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第八話 やはり仕組んでいたことだったか



「まーた随分と書類溜まってますね」

「神隠し騒ぎでそれどころじゃなかったからな」


 パソコンをカタカタと打ち鳴らしながら、風戸先輩と二人で未処理となっている書類と格闘する俺。そして松永とティファニーは、処理済みの控え書類をチェックがてらファイリングする作業をしていた。

 まぁ、要するに生徒会の書類仕事の手伝いを頼まれているってワケだ。

 ちなみにルクトとナタリアは、別件でおつかいを引き受けている。

 といっても、商店街の雑貨屋さんでカエルモノばかりで、量的にも二人いれば十分事足りる感じだった。それを風戸先輩は、直接ルクトに頼んできたのだ。これはお前にピッタリな仕事だと言って。

 最初は訝しげだったアイツが、メモを見た瞬間、表情を変えていた。それを覗き込んだナタリアも同じく。

 あの態度からして、単なる雑貨の買い出しではないのだろう。わざわざルクトだけに頼んだのも、理由としては十分過ぎる。ボクも一緒に行くと言い出したナタリアに対し、風戸先輩は笑っていた。面白いじゃないかと言わんばかりにな。


「あの二人だけで大丈夫でしょうか?」

「どうだろ? 絶対何か起こるような気がするけどねぇ……」


 ティファニーの疑問に松永が苦笑する。それについては俺も同意見だ。

 異世界の魔王と神様のコンビがお外へおつかい。しかも風戸先輩直々の指示。どう考えても穏便に済むとは思えない。

 しかしながら、それに対して好奇心の如く触れることはしなかった。わざわざ危険な匂いがプンプンするモノに近づくこともないしな。

 だから俺は、大人しく書類の打ち込みに専念する。

 書類仕事自体は、前々から何度か手伝ったことがあった。正確には無理やり引きずり込まれ、手伝わされたのだが。

 まぁとにかく、作業自体は初めてではない。だから書類のデータ化ぐらい、今となってはお手の物だ。


「……秋宏くん、なんだかサマになってるね?」

「んー? 何がよ?」


 松永の問いかけに、俺はパソコンに目を向けたまま投げやり気味に応える。今は打ち込みに集中したいから、話しかけないで欲しいんだがなぁ。

 ――よし、ようやくひと区切りってか。


「先輩。文化部の分終わりました。チェックお願いします」

「分かった。次は運動部のヤツを頼む。少し多いぞ」

「はい」


 さーて運動部さんの申請書と要望書――うっわ、確かに多いな。どんだけ申請したいのがあるんだか。


「アキヒロさんって、もう生徒会の役員さんだったんですか?」

「まだ違うハズだけど……そうだよね?」

「あぁ。まだ図書委員のままだよ」

「そうだな。正式な引継ぎは行われていないからな」


 ティファニーと松永の問いに、俺と風戸先輩がキーボードを叩きながら応える。なんか女子二人から妙な視線を感じるが、とりあえず気にしないでおく。

 ――そう。実は俺、図書委員なのである。ルクトも同じくだ。

 この学校では、全生徒が強制的にどっかの委員会に入らされる。クラス委員長や副委員長、生徒会役員は例外だがな。

 楽そうだからという理由だけで図書委員を選んでみたワケだが、まぁ実際そのとおりではあった。

 当番の日や月一の集まりに顔を出し、そこで本の整理や貸し出し期限のチェックを行うだけの簡単なお仕事。割と皆が真面目に機嫌を守っていたため、図書委員がそれほど苦労するようなこともなかった。

