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特殊人間処理課

作者:BNC
ある会社が遺伝子組み換えを施した容姿や性格の違うクローンを製造し、強制労働をさせていた。ある日、クローンらが反乱を起こして、全員脱走してしまった。しばらくしてこの事実が公になり、社会問題になった。

脱走したクローンらは行き場を失い、各地で犯罪行為を繰り返していた。責任者は自害してしまい、その会社だけではもう収拾がつかなくなっていた。そこでクローン対策として公安に新しく“特殊人間処理課”が設立された。三人一組で行動し、クローンに埋め込まれたチップを元に捜し出して処理する。私はかれこれこの課に配属されて3年になる。

「可愛そうですよね、強制労働させられていただなんて」
私はふと思った事を口にした。
「クローンは働きも出来ないし、帰る場所もない。強制労働させられる“奴隷”だったほうが幸せだったかもしれないな…」
「あっ班長、見つけました。北北西1kmにクローンが二体固まっています」
レーダー見ていた新人がクローンを見つけた。
「行こうか」
班長はそう言うと車を走らせた。

「チップ確認。二人ともクローンです」
近くでクローンのチップを改めて確認すると班長は銃を取り出した。銃の所持及び発砲が許されているのは班長だけ。班員にはピストル型スタンガンのみが支給され、相手の動きを止めることしか出来ない。

バンッ

班長が一人を撃った後だった。

バンッ

もう一発銃声が響いた。班長が発砲したのかと思っていたら、私の隣にいた新人が倒れた。腹部からものすごい勢いで血が出ている。この仕事はとても危険なのにも関わらず、彼は勇敢にもこの部署を志願した。彼の熱心な性格を知っていた私はとっさにクローンを責めた。
「どうして!どうして彼を撃ったの!」
「お前らは俺の仲間を撃った。俺はあんたらの仲間を撃った。何が違うってんだ」

バンッ

班長は残りのクローンも撃ち殺した。

新人は重態だった。いつ意識が戻るか分からないとも医者は言っていた。
「すみません、私がもっと早くスタンガンでもう一人の動きを止めていれば…」
「いや俺の責任だ。そんな指示は出してないし、少し油断していた…」
私は守れなかった責任を感じていたが、きっと班長はそれ以上に責任を感じているはずだ…。日本で銃をしかもクローンが持っていたことなんて今までなかった。完全に想定外だった。
「とにかく今日は休め、家まで送ってやるよ」

班長は車で私を家まで送ってくれることになった。
「あの私たちって…」
私は聞くのをためらった。
「違うよ」
班長は察したのか、私が聞こうとしていたことに先に答えた。
「でも、彼らにだって感情があるし撃たれれば血も出る…」
「彼らは犯罪者だ。もし野放しにすれば、誰かを殺すかもしれない。だから俺らがあいつらを殺すのとあいつらが俺らを殺すのは絶対訳が違う」
班長はそう言ったが、私には納得できなかった。犯罪者だったら撃ってもいいのかと聞こうかとも思ったが、結局それは聞かなかった。それに、班長も自分にそう言い聞かせているようにも見えたから。

結局、新人は助からなかった。それから班長は自分の班を増員するのを拒むようになり、ずっと二人で仕事をすることになった。

―2年後―

すべてのクローンの処理が終わったと同時に特殊人間処理課は廃止された。それからは普通の業務に戻っていたがある日、上から呼び出された。そこで私はあまりにも残酷な命令をされる。
「元班長は捜し出して、処刑せよ」
「は…班長が何をしたというのでありましょうか」
「彼はクローン人間だ」
公安は対クローン用のクローンを作っていた。追及すると、間違って人間を殺したときにクローンなら始末が簡単に済むと答えた。クローンを探すという都合上チップは外したが、あの会社の二の舞にならないように、クローンの近くに常に人間を置いておく必要があったとも答えた。


******************


「やっぱりここにいたんですね」
私は班長との思い出の丘に来ていた。初めてクローンの処理に立ち会った時に、ひどく落ち込んでいた私をここに連れてきて励ましてくれた場所だ。班長は自分がクローンだということは知らなかった。植え付けられた記憶を本物だと思っていたらしい。自分がクローンだと知らされ、殺されたくなくて逃げてきたと言っていた。
「きっと天国のクローンたちに恨まれているな。いや、俺は地獄行きか?そもそもクローンに天国も地獄もないか…」
班長は寂しげな顔をしていた。
「いや、きっとありますよ」
「なんでそう思うんだ」
「班長、前に言ってましたよね?人間がクローンを殺すのとクローンが人間が殺すのは違うって。でも、お互い息をして瞬きをしている。ミスをすれば責任を感じるし、人が死ねば悲しむ。私たち、何が違うっていうんですか。きっと行きつく先も同じですよ」
「だといいな…まさか自分が“奴隷”だったとはな…」
私と班長はそれからしばらく星を眺めていたが、班長が私に聞いてきた。
「俺を殺しに来たんだろ」
そう、私は上にそう命令された。
「でも…私には出来ません」
「そうだよな、ごめんな」
なんで班長が謝るのかと思った。勝手な都合で作られて殺される、一番つらいのは班長なのに。クローンを殺してきたのに、自分だけ生きながらえることは許されないし、逃げられたとしても居場所がない。班長はそう言って死を覚悟しているようだった。

気が付くと朝になっていた。隣には冷たくなった班長がいた。

「元班長処刑任務、完了しました」
私は涙を一粒も流すことなく上に報告した。何故なら、もう涙は枯れてしまっていたからだ。





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