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駐車場には2台の大型バスと、ダンプカーが停まっており、今も生存者による、僕が作った'欲しいものリスト'に書いてある物をダンプカーに積み込む作業が続いていた。
「まあ、映画館の中にいた人だけなんだけど」
回収したウィンチェスターは傷1つ無く、相変わらずの独特な雰囲気を醸し出していた。
「で?ミニガンとやりあったんですって?」
サージェスが肩を掴みながら楽しげに話しかけてくる。
「あ~、うん。そうだよ、ほら」
指差したダンプカーでは、男3人係でミニガンを運んでいる姿が見られた。
「あれ、高いんですよね~。持ち主はお気の毒に………」
「やっぱり、そうなの?」
最初にサージェスからいろいろ聞いたことは信じがたい内容ばかりで、真実ならばゾッとするようなことばかりなのだ。
「信じてくださいよ、アキさん。ここまできて嘘は言いませんよ!」
「まあ、そうですよね……」
助けた恩を仇にして返すようなやつではないと思うので、ここは信じておく。
「で、レナさんは?」
「あ~……」
「やっぱりショックだったんですね……」
「ええ、今も死体の所で泣いてます……」
映画館の中にいた生存者の中には、レナさんの友達はいなかったらしく、特徴を聞いて一緒に探していたサージェスが2人を見つけて運んだ後、ずっと泣いているらしい。
「さすがに友達が死ぬのは僕も耐えられないな……」
「アキさんも苦手なことあったんすね……、あんなにプレイヤーを刈ってるのに……」
「人を機械みたいに言わないでくれる?」
MP7とウィンチェスターM70の整備をしながら話していると、コウイチさんが大声をあげながら近づいてきた。
「アキトさん!死体、運び終わりました!」
「あ、ありがとうございます!」
頼んでいた灰色と黒色の男達の死体の運びだしが終わったようだった。
「いえいえ、これくらいしかできないので!あ、あと、リセちゃんの包帯も変えておきました。さすがにあんなぐちゃぐちゃな包帯な巻き方はまずいですよ?」
包帯の巻き方を指摘されたが見に覚えがない。本に書いてあったやり方では間違いだったのか……と思っていたらギョッとした様子でサージェスが謝り始めた。
「す、すんません………」
「あ、サージェスさんだったんですね……」
それよりも気になる所が1ヶ所あった。
「詳しいんですか?そういうことに」
「ええ、自分は医学生ですから」
ここで思わぬ収穫があった。1番怖かった医療関係を専門にしている人が身近にいたのだ。
「なので、ケガとか病気になったら自分に言ってくださいね、出来る限りのことをしますから」
「お願いします!!」
全力で頭を下げながら頼む。頭を上げてください!と言われるが、この嬉しさにかなう言葉など、そうあるものじゃない。
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「アキさん、レナちゃんを含む全員が揃いましたぜ、出発しやすか?」
「うん、じゃあ地図のこの場所までお願い」
「了解っす!」
僕が乗ってきた車に積んでいた物も積み込み、バス2台とダンプカー1台で山の中に向けて出発する。運転手は、車の免許を持っていた人に頼んだ。
サージェスにナビゲーションを頼み、揺られること2時間。
おじいちゃんの家から更に300M程山奥に進んだ、少し平らな空き地に到着した。
現在時刻は午後7時半。肉眼で腕時計の針が見えるかどうかの境目くらいの明るさだ。
「サージェス、16歳以上の男性を5人率いて3M以上の大きさの木を8本用意して」
「了解っす!」
サージェスには、キャンプファイアーの準備をしてもらう。
「コウイチ、あなたには簡単な生存者のリストを作ってもらいたいんですが」
「ええ、わかりました、あと、まだ敬語が抜けてませんよ?」
「すいません、慣れなくて……」
「いえいえ、ゆっくりと変えていってくださいね、ランプをお借りしますね」
コウイチさ………コウイチには簡単な住民リストを。
「レナさん、子供達の面倒を見てもらってもいいですか?」
「レナでいいですよ、わかりました、やってみます」
「ありがとう、レナ」
落ち着きを取り戻したレナには、子供の面倒をみてもらう。そして、その他にも動けそうな人にテントの準備や、簡単な食事の準備をしてもらう。
これで、13歳を越えているように見える人の全てに仕事をわけ与えた。
そして残った自分は、細かな木材を集めることにした。
そして僅か15分後、テントの中心に大きなキャンプファイアーが完成した。サージェスは誇らしげに自慢してきたが、誉めると調子にのるのはわかっているのであえて誉めなかった。
予定よりも速い食事(おにぎりに簡単な焼き肉、ワカメの味噌汁)をしたあと、全員に名前と年齢、できることをこと細かく書いてもらった後、テントを振り分けた。
そして、バスの中で作業していたコウイチの所に向かい、仕事の成果を訪ねる
「どうでした?コウイチ」
「また敬語…」
「あ~……どうだった?コウイチ」
「10歳以下が8人、20歳以下がサージェスさんを除いて25人でした。男女比は3:2ですね」
「そうか、ありがとう」
「いえいえ」
「で、いつこのゲームのことを話すんですか?」
付いてきていたサージェスが、真剣な雰囲気で訪ねてくる。
「明日の朝……だね、今日はとにかく休んでもらう。じゃないと、こんなことを聞かされて耐えられる人がいるようには思えない」
「賢い判断だと思いますぜ、じゃあ、明日の朝に……」
「ああ、お休み」
サージェスから聞かされたこと、それは全員が知るべき真実なのだが、どうしても自分の口から言うことはできなかった。