↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
5/40

第5話 決闘

20191102 更新二回目

           ※




 言われた通りに道を進んで行くと、城下町の中でも特に立派な建物が目に入った。

 巨大な門が関係者以外の入場はお断りとばかりに閉じられている。

 あれが騎士学校で間違いないだろう。

 城下町の中にあるというのに敷地はかなり広い。

 その中には身なりの整った若者たちの姿が見えた。


(……念の為、俺も服装は合わせておくか)


 敷地内に入るならその方が都合が良さそうだ。

 物質変化(マテリアライズ)の魔法で、俺は着ている高校の制服を変化させた。


『巡……どうやら、色が複数あるようだぞ』

『うん?』


 アルに言われもう一度生徒たちに目を向ける。

 どうやらネクタイと校章の色が何種類かあるらしい。


『おそらく学年や学科の違いだろう』

『ああ、そうか。

 人は年齢を気にする生き物だったな』


 永遠を生きる神たちにとっては、学校社会の先輩後輩という関係は理解しずらい物なのかもしれない。


(……アルと一緒にいると、神界の文化を知る機会がありそうだな)


 そんなことを思いながら、俺は門を軽く飛び越えて敷地に入った。

 気配消しの魔法も使っているので俺に気付く生徒はいない。


(……さて校舎に行くか)


 目指すは勇者の教室だ。

 もし恋がいたら直ぐに接触しよう。

 そう決めて俺は校舎に入ると、廊下にいた生徒たちが何やら騒いでいた。


「おい、聞いたか! 今から決闘があるってよ!」

「マジで!? 誰と誰?」

「勇者の教室の生徒だって!」

「え!? 勇者候補生たちが決闘するのかよ!」


 決闘?

 生徒たちの騒ぎようからして、授業一環というわけではないのだろう。

 

(……恋が面倒なことに巻き込まれてなければいいんだが)


 とにかく彼らに付いて行ってみるとしよう。




          ※




 生徒たちが向かったのは訓練場だった。

 既に多くの生徒が集まっている。

 注目を集めているのは中心に立っている二人の生徒だ。


「よく決闘を受ける気になってくれたね」

「……あんたがしつこいからよ」


 面倒そうに口を開いた金髪の少女は俺の幼馴染――麗花(うるか) 恋(れん)だった。

 気が強そうなのは相変わらずのようで、男相手にも全く物怖じしていない。


『おお、早速見つけたではないか』


 アルの言う通り、それ自体は僥倖だ。

 が、やはり面倒事に巻き込まれているらしい。

 恋の向かいにいる男は、彼女に下卑た視線を向けている。


「受けたからには負けた時に覚悟しておいてくれ。

 キミを僕の物にする。

 知っているかい? この世界には奴隷にだけ刻まれる印があるらしいよ?」

「……奴隷とか頭おかしいんじゃないの?」


 恋は明らかな軽蔑の目を向ける。

 気が強いところは異世界に来ても全く変わっていないようだ。


「好きなだけ言えばいいさ。

 奴隷になればわかるさ。

 女は男に身も心の支配されることが、最高の幸せだと教えてあげるよ」

「あんたみたいな女性を見下す男――あたしが一番嫌いなタイプだから!

 もう話したくないから、さっさとかかって来なさいよ」


 恋は片手剣を構えた。

 持っているのは刃のない訓練用の剣ではなかった。

 どうやら本当に生殺与奪を掛けた決闘らしい。

 互いの命を懸けているからこそ、敗者に対する命令権が与えられるわけか。


「この異世界で僕たちが出会ったのは運命なんだ。

 奴隷になっても可愛がってあげるから――ねっ!」


 先に動いたのは男の方だ。

 疾駆した瞬間、砂ぼこりが舞う。

 思っていたよりは動きが早いのは、魔法で身体能力を強化しているからだ。


「手加減はしてあげるからさっ!!」


 ザンッ!! 大剣を振り下ろした風圧で風が舞う。

 長身痩躯で大して鍛えあげられてもいない身体から、信じられないような強烈な一撃に戦いを見守る生徒たちから歓声が上がった。

 が、恋は受けることすらなく、冷静に男の行動を見てからその一撃を避けて、流れるように反撃する。

 

「そんな大振り当たるわけないでしょ」

「おっと……!」


 振り下ろされた大剣を構えなおす余裕はなかったが、男は後方に下がることでなんとか攻撃を躱した。

 だがその一撃は牽制だ。

 恋は男が後方に下がることを予想して連撃を組んでいる。

 その証拠に彼女は攻撃を躱された直後に一歩足を踏み込んで、


「ふっ!」


 疾風のように迅速な動きで突きを放った。

 剣で防ぐには間に合わない。

 防ぐことのできない必殺の一撃。

 だが――ギンッ!

