しかったなんて、そんな理由じゃない。僕がそんな下らない理由で、真由ちゃんに近づく訳がない!」

 僕は飛び起きて真由ちゃんの瞳をじっと見つめた。

「じゃあ、なんで?」

 僕は、正直に昨日真由ちゃんに対して思っていたことを伝えた。そして僕がそんな気持ちになってしまった原因の主犯が、トリュフである、と言うことも。

 一部始終を聴き終えた真由ちゃんは、少し眉を潜めた。

 なんだろう、やっぱりやましいことでもあったのかな…。

「…あのトリュフ…確かに男性にプレゼントする物ではあるけど…」

「ひど…ッ僕がいるのに…?」

「違うって…。弟にあげるものなの。弟が甘い物好きだから…」

「えっ…弟…?」

「うん。弟」

 弟…なんだ…彼氏じゃ…ないのか…。昨日僕が炸裂させてた嫉妬心は存在しない人宛だったのか…。または弟さん宛。

「じゃあ…他に気になってる男って…」

「いません」

「なんだぁ〜〜……」

 気になってる男もいないんじゃ、確定じゃん。ほんっと、安心した〜。後にも先にも彼女って呼べる人なんて真由ちゃんぐらいしかいなさそうだし。まあ、正確にはまだ彼女ではないんだけどね。早く彼女って胸張って呼べる日来ると良いなぁ。

「先に言っておくけど、後にも先にも、私の彼氏になれる人は星夜くんだけだよ?」

「…!僕…だけ…?って事は、本当に付き合ってくれるの…?」

「当たり前じゃん。それなりの段階踏んでからだけどね」

 やっぱり、真由ちゃんは僕と付き合いたいって方向で考えてくれてる…。僕とおんなじなんだ…!嬉しい…!

「どうしたの?」

 真由ちゃんが僕の顔を覗き込むのと同時に、僕は真由ちゃんに抱きついて、ベッドに倒れ込んだ。

「大好きっ!!」

「わっ!」

「やっぱり、僕真由ちゃんの事信じるよ!だから、返事、いつでもいいからね。ずっと、待ってる!」

「…うん」

 ふとして、僕は真由ちゃんから離れて時計を見ると、もう時計は十時を回っていた。

 折角だし、真由ちゃんに僕の特製オムライスでもご馳走しようかな。

「じゃ、そろそろお昼になりそうだし、ご飯食べよ!オムライス作ったげる!」

「え、意外。炊事できるの?」

「酷くない?僕だって一人暮らししてるんだから少しぐらい作れるよー!」

「あ、ごめん、つい本音が…。まぁ、星夜くんに任せっきりって訳にもいかないし、私も洗い物とか手伝うよ!」

「ありがとー!」

 …まぁ、余りバリエーションは多くはないんだけどね。だってどうせ一人だし。

「ねぇ、真由ちゃんは何か料理とかで得意なメニューとかってあるの?」

「得意なメニュー…。んー…得意って訳ではないけど、よく弟にねだられるから、煮込みハンバーグとかは作ったりするかな。その度に美味しいーって食べてくれる。まぁ、私のカフェのメニューをアレンジしたやつだからね」

「へぇ!ハンバーグ作るんだ!美味しそーっ!今度僕にも作ってよ!」

「いいよ?でもその時は変な連れ込み方しないでね?」

「…はい」

 やっぱり昨日のまだ気にしてた…。そりゃあそんな簡単には流してくれないよね。

 そして、作業すること十分ほど。

 いよいよオムライスの卵も焼き上がり、サッとフライパンから移そうとすると…。

 破けた。

「…またやっちゃった」

「あー、卵破けちゃったね…。まっ、仕方ないよ〜」

「…違うもん、これはわざとだもん、中の具材たちが苦しそうにしてたから少し開けてあげただけだもん」

 そう、苦しそうにしてたから。これは僕の親切心。失敗なんかじゃない。

「そ、そっか。まぁ、星夜くんの優しさだね」

 ん?なんかちょっと真由ちゃんが苦笑いしてるような気がするのは気のせい?