 ルクト目当てに図書室に顔を出す女子たちが増えたのだが、まぁそれは些細な問題でしかない。

 ――そんな俺たちが風戸先輩に目を付けられ始めたキッカケは、去年のこと。

 確か図書委員会の委員長代理で、ルクトと一緒に各部活・委員会の月一定例会議に出席した時のことだったか。

 とにかくその日は、なかなか話が進まなくてじれったくなり、つい口を挟んでしまったのだ。それも二人で仲良くバッサリとダメ出しするみたいな感じで。

 いやぁ、人の睨みってのがあんなに怖いとは思わなかったなぁ。

 生意気なんだよ。一年ボウズがしゃしゃり出てくんなや。誰がテメェらの戯言なんか聞くかよ。

 そんな無言の圧力がひしひしと伝わってくる中、既に会長を務めていた風戸先輩だけが、面白いと言わんばかりの笑みを浮かべていた。まっすぐジッと俺たちを見つめながら。

 思えばあの時から、俺とルクトは風戸先輩に目を付けられたのだ。

 それを悟った当時の図書委員長も、俺とルクトに月一会議出席を任せる――もとい丸投げするという思い切った判断をしてくれやがったんだ。

 おかげで今年もなし崩し的に図書委員に所属することになったんだが、俺たちが生徒会に入ることが決定した以上、もうそれも無理だ。生徒会役員は他の委員会に入ることはできないからな。

 やはりルールはキチンと守らねばならんってね。


「沢倉も城ヶ崎も、図書委員長から随分と好かれてるようだな」

「……どういうことです?」


 特別これといって話をしてるワケでもなく、特に新しい図書委員長の先輩とは、最初の挨拶以外ほとんど喋ったことなんてないハズだが。


「こないだ図書委員長が直々に乗り込んできてな。お前たちの引き抜きを猛抗議してきたよ。なんとか引き下がってくれたが。アレはまた来るだろうな」

「そんなことがあったんスね」


 驚きはしたが、特にこれと言って興味はない。そんなことより、少しでも早く書類のデータ化を終わらせないとだからな。

 それにしてもアレだな。結果的に申請書や要望書の殆どに目を通すことになっているから、その内容が嫌でも目に飛び込んできちまうわ、やっだー。

 そして今回もある。頭が痛くなるような内容のそれがある。

 俺は手を止め、そのプリントを手に取りながら、深いため息をついた。


「……この要望書、本気で通ると思って出したんですかね?」


 ――体育館の女子トイレにドライヤー用のコンセントを取り付けてほしい。あとついでに大きな鏡と、小物が置ける台も付けてほしいです♪

 化粧直しする気マンマンじゃねぇか。こんなん通るワケねぇっつーの。


「出すだけならタダだからな。匿名制だからバレることもない」

「だからってなぁ……」


 体育館のトイレに化粧台など必要ない。大人しく運動しとけってんだ。いや、大人しく運動ってのも、なんかおかしいかもしれんが。

 そして男子からの要望もなぁ。

 ――部室掃除用にルンバを買ってください。

 そんなもん自分たちで買えや。むしろ寮の部屋に欲しいわ。期待なんざしちゃいないけど。

 あー、もういちいちツッコむのも面倒になってきた。とにかくこれ全部をデータ化しちまわないとだ。

 ――学食メニューにスイーツバイキングを取り入れてほしいです。

 ――ジュースの自販機だけじゃなく、アイスの自販機も取り入れてチョ。

 ――女子の体操服にブルマという項目を復活させたまえ!

 ――またマスコミがウロついてるのでなんとかしてください。


「ったく、どこまでフザけりゃ気が済む……んっ?」


 要望書をまるごとシュレッダーにかけたろかと思ったその瞬間、最後の最後で妙に気になる一文を見つけた。

 またマスコミがウロついてる――確かにそう書かれている。というかそれ以外に何も書かれていない。

 まぁ、別にマスコミそのものがいるということは不思議でもないんだが、こないだの件を考えると、自然と警戒心が強くなってきてしまう。

 とりあえず相談だな。


「先輩。ちょっとこれを見てください」

「どうした……あぁ、これか」


 俺が見せた一枚の要望書に、風戸先輩がため息をつく。


「先日の件について情報を得ようと、マスコミが再び動き出したらしい。他にも似たような問い合わせが何件か届いている」

「マジッスか。そりゃ厄介ですね」

「あぁ。学校側としても、これ以上の騒ぎは避けたいとのことでな。我が生徒会も対策を考えるよう、校長から直々に言われたんだ」

「……それ、あわよくば生徒会に丸投げできればなーって考えもあるんじゃ?」

「むしろそっちが本命だろうな」


 おいおい、それで良いのか先生サマ。生徒会とはいえ生徒――いわば自分たちが育てている存在だぞ?