 剣の切っ先が男を穿つことはなかった。

 見えない壁のようなものが、恋の攻撃を阻んだのだ。


「っ――」


 態勢を整える為に、恋は一歩後方に下がる。


「驚いたかい? これが僕の固有技能(ユニークスキル)――自動防御(オートガード)だ。

 どんな攻撃もこの見えない壁が防いでくれる」


 異世界に飛ばれた際、多くの転移者や転生者は固有技能(ユニークスキル)と言われる自分だけが持つ特殊な力を一つ得ることができる。

 その効果に当たりはずれはあるが、基本的には強力なものが多い。


「それとキミは剣が得意なようだけど、僕は魔法のほうが好きなんだよね。

 ほら――ファイアーボール!」


 男が手を掲げると上空に十数個の炎の玉が出現した。

 それは恋を目掛けて一斉に放たれた。


「……見えない盾っていうのは面倒だけど――」


 防御に徹するのかと思えば、恋は炎に向かって突き進んでいく。

 そして迫りくる炎玉を全てギリギリのところで躱していた。

 まるで戦場を駆るワルキューレのように勇ましく華麗な戦いに、観客たちは目を奪われていた。


「馬鹿なっ!? 一撃も当たらないだと!?」


 目を見開き男は驚愕する。

 攻撃が当たらないどころか、既に恋は男の目前にまで迫っていた。


「はああああああああっ!!」


 そして加速をのせた突きが放たれた。


「だが無駄だ。

 僕に攻撃は届かない」

「馬鹿はあんたよ」


 届かないはずの一撃。

 攻撃を阻むはずの絶対防御が――パリン――と、ガラスが割れるような音と共に砕け散った。

 目に見えているわけでない為、砕け散ったという表現が正確だったのかはわからない。 だが恋の放った突きは、見えない盾に阻まれることなく男の眼前の前で止まった。


「固有技能(ユニークスキル)はあんただけの特権じゃない。

 もちろんあたしは、どんな力か伝える間抜けじゃないけどね」


 自身の切り札がどんな効果なのか。

 それをペラペラと話した時点で勝敗は決していたということだろう。


「で、あたしの勝ちでいいのよね?」


 誰がどう見てもこの勝負は恋の勝利だった。


「もちろん……」


 そう口にして男が顔を伏せる。

 それを見て恋は剣を下げ――


「――認めるわけないだろ」

「なっ――ぐっ……!?」


 恋の身体が地面に沈んだ。

 重力魔法だ。

 が、男が魔法を使った形跡はない。

 今のはこの会場で決闘を見ていた観客が使用したのだ。

 それに気付いたのは俺とアル以外にはいない。


「――ははっ、これで身動きが取れないよねぇ……負けを認めるかい?」

「っ……認めるわけ、ないでしょ……!」

「そう……なら、お仕置きをしなくちゃだ、ねっ!」


 重力魔法を受けて身動きが取れない恋を踏みつけるように、足を上げ――振り下ろした。

 が、ドン! と、地面を踏みつける音だけが虚しく響いた。


「あ、あれ……?」


 男が間抜けな声を洩らしたのは、恋が消えたと感じたからだろう。

 だが当然消えてはいない。


「真剣勝負なら手を出すつもりはなかったんだがな」

「え……――っ!? な、なんで!?」

「よう、恋……変わってないな、お前」


 恋は今、俺が抱きかかえているんだから。


「か、変わってないって、え、な、なに!? どうしてあんたがここに!?」

「ははっ……まぁ、その辺りの事情はあとで話せてもらうとして」


 俺は決闘者に視線を向けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第一部完結しました。
『勇気を出してよ皆友くん!』
もしよろしければ、ご一読ください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。