 それから僕たちは食べる準備をササっと済ませると、直ぐに食べ始めた。

 食べてみた感じ、いつもとおんなじで美味しい。でもそれはあくまで僕の感想。問題は真由ちゃんが食べてどう思ってくれるか。

「うん、すごく美味しいよ!このオムライス。味の濃さも丁度いいし、卵もとろとろしててそこもいい」

「ほんと〜!?嬉しい!僕家族以外に手料理食べてもらった事無かったから感想言ってくれる人他にいなくて…。ちゃんとした感想聞けて良かった!」

 中々の手応え…!よかった!

 その後、昨日のトラストのことなど談笑しながら食事は進んでいった。

「あ、そう言えばさ。昨日のこの時間って、大体星夜くんと一緒にエレベーター・ディセント乗ってた時間じゃない?」

「あ、ほんとだー!」

「すごいね、もう二十四時間以上も一緒に過ごしてる…!」

「ねぇ、僕もまさかこんなに一緒に過ごすとは思ってなかったよ」

 途中までは。

「私も。じゃあ、今日はこの辺でお開きにしよっか。そろそろ帰らないと。弟に夜帰るって言ってたのにこんな時間になっちゃったからさ」

「…うん、わかった」

 本当はずっとここにいて欲しかったけど…仕方ないかな…。真由ちゃんもお仕事あるし…。あ、あとあの事もお願いしなくちゃか…。

 「ねぇ、真由ちゃん。一つお願いがあるんだけど」

 僕は真由ちゃんに、昨日と今日の事を一切口外したり、ネットに書き込んだりしないようにようにお願いした。

 だって、そこから僕を応援してる人に届いちゃったらなんか大変なことになっちゃいそうだもん…。

「あ、そう言えば星夜くんってさ…」

 真由ちゃんが途中まで言い掛けると…。

 ピンポーン

「星夜さーん」

 えっ!?カッシー!?なんでっ!?

 僕は慌ててカレンダーを見ると、今日の日付のところに「カッシー打ち合わせ」と書いてあった。

 そうだったー!忘れてた!「どうせこの日僕暇だしー。メールじゃなくてカッシー僕の家まで来てよー」って言ったんだった!

「今日カッシー来る日だった…!!ど、どうしよう…!?」

「か、カッシー…?」

「僕のマネージャー。かしわ晴翔はると。すっかり忘れてた…!ねぇ、どうすればいい…!?」

「星夜さーん?」

「あっ、はーい!ちょっと待ってー!」

「えっ、とー…そうだな…普段はどの部屋に案内してる?」

「殆どリビング。この部屋にはまだ通した事ないよ」

「なら、私ここにいるから。ドア閉めて静かにしてればバレないでしょ」

「う、うん。じゃ、また後で…」

 ちょっと不安だけど…もうそうするしかない…。

 僕は止むを得ず、急いで部屋を出た。怪しまれないように、いつも通りに玄関のドアを開けると、そこには少し心配した様子のカッシーがいた。

「おはよー、遅くなってごめんね。ちょっと片付けてたの」

「わざわざお気になさらなくても…。でも、ありがとうございます。……あれ、どなたか今日来ていらっしゃるんですか?」

「え゛っ!?」

「いや、だってほら靴。それ、女性物ですよね?それに星夜さん、そのサイズだと入らないでしょうし」

 忘れてたっ!!真由ちゃんの靴、出しっぱなしだった!!ど、どうしよう…!僕の足のサイズは二十八だし、ギャグでも「縮んだの、だから入るよっ!」なんてやつはできない…。それこそ正にシンデ○ラみたいになっちゃうし…。

「あ、う、うん…まぁ…あ、アシスタントの子がちょっと朝来たんだけど…」

 …とにかく、ここで話を深掘りされたらまずい。早く奥に案内しよう。

「まぁそんなことよりさ、早く中入ってよ。中でゆっくりお茶でも飲みながら話そ?」

「あ、はい…」

 ふぅ、緊急回避成功。まぁ、その場をやり過ごしただけだから…後が一番心配なんだけどね…。

 リビングでカッシーを席に着かせてお茶を煎れると、やっぱり気になっていたのか、不思議そうにカッシーは僕の方を見てきた。

「えーと、それでさっき言ってたアシスタントの子って、そんな人居ましたっけ?」

「う、うん。昨日、僕がスカウトしたんだ。素質ありそうだったから」

「へぇ…」

 正確には、『素質』よりも、『好み』の方が大きかったんだけどね。人としての。あ、でも勿論素質としてもいいなって思いましたよ!うん!だって、僕が初めて真由ちゃんに会った時はラッフィの声めっちゃ上手いって思ったもん!

