老婆の哀しみ
「まさかあいつが先に死ぬ何て思ってもみないからさ。」
心に吹く風
老婆は寝て過ごす時間が増えている。
今晩のご飯はキャベツの炒め物
年々食べる量が少なくなり残すことも多くなった。
最近は補聴器の世話になることもある
時は2017年
2年前の夏
「どうしてこんな散らかしてんの?」
「あっ」
ヨシさんの一人息子、浦田ノリオ
50歳無職。
部屋は酒の空き缶、雑誌、惣菜のパックなとで溢れかえっていた。
ヨシさんはノリオと2人で食べる昼食を買って帰って来た。
2人でいるといつも喧嘩になる
己の不遇さを忘れるため口にする酒の量は尋常ではなかった。
吐く息はいつだってアルコールの匂いがした。
「いいねあんたは働かないで文句言いながら酒だけ飲んで」
「…」
「あんたに交代したいよ私は」
「何も羨ましがることないじゃないか!」
「羨ましい何て言ってないよいいねって」
「うるせぇ!クソババアこの野郎ぶっ殺すぞ!」
「いつまでもしがみついでないでくれよ。自分でやんなさいよ」
「お父さんよく守ってくれてるよ、こっちはいつダメになるか分からないぞ」
「私が死んだらお前はダンボール暮らしだからな」
ノリオさんが20歳の時に親父は肝硬変で亡くなった。
以来30年2人は肩寄せ合って過ごしている