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第32話 デート?

          ※




 ハルケニア大陸から転移して、俺は日本に戻ってきた。


「巡っ!?」

「先輩!?」

「狭間くん!?」

「狭間っ!?」


 直後、部屋にいた四人の少女が声を重ねて俺の名を呼んだ。

 彼女たちの表情を見るに、突然の帰還でどうやら驚かせてしまったらしい。


「ただいま」


 帰るべき場所に戻ってこれたのだから、とりあえずそう言っておく。


「おかえり、巡。怪我とか、してないでしょうね?」

「先輩~! 心配してたんですよ~!」


 安堵したように笑みを浮かべる恋と詩音が俺を囲んだ。


「ああ、大丈夫だ。心配掛けたな」

「べ、別に……あんたのこと信じてたから……」

「とか言ってますけど、恋さんが一番そわそわしてたんですよ~」

「ちょ、詩音! 余計なこと、言わないっ!」


 詩音がからかうように言うと、恋は否定もせずに顔を真っ赤にした。


「二人ともありがとな」


 俺は感謝を口にして、二人の頭を交互に撫でる。


「っ……べ、別に感謝されるようなこと、してないから」

「ふふっ、恋さんは先輩に撫でられたくないみたいなので、その分も、わたしにいっぱいしてください」

「あ、あたしは嫌だなんて言ってないでしょ!」

「あれあれ~? じゃあ恋さんは先輩に撫でてほしいんですか~?」

「ぐっ……そ、それは……あ、あたしは……め、巡がしたいって言うなら……」


 そんな強い意志も深い意味もなかったのだが、恋は上目遣いで俺の顔を窺いながら、その場で顔を赤らめてもじもじとしていた。

 別に強い意志も深い意味もなく、自然と撫でてしまったのだが……恋の目がもっとして欲しいと俺に訴えていたので――なでなで。


「ぁぅ……」


 恋を撫でると、さらに頬を赤くしてもじもじと塩らしい態度になっていた。


「じ~……」

「まるで恋人同士だね」


 そんな俺たちを見ながら、二人の転移者が苦笑していた。


「二人とも無事に戻って来れたようで何よりだ」

「うん……狭間くんのお陰でまたここに帰って来れた。本当にありがとう……ボクたち、一言お礼を伝えたくて待ってたの」


 柔和な笑みを俺に向けてから、隣にいるもう一人の少女に長嶺は視線を向けた。


「……わたしも感謝はしてるから。……だ・け・ど!」


 少し声を荒げながら、楠木は俺に詰め寄ってくる。


「わたしの為だったのはわかってるけど、あれはちょっとひどかったと思うの……」


 楠木が言ったそれは、惑星を消滅させた幻覚を見せたことだろう。

 相当、驚かせてしまったらしい。


「うん? ねえ、先輩……楠木さんにどんな酷いことしたんですか?」


 あれ? ちょっと詩音さん、そこ敢えて突っ込みいれます!?

 思わず目を向けると、詩音は悪戯っぽい笑みを返した。


「そうなのよ、詩音ちゃん! 狭間ってばあたしにあんなことして……もう! 責任取りなさいよね!」

「せ、責任!? 巡、あ、あんた……一体、何したの!? あたしたちがずっと、こっちで心配しながら待ってる間に、く、楠木さんに、ひ、酷いことって……」

「いや、ちょっと待て……お前ら、何か勘違いしてないか!?」


 恋は本気でムスっとしながら、涙目になっていた。


「あ、あの~、麗花さんが心配しているようなことじゃないと思うよ。一応、ボクもあっちの世界じゃずっと一緒にいたから」

「? 麗花がどんな誤解したのかわからないけど……」


 ということで、惑星を目の前でぶっ壊した件について、俺の口から軽く説明をすることになった。

 すると、


「「それは酷い」」」


 恋と詩音が口を揃えてそう言った。

 どうやら、あの件は俺が思っている以上に俺が悪いらしい。


「楠木、悪かった。だけど、どうしても助けたかったんだ。お前とこっちの世界でまた会えて、俺は本当に嬉しい」

「むぅ……そ、そんな風に言われたら……もう怒れないわよ……」


 言って楠木は軽く息をはいて……。


「ありがとう、狭間。助けてくれたことわたしも本当に感謝してる……お礼、いつかちゃんとするつもりだから」

「ボクも改めて何かお礼をさせてね。狭間くんにはどれだけ感謝しても、足りないくらいの恩が出来ちゃったもん……」


 楠木と長嶺――二人の少女が俺に笑顔を向けた。


「二人が無事でいてくれただけで、俺は十分だよ」


 だから俺も二人に正直な気持ちを伝える。


「狭間くん……」

「女の子にそれ、ちょっとズルいよ……でも、カッコいいじゃん」


 すると、二人は頬を赤くして、瞳を熱っぽく変えていた。


「なら……助けてもらったお礼に先輩にご奉仕デートとかどうでしょう?」

「は、はあっ!? 詩音、あんた何言ってんのよ! で、デートって、そ、それもご奉仕って……!?」


 うちの後輩が唐突にバカを言うのはいつものことだが……。


「ボクはお礼デート、全然OKだよ。でも、それじゃこっちのご褒美になっちゃうなぁ」

「え!? な、長嶺さん!? それってどういう!?」

「まあ……狭間がどうしてもって言うなら、わたしも構わないよ? 男の子とのデートって初めてだから、どうしたらいいのかわかんないけど……」

「なあ!? く、楠木さんまで!?」

「なら四人で先輩にご奉仕デートですね!」

「詩音、あんたもなの!?」


 一人、おろおろする恋にみんなが苦笑していた。


『でーと……か、ふむ。巡よ、落ち着いた頃におれにこの国を案内しろ』

『別に構わないが?』

『ふふっ、では我と貴様ででーとだな。……うむ、友と出掛けるのも悪くはない』


 いや、お前は多分、デートを勘違いしてる。

 心の中で俺はアルにそう突っ込むのだった。

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第一部完結しました。
『勇気を出してよ皆友くん!』
もしよろしければ、ご一読ください。
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