 僕は煎れ終わったお茶をカッシーの前に置き、僕も座ろうとした、その時だった。

 ドサッ

「「えっ!?」」

 真由ちゃん…!?倒れた!?何があったの!?えっ…?見に行きたいけど…。ど、どうしよう…!

「なんか倒れた音しましたけど…見に行かなくて大丈夫なんですか?」

「あ、ちょ、ちょっと…見てくる」

 真由ちゃん…!どうか、どうか無事でいて…!

 僕は不安と焦りを抱えながらドアを開けると、そこには苦い顔をしながら腰を摩る真由ちゃんの姿があった。

 どうやら真由ちゃんの話によると、足元にあったビニール袋で足を滑らせて、転んだらしい。なんて言うか…おっちょこちょいって言うか…まぁ、無事で良かったけど。

「あ、後、カッシーさんとはどんな話するの?」

「あぁ、今後の簡単なスケジュールについてをちょこっとだけ。本当はメールで良かったんだけど、僕が暇だからうち来いって呼び寄せちゃったの」

「あー、なるほど…」

 だからこんな大変なことになっちゃったんだけどね…今になって反省…。

「わかった。じゃあ、終わるまでは私待ってるから、星夜くんは打ち合わせ終わらせて来ちゃってよ。カッシーさんも待ってるだろうからさ」

「うん。わかった!」

 …なんだか夫を仕事に送り出す妻 さながらの雰囲気。これは頑張れる。

 僕はドアをゆっくりと開けると、真由ちゃんに笑顔で手を振り、「いってきます」と、表情で言ってからリビングへと向かった。

「カッシー。戻ったよー。なんでもなかったー」

「そ、そうですか。じゃあ、スケジュール確認、始めてもいいですか?」

「うん」

 僕が頷くとカッシーは一度頷き、手元の手帳に目を落として淡々と今月の予定を僕に伝えた。その間、僕もスケジュール帳に目を通し、書き忘れが無いか、とか、いつまでに何を終わらせればいいか等の構想を改めて練る。

 他にもショーを開演するに当たっての支出等の報告なども受ける。

 実際、こういうことやってると「魔法使いらしくないなぁ」とかも思うけど、でも、そういうことも兼ねるから、より理想に近づいた魔法を作れることだってある。

 それを一番僕に知らしめたのは、シャボン玉のマジック。実はあのマジック、ぬいぐるみは昔から使ってたやつだし、シャボン玉の容器も昔から使ってたやつだから、実はかなりコスパはいい。シャボン液は自作だしね。

 そして暫く報告を受けて…。

「はい。これでスケジュール確認終わりです。お疲れ様でした」

「お疲れ様でしたー!」

 やったー!終わったぁー!いつになっても仕事が終わった後の開放感って、ほんといいよねっ!

「あ、あの…星夜さん。お手洗い借りてもいいですか?」

「あ、うん。まっすぐ行って右向けばすぐ分かると思うから」

「はい、ありがとうございます」

 カッシーが部屋を出ると、静かな空気が部屋の中を漂った。

 …なんだかんだ言って、真由ちゃんと出会ってから今までの時間。長いようで短かったなぁ。多分あと少しでこの時間にも終止符が打たれちゃうんだろうけど、そしたら、次また笑顔で会いたいな…。その時には…本当の僕の姿も見て欲しいな…僕の、クレッセント・ムーンの姿も…。

 …ていうか、遅くない?カッシー。

「戻りました」

「おかえり」

 あ、そう言えばさっきの待ち時間に頭よぎった時に思い出したんだった。お土産渡さなきゃ。

「あ、そーだ。昨日さぁ、トラスト下見で行ったんだけど、そのお土産カッシーたちの分もあるんだよね。いる?」

「え、いいんですか?」

「うん、いいよ。ちょっと待っててね」

 僕はそっとリビングを出て、再び真由ちゃんのいる部屋へと向かった。なんだかさっきから僕とカッシーで出入りが多い気がする。

「真由ちゃん!カッシーのお土産、取りに来た」

「うん、実は会話、全部聞こえてたりする」

「えっ、本当!?」

「本当」

「もしかしたら、この会話も聞こえてるかもよ?」

「ウソー!?早く戻んないと!」

 お、脅し…?としたら、何の脅し…!?

