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Death games  作者: タキン
序章 変わり果てた日常
7/17

6

自動ドアが開いて中に入ってあと、最初に感じたのは異臭だった。

鼻をつまんでも感じる血の匂いは凄まじく、吐き気がするくらいだった。

入り口近くのエレベーターは、5階に止まっているらしく、スイッチを押してから近くの壁に隠れるも、何かいるんじゃないかという不安から、ドアが開くまでにちょっとした緊張感があった。





「「1階です」」


機械の音声と共にドアが開きだす。それと同時に、銃を構えながら正面に立つ。


(何かいる!)


ドアが開く一瞬の間に、何かが手すりの上に立とうとしていたのが見えた。ドアが開ききる前にエレベーターの中に入ると、叫び声が聞こえてきた。


「撃たないでぇぇぇぇ!!」


器用に手すりの上で立ったまま両手を上げ、背中を向けているのは人間の男の人で、僕を機械の人間だと思ったらしく、小刻みに震えていた。


「あの……」


「………え?」


「1回降りたらどうですか?」


「あ……はい……」


怖くて泣いていたのか、目が真っ赤になっているその人は、恥ずかしそうに手すりから降りた後、ドアの開閉ボタンを押し、ゆっくりと話始めた。


「あの……あなたはいったい?」


「瀧 彰人といいます、ここには生存者の確認と、道具などの回収にきました。で、あなたは?」


「はい、"高木 浩一(タカギ コウイチ)"と言いまして、二十歳です」


若干震えた声を出しながらコウイチさん二十歳に見えないすっきりとした顔だったので少し驚いた。


「あ、じゃあ、年上なんですね、よろしくお願いします」


「いやいや、コウイチと気軽に呼んでください」


「じゃあコウイチと気軽に呼ばせていただきますね」


「ええ、お願いします。アキトさん」


そしてコウイチは、何かを思い出したようで、急に早口になり始めた。


「そうだ、アキトさん!外に車とかありましたか!?」


「ええ…ありましたけど……」


「そうですか!それなら、少し頼みたいことがありまして……」


「頼みたいこと?」


「はい、実は、5階の映画館の中に、まだ30人程生存者がいるのですが、この建物のどこかに銃をもった輩がいるので身動きが取れないのです」


「それを僕が外に誘導すればいいんですね?」


「はい、大変無茶な頼みですが、どうかよろしくお願いします…」


「わかりました、では、コウイチさんはこのまま外に出て、車を探してください。後で落ち合いましょう」


「わかりました、気を付けてください」


そう言い残すとコウイチさんはエレベーターから出て、駐車場の方へ慎重に歩いていった。


凄く丁寧な言葉使いだったが、何をしている人なんだろうか。後で落ち合った時に聞いておかなければ。




ーーーーーー

ーーーー

ーー




エレベーターで5階に上がり、近くにあったマップを見る。映画館は真逆の方向で、遮蔽物の無い直線の通路がただ延びていた。


今持ってきている銃は『MP7』と『ウィンチェスターM70』。

MP7の方がウィンチェスターよりも扱いやすい為、ウィンチェスターを肩から下げ、MP7を右手で持つ。


店沿いに通路を進み、時折後ろを確認する。

そして通路にあるエスカレーターから下を覗いた時、灰色の男が歩いているのが見えた。

MP7を単発モードに切り替える。


エスカレーターを逆走し、3M程の距離を飛び降りた後、振り向こうとした所に3発。

左手に持っていた銃を落とした為、余裕をもって頭に照準を合わせて2発。


「まず1人」


今の発砲に1人くらいは反応しているはずなので、中腰になり、付近を警戒する。

すると、おもちゃ売り場の棚の向こう側に、灰色の頭部だけが見えた。ウィンチェスターに持ち替えて、目視で照準を合わせる。


1発撃つと、頭部の左上に逸れた。


(まずい!外したっ!)


音をたてないように静かにおもちゃ売り場に入り、灰色の男の左側に回り込む。

予想通り、男は時計回りに距離を詰めようとしていたようで、簡単に後ろをとれた。

MP7を連続射撃モードに切り替えて、アイアンサイト覗きながら引き金を引く。

何発撃ったかはわからないが、弾を外すような距離ではなかったので、しっかりと頭に命中して、男は倒れた。




ーーーーーー

ーーーー

ーー




2人の死体をエレベーターに乗せ、1階で下ろし、インフォメーションのカウンターの裏に隠す。こうすることで、他の奴らに見つかる心配が無くなり、少しは警戒されずに行動できる。


そして僕は1階の日常品コーナーに行き、辺りを警戒しながら目覚まし時計を手に取ると、エレベーターまで戻った。

とりあえず1階のほとんどを見て回ったが、どこにも奴らはいなかったので、上の階のどこかにいることは間違いない。


エレベーターに乗り、全ての階のボタンを押した後、目覚まし時計を1分後にセットしてエレベーターの中に置き、僕は外に出ながら内側のボタンを押し、ドアを閉める。

そして自分はエスカレーターから2階に上がり、エレベーターの近くで身を隠す。


上がってきたエレベーターが扉を開けば、大音量で目覚まし時計が鳴り始める。

奴らの特徴を生かしたちょっとしたトラップだ。音に反応してエレベーターまで来れば、無防備な背中を向けることになるので、楽に殺すことができる。

待つ、誰も現れない、ドアが閉まる、上の階へ上がる。

これを2回繰り返し、4階に上がった所で1匹釣ることができた。

中腰の体勢でエレベーターの中に入った灰色の男は、目覚まし時計を撃ち壊すと、不思議そうに辺りを見渡していた。


「―――――ごめんよ」


耳元で囁いた後、ウィンチェスターで頭を吹き飛ばす。


「これで後1人」


怜奈さんから聞いた時はこいつを含めて灰色が4人、黒色が1人だった。

つまり、灰色は全滅。残りは黒色だけということだ。

MP7とウィンチェスターを装填し直しながら、非常階段を使って上の階に上がる。


「後はどうやってばれずに生存者を避難させようかな」


映画館の中にいる30人程の生存者達を一斉に避難させれば、間違いなく発見されるし、犠牲者も増えてしまう。


僕の前にはいろいろと難題が残ったままだったが、クリアできそうな気がしていた。

こいつが現れるまでは。






「…………コォー……………………」


荒い呼吸に、サージェスのような黒いヘルメット。仲間が殺されたことを知っているのか銃を力強く握りしめたそいつは、映画館の前に立って僕のことを待ち受けていた。


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