 いや、あるいはそれに対して、都合の良い解釈をしている可能性もあるか。

 生徒が先生の言うことを聞くのは当然のことだ。高校は中学と違って義務教育じゃないんだから、より責任を背負うことも覚える必要があるとかな。

 この学校――本当に大丈夫なのか?

 もし当たってたらの話だから考え過ぎということもあり得る。流石にそれはないと信じたいところだ。

 と、考えれば考えるほどネガティブな方向ばかりに行ってしまうのは、やはりお約束ってヤツなのだろうかねぇ。

 この世に絶対などない。むしろあってほしくないモノほどあってしまうモノなのだよ相棒クン。

 ――止めよう。もうこれ考えるの。どうせロクなことになりゃしないし。

 俺がそう思いながらゲンナリした様子を見せたところで、風戸先輩が眼鏡をクイッと上げた。


「心配することはない。既に対策は施している。そのためにおつかいを頼んだんだからな」

「……そういうことだったんスね」


 ルクトの様子がおかしかった理由がようやく分かった。やはり風戸先輩が仕組んでいたことだったらしい。

 おつかいはあくまでついでの用事。本命はマスコミへの対策。ルクトならそれをこなせると判断したのだろう。

 限りなく正しい考えであると俺も思います。

 しかも今回はナタリアという神様的存在も一緒だ。果たしてどうなるのか。少なくとも今頃、何かが起こっているハズだ。

 ――その時、風戸先輩の机に備え付けてある電話が鳴った。


「はい、生徒会です……あぁどうも、例の件は……えっ?」


 恐らく校長先生か生徒会顧問と話してるんだろうけど、様子がおかしい。悪い何かが起こってるんだろうか。


「……そうですか、危機は去りそうだと……はい、えぇそうですね、了解です」


 会話を終えた風戸先輩が受話器を置く。そして――


「フッ……フフフフフッ……ハハッ!」


 こらえきれないと言わんばかりの様子で笑い出した。何故か眼鏡も光っており、不気味に思えてならない。


「あの、何があったんですか?」


 とりあえず聞き出さないことには何も始まるまい。すると風戸先輩は、よくぞ聞いてくれたと言わんばかりに顔を上げる。


「なんだか面白いことになってるみたいだぞ。マスコミがマスコミに追いかけられているそうだ」

「へっ? 何ですかそれ?」


 風戸先輩の言葉に、松永が素っ頓狂な声を出す。俺も同じ気持ちではあった。

 ――マスコミって誰かを追いかける仕事じゃなかったっけ?

 本当のところはどうなんでしょうか。是非とも一言お願いします。アナタの口から真実を話してください。

 そう叫びながら、執拗にターゲットを地の果てまで追いかける。それがマスコミのお仕事だったと俺は記憶している。

 多分どこかしら違うような気もするが、やってることは大体当たってると思うので気にしないでおく。

 まぁ、誰かを追いかけるという点だけを見れば、別にこれと言っておかしいことは何もない。問題はマスコミがマスコミをターゲットにしているという点だ。

 流石にこの事例は初めて聞く。だから俺もワケが分からない。


「詳しいことは分かってるのでしょうか?」


 書類整理を手伝っているティファニーが手を止めて尋ねる。


「同業者の方を追いかけるというのは、流石に普通とは思えません。それ相応の大きな理由があると思うのですが……」

「それについては同感だ。しかし思い当たる節が全くないワケでもない」


 風戸先輩が引き出しからある資料を取り出した。


「これを見てくれ。最近何かと話題になっている有名ジャーナリストの写真だ」

「うっわ、何このイケメン?」


 資料に添付されている写真を見た松永が、思わず驚いた声を出す。ティファニーも同じくであった。

 勝良保典。資料に添付されているジャーナリストの男の名だ。

 俺もネット記事でこの男について書かれているのを読んだことがある。イケメンさと巧みな話術を駆使して相手に近づき、色々な情報を聞き出して記事にする。そうやっていくつかの独占スクープ記事を叩き出したやり手なのだとか。