 僕は半分恐怖を抱きながらお土産を持ってカッシーの所に戻った。

「持ってきたよ〜!」

 カッシーにお土産を渡すと中身を見て嬉しそうに顔をほころばせた。

「おぉ、お菓子。いいですね。戻った時にみんなで分けますね。ありがとうございます」

「いいのいいの〜。普段のお礼の気持ちだから〜」

「あ、じゃあついでに聞いていいですか?」

「何〜?」

「トラスト、アシスタントの子と行ったんですか?」

「え?」

 待って待って!!なんでそれ知ってるの!?昨日は事務所にいたはずじゃないの!?

「だって、さっき部屋を少し見させて頂いた時、部屋にトラストの袋が置いてあったので…。大袋が二つ。って事は、アシスタントの子と行って、その夜ここで泊まった…と?」

 …完全に読まれた…。どこで見られたのかは分かんないけど…ここまでバレちゃったら言い逃れできないじゃん…。

「あ、う、うん…」

 すると。

「言わないでくださいっ…!」

「…えっ!?」

「あ、余りその内容については…触れないでください……」

 突然真由ちゃんの声がしたかと思ったら、真由ちゃんがほんの少し涙を浮かばせながらリビングの入り口に立っていた。

「あ、ごめんなさい…」

「真由ちゃん…出ちゃって良かったの?本当は部屋に居たかったんじゃなかったの…?」

「ううん、いいの。既にカッシーさんとは話してるから。だから、少しぐらい言っちゃおうって思って…」

「話した!?いつ!?」

「実は…さっきカッシーさんが一人で部屋の前通った時に少しだけ。私が転んだから…心配してくれたの。だから悪く言わないで。お願い」

 ふーん。じゃあ女の子が一人でいる部屋に「勝手に」入ったんだ?しかも、「僕の」パートナーなのに?

「そうだったの…?カッシー。もちろん、どうするべきか分かってるよな?な?」

「は、はい…。でも星夜さんの邪魔になるようなことはしませんし…」

「なら許してあげる。ほら、今日はもう帰ったら?この後予定あるんでしょ?」

「え?…あ、はい。じゃあ、失礼します。お邪魔しました…」

 そう言うと、カッシーはすごすごと帰って行った。

 はぁ…。精神的に疲れた。こんな時は精神的な癒しが欲しくなるな…。って事で!

「ねぇ、真由ちゃん。今ふと思ったんだけどさ。僕とrinリン交換しない?」

「え?うん、いいよ?」

 真由ちゃんがスマホにrinのQRコードを映し出すと、僕はすぐにそのQRコードを読み取った。

 すると、真由ちゃんと誰か知らない男がなんだか親しげに写っているアイコンが表示される。

 彼氏いないって言ってたけど…あ、元カレ…?地味に今も友達だったりする…のかな…?

「えーと、こんな感じでの紹介になって申し訳ないんだけど、私の弟の理玖都りくと。見ての通り、超甘えん坊で、私もそんな理玖都が大好きで甘やかしちゃって…いわゆる、シスコン、ブラコン、ってヤツ…引いてたらごめん…。ひとまずアイコン変えるね」

 あ、これが昨日のトリュフ事件の弟さんの理玖都くんか!えっ…イケメン…。…。大丈夫だもん!僕だって…僕だって、カッコいいって言われてるもん!(時と場合によるけど)可愛い?とも言われるもん!ふんだ!

