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神界都市アレンテス(6)

 俺達は獣人幼女のルゥを冒険者風の男達から救い、試練突破の為、隠れた秘宝を目指し先を急いでいる。


 現在俺のポイントは8.5、パーナが2.5、ルゥが0である。


 残り時間は15分を切っていて、正直全員が突破するのは厳しい状況だ。




「まー様、こっちです」


「よし、急ごう」


「………………。」



 俺はルゥを抱き抱えて、入り組んだダンジョンの通路を進む。


 パーナは未だに不貞腐れている。


「悪かったって。いい加減、機嫌なおしてくれよ。それに本当に仲良くなった奴は叩いたって許してくれるぞ? 俺達はもう仲間じゃないか」


「仲間……そ、そうね! 今回は特別に許してあげるわ!」


 チョロいな


「ありがとう。ならまたヒールをかけてくれ」


「わかったわ。ヒール!」


 体力が10を越えたあたりから身体のダルさは無くなっていた。おそらく体力が4分の1ないし5分の1を切ると身体機能に影響が出るのだろう。デッドゾーンとでもいうか。


「ルゥはどんなスキルを持っているんだ?」


 そう尋ねるとルゥはウインドを出し、ステータス画面を表示して俺に見せてくれる。


「どれどれ?」


「いゃ! です!」


 パーナも見ようと覗きこんでくるが、ルゥに拒否られガーン! という擬音が見えるかのような表情を浮かべ項垂れる。哀れ、パー子。自業自得だ。


 名前 ルゥ レベル1 ランクE

 

 体力8


 攻撃1

 防御1

 敏捷4

 魔力10


 魔法

 ソナー


 スキル

 物質生成


 魔力がやけに高いな、だが体力攻撃防御が低すぎる。戦闘はさせられないな。


 魔法のソナーに触れてみるが反応しない。他人に操作は出来ないのか。


「ルゥ。ここに触れてみてくれ」


 ソナー 消費魔力5

 一定範囲を探知する。範囲はレベルに比例する。



 探知魔法か、今はまだ大した範囲は探れないだろうがレベルが上がれば重宝しそうだな。


「次はこっちを頼む」



 物質生成

 体力と魔力を消費し、自分の知り得る物質を生成できる。生成できる物は消費量に比例する。



 これは……所謂チートスキルと言うものではなかろうか?だが体力を使うとなると創り過ぎは禁物か……


「ありがとう。ルゥは凄いな!」


「えへへ」


 感心しながらルゥの頭を撫でてやる。ルゥは嬉しそうに眼を瞑り、耳と尻尾をピコピコさせている。なにこれ、可愛すぎる。


 その様子をパーナは羨ましそうに眺めていた。


 そういえば結局パーナのステータスを見せてもらってないな……まぁ今度でいいか。


 部屋の入り口が見えてきた。



 カンッ! キンッ!


『くそっ!大丈夫かっ!?』



 部屋の中から金属同士がぶつかる音と切迫した声が聞こえてくる。


「この先に宝物の匂いがするです」


「ルゥ。すまないが少し降りて待っててくれ、先を見てくる」


 ルゥを降ろし、部屋の中を覗き込むと2人の男と体長3メートルはあろうかというカマキリみたいなモンスターが戦っていた。


 2人の男達は同じような甲冑を身につけ、剣を持ち戦っている。騎士か何かか?


 俺達や彼らを見る限り、どうやら死んだ時に身につけていた物だけは一緒にこっちに来ているらしい。


 戦況は劣勢だ。しかしあのモンスターは俺の手にはおえそうもない。



「中で騎士っぽい奴らがでかいモンスターと戦っている。長くは持ちそうにない」


「どうするのよ! マサヤの変な技でどうにかならないの?」


「無理だ。俺の武術は対人を想定しているから、あんなでかい奴には効果が薄い。」


 ルゥも不安そうに俺の顔を見上げている。


『ぐあぁぁ!』


『ミドランド!』


 くそっ! 中はかなりヤバそうだ。加勢するにも引き返すにも早く決めなければ時間がない!