 ちなみに女性に対してもやり手だというウワサだ。

 女優や芸能人の女性マネージャー、はたまた国会の女性議員も、近づいては口説き落としているとか。そしてしっかりと情報を仕入れており、週刊誌の盛り上げにもしっかりと貢献しているとかしていないとか。

 ――あくまでウワサだからな。どこまで信用できるかは俺にも分からない。

 ただこの男の顔は、良くも悪くもウソはない気がする。

 ちなみにルクトもこの男について言っていた。色々な意味で隠しても隠し切れないようなヤツだと。

 しかし、風戸先輩は何故、この男の資料を取り出したんだろうか?

 見るからにどうやって調べたんだと言いたくなるほどの緻密な資料を持っているのかについては、この際置いておくとして。


「この勝良という男が、最近ウチの学校周辺をうろついていたそうだ。大人しそうな生徒に話しかけたりもしていたらしい」


 なんとまぁ――イケメンとはいえ、見知らぬ男が学生に話しかけるってのは、今のご時世かなりのリスクが伴うと思うんだがなぁ。


「よく怪しまれずに済んでたな。流石は敏腕ジャーナリストってか?」

「そのとおりだと思うが、なんでも追いかけれているマスコミというのが、この勝良みたいだぞ」

「え、それってどういうこと……まさか!?」


 俺の頭の中を、ある可能性が過ぎった。そして風戸先輩も、フッと笑った。


「あぁ、そのまさかだろう。そろそろ連絡が来てもよさそうだが……」


 連絡って――あ、俺の携帯鳴ってる。


「ルクトからのメールだ……動画?」


 面白いモンが撮れたから送る。書かれていたのはその一文だけだった。

 アイツが動画送ってくるのは今に始まったことじゃないし、確かにニヤっとしちまうモノが殆どだ。

 はてさて、今回は一体どんなネタなのかしら、っと――


『あの学校から出てきた生徒ですよね? 少し話を聞かせてくれませんか?』


 動画を再生してみると、イケメンジャーナリストこと勝良が、ナタリアに話しかけている姿が出た。恐らくルクトが撮影していたんだろう。

 相手が一切気づいてないということは、恐らく気配を消してるんだろうな。そして唯一気づいてるのがナタリアだ。チラッとルクトを見て笑ってたから、多分間違いない。

 とりあえず、このまま動画を見ていこう。


『あまり時間は取らせないからさ』

『まぁ、少しだけなら』


 渋々受けてる感じはするが、多分ワザとだな。ナタリアのヤツ、なんだか面白そうと言わんばかりに薄っすら笑っているし。


『数日前、あの学校で神隠し事件が起こりましたよね? 消えた生徒たちは、どこにいるんでしょうか?』

『さぁ、それはボクにも分からないよ。最近留学して来たばかりだし』

『あ、やっぱり留学生なんだ?』


 勝良が食いついた。心なしかナタリアとの距離を縮めようとしている。


『顔立ちからして海外の子だということは分かっていたんだよ。もし良かったら、留学の意気込みとかを聞かせてくれるかい? なんなら、二人で静かな喫茶店とかでゆっくり話してみる? そのほうがキミも落ち着くんじゃないかな?』


 コラコラ。神隠し事件について聞いていたハズなのに、ナタリア個人についての取材になっちまってるじゃないか。

 どうやら女性に対してやり手だというウワサは、あながちウソではなさそうだ。今までもこんな感じだったんだろうな。果たして何人落とされたんだか。


「どこにでもいるんですね、こういった男は……吐き気がします」

「ティーちゃんも、言い寄られた経験とかあるんだ?」

「王女という立場でしたからね。貴族や王族と触れ合う機会も多かったですし。少しでも気が進まない素振りを見せると、お母さまから即座に叱られました。それが王女の大事な勤めなのですよとね」