 てか、この猫のiceアイスで撮ったと思われる写真、可愛すぎる…。

「ダメ。猫。この猫、超可愛いからこれと同じポーズとって」

「えっ!?」

 真由ちゃんは少したじろいで、その後、「やっぱり無理」と言うような顔をした。

「僕だって、練習してこういうのやったりしたことあるんだよ?」

 僕はそう言って、tooトゥー niceナイスでアップした動画を真由ちゃんに見せた。最初はお兄ちゃんに勧められたからって理由だけだったけど、やってみると案外楽しかったって言うのが本音。まぁ、すぐ飽きちゃったんだけど。

「え、すご…うま…可愛い…」

「えっ、カッコいいじゃないの?」

 なんでみんな「可愛い」なの?僕男だよ?「カッコいい」じゃないの??…そんな事言いながら慣れてはいるんだけどね?嬉しいんだけどね?

「あっ、ごめん、でも、上手いよ!!編集すっごく上手だし、振りも完璧だし!流石だね!」

「えへへ…ありがと〜。じゃあ、猫、やってくれる?」

 褒められてもそこだけは屈しない。

「うん。やるよ」

「おー!じゃあ、にゃんポーズで」

「…はい」

 結果、真由ちゃんがやってくれたポーズは、女子にやらせれば男は誰もがきゅんとするであろう最高のポーズになった。それにiceの機能だから尚のこと。

 でもこれ、使えないらしい。職場の人とか家族とかにも繋がってるから流石に無理があるとのこと。けど、僕に写真は送ってくれたため、いつでも写真は見ることができる。

 幸せ…。真由ちゃんのrinの壁紙にしよ。

 因みに、最終的には真由ちゃんのアイコンは、昨日二人でブルー・アースの前で撮った写真をトリミングして、それに猫耳をつけて、その写真にするということになった。

 そしてもう完全にお開きをするという流れになり、僕は真由ちゃんを最寄りの駅まで送ることにした。

 車を駐車場から出して真由ちゃんを乗せると、僕たちは刻一刻と別れの時間が迫っていることを実感していった。

「…なんだか、すごい一日だったよね。ファンカストさんと、そのファンの私がさ。偶然会ってここまで発展するなんて」

「ほんと…。僕も着いた時はあんなことになるなんて思ってもなかった。もし僕がホントの大人だったら、出会ってなかったからね」

「え?」

「んとね、僕が着いた時ね、『本当は予定の五分か十分前に着くのがホントの大人なんだろうな』って思いながら見回してたの。でも僕、トラストだからそれが嬉し過ぎて開演時間に合わせて来ちゃって…。だから会えたんじゃないかな」

「…そっか。じゃあ、そんな子供っぽい星夜くんで良かったね。そうじゃなきゃ会えなかったし、私もこうして今隣にいることができなかっただろうし」

 どことなく嬉しそうだな。真由ちゃん。

「うん。また近い内に会おうね。絶対」

「うん。約束!」

 駅について真由ちゃんを降ろすと、真由ちゃんは改札へと真っ直ぐ歩いて行った。

 じっとガラス越しにその姿を見てみると、別れ際は明るかったのに、今は項垂うなだれてる。

 …寂しいの、僕だけじゃなかったんだ。

 真由ちゃんの姿が見えなくなると、僕は再び家へと向けて車を走らせた。家に着いてからも、特にこれと言って何のやる気も起きず、来週の公演のマジックの確認も手につかなかった。やらなきゃいけない、とかもわかってるんだけど…やる気がどうしても起きず。最後には寂しさから涙が出てきた。その涙は一向に止まらず、僕は昨日真由ちゃんと一緒に寝た枕に突っ伏して号泣した。

 そしてその頃、真由ちゃんも同じように僕とは違う形ではあれども号泣していたのを僕は知る由もなかった。

 今回もお読み頂き、誠にありがとうございました!

 裏物語…本編中心で書いていたらすっかり後回しになってしまい投稿が遅くなってしまいました…。申し訳ありません…。

 これからの裏物語は、かなり裏らしい裏が見えてくると思います。

 が

 あくまでこれは私の予想で書いているので、鵜呑みにしないでください。私も真相は知りません。

 そして、確率としてはかなり低い話ではありますが、もしこの題材になっているお話に関するもののお仕事をされている読者様がいらした場合、違う箇所があったらバシバシご指摘くださると有り難いです!

 これからも温かく見守ってやってください…。

 それでは、改めて、最後までお読み頂きありがとうございました!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