 まさにテンプレだな。ティファニーも大変な思いをしてきたようだ。

 むしろこっちの世界に飛ばされて正解な気さえしてくる。本人も王女という立場に嫌気がさしてたっぽいし、尚更だろう。

 ――さて、動画の続きっと。


『うん、是非ともそうしたほうが……っと、風が強いな』


 確かに強い風さんが吹いて――


「……ブフゥッ!!」


 思わず俺は噴き出してしまった。見事にふんわり飛ばされたソレを見て。


「どしたの?」

「いや、ちょ、これ……」


 怪訝そうに尋ねてきた松永に、俺は動画を巻き戻しながら見せる。当然ながらニヤついた顔は抑えきれない。

 そして松永やティファニーに須磨夫を見せた状態で、再び動画を再生。


『――っと、風が強いな』

「プッ!」

「くふぅっ!」


 女子二人も思いっきり噴き出した。

 それはそうだろう。強い風で髪の毛の上半分が飛ばされたのだ。しかもイケメン爽やかスマイルの真っ最中に。

 ――要するに勝良は紛れもないヅラだったのだ。決してシャレではない。

 画面が小刻みに震えてるってことは、ルクトも笑ってるな。そしてナタリアもニヤニヤしながら、自らの頭のてっぺんをポンポンと叩いて合図を送る。


『あの、飛んだよ?』

「頭がどうかし……うやぁっ!?」


 お、イケメンの表情が奇妙な叫び声で見事に崩れたな。さっきまでは確かにあった自分の髪の毛が、見事な地肌ツルツル状態となっていることに、果てしない驚きが襲い掛かっているようだ。

 動画の画面は、飛ばされたヅラに向けられる。未だ風に乗って宙を舞っているようであった。

 そしてそれに気づいた勝良が、必死に追いかけ出す。


『待ってくださいよー、ヅラさーんっ!』

『ヅラじゃない! 勝良だ!』


 ルクトの茶化すような掛け声に、勝良が鬼のような表情で怒鳴り返した。

 なんかどっかで聞いたようなセリフだな。皮肉にも同じ苗字――こりゃネタになるのも時間の問題だぞ。

 勝良が必死にヅラを追いかける後ろ姿を捉え、動画は終わった。

 うん。これは確かに面白いモンだな。


「ねぇねぇ秋宏くん、今のもう一回見せてもらえない?」

「おう。じゃあこの動画データ、松永のスマホに送ってやるよ」

「わーい♪」


 松永のアドレスにメール転送してデータを送信。そして受け取った松永は、自身のスマホでティファニーと一緒に動画を見る。

 二人の笑い声が飛び交う中、俺は風戸先輩にその動画を見せた。


「なるほどな。こういうことだったか」

「あくまで俺の勘ですけど、このヅラが飛んだのは、恐らくどっちかが魔法かなんかで仕掛けた可能性がありますね。あまりにもタイミングが良すぎますし」

「そうか。まぁ俺としてはどちらでもいいさ。あとそれ、俺にも転送してくれ」

「……りょーかいです」


 風戸先輩のスマホにもメール転送で動画を渡しながら思う。

 ヅライケメンの勝良サンは、果たしてこれからどんな人生を歩むのか。少なくともなかったことにはできないだろうなぁ、と。

 十数分後、ルクトとナタリアが生徒会室に戻ってきた。

 そのしてやったり的な二人の表情は、とても眩しいと俺は思った。

 話題はもうヅライケメン勝良のことで持ち切りだ。おかげで今日はもう、書類仕事をする余裕はなさそうである。

 そのことをこっそり謝ると、風戸先輩は気にしなくていいと笑ってくれた。

 ――そして夜、俺はルクトに魔法を使ったのかと尋ねてみると。


「おっ、流石は俺の相棒。よく分かったな♪」


 やはり俺の予想は正しかったことが、判明されたのだった。



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