「行きましょう。どのみちここを通らなきゃ試練突破は無理だわ。なら、やらないよりやった方がいいでしょ?」


「パー子……お前」


「パーナ!!」


 そうだな。やれるだけやろうと決めたんだ。


「よし、行くか!」


 俺達は進む事に決めた。


「先ずは俺が行くから2人は後ろで待機しててくれ!パーナはいつでも魔法が撃てるように準備!」


「わかったわ!」


「はいっ……です!」

 

 戦場を見ると血溜まりに男が1人倒れていた。左腕が無い。もう1人の男はモンスターの攻撃を必死に受けている。


「おい! 加勢に来たぞ!」


 俺は声を掛けながらモンスターの脚に棒をおもいっきり打ち付ける。


「!!……助かる!!」


 モンスターがこちらを向く、よく見ると鎌の部分が剣の様に真っ直ぐになっている。


 その剣のような前脚を袈裟がけに振るってくる。


 俺は咄嗟に棒を頭上にかざして防ごうとする。


「駄目だ! 退がれ!」


 間一髪、棒を離しバックステップで退がる。


 棒は見事に真っ二つになっていた。


「わるい! 助かった! こいつの特徴はわかるか!?」


「こいつは剣蟷螂(ブレードマンティス)! 火と腹の下が弱点なんだが、魔法は使えるか!?」


「使える奴はいるが……威力が……待て! あてがある! 3分持たせてくれ!」


「3分か……! 頼むぞ!」



 俺は急いでパーナ達のところに戻る。


「どうしたの!?」


 ハラハラとこちらを見ていたパーナ達に指示を出す。


「ルゥ! スキルでなるべく大きい容れ物を創れるか!? バケツの様な物がいい! 」


「!!……やってみるです!」


「パーナはさっき集めていた油草を全部出せ!」


「わ、わかったわ!」


 ルゥが両手を前に出し、眼を瞑る。


 そこに光が集まり次第に形取っていく。


 ルゥが苦悶の表情を浮かべている。恐らく体力のほとんどを注ぎ込んでいるのだろう。 頑張ってくれ!


 やがて光がおさまり、そこに深さ30センチくらいのバケツが現れる。


 俺はルゥがフラつき倒れそうになるのを抱きとめる。


「ルゥ! 大丈夫か!?」


「ルゥは……やくに……たてましたか…です?」


「ああ! ルゥのおかげでなんとかなりそうだ! 後は任せておけ!」


 そう伝えるとルゥは笑い意識を失う。


「次は!?」


「その草をバケツの中で絞って油を溜める!」


 ルゥを寝かせ、俺とパーナは油を溜めていく。




「まだか!?……もう……もたな……ぐあっ!」


 剣が弾き飛ばされ、男は真っ二つになり消える。


 クソッ! 間に合わなかった! すまない!


 剣蟷螂がこちらに向かってくる。




「もういいんじゃない!?」


「よし!絞った草もバケツに入れろ!」



「キシャァーー!!」



「これでも浴びてろ!!」


 バケツの中身を剣蟷螂にぶち撒ける。


 よし!後は火をつければ!



 油の匂いを嫌ったのか、ブレードマンティスは怒り狂い闇雲に前脚を振り回す。


「パーナ! 俺が引き付ける! 出来るだけ近づいてファイアボールを当ててくれ!」


「わかったわ! 外さない…!」


 集中しろ。攻撃する必要は無い。避けるだけでいいんだ。パーナが必ずやってくれる。……やってくれるよな?


 駄目だ! 集中しろ!


 耳元で剣風が唸り、死の気配が背中を這い上がってくる。


 俺は剣蟷螂の一挙一動を見逃さず、先を読み、ギリギリで回避し続ける。


 どのくらいの時間が経っただろうか?


 焦れた剣蟷螂が大きく振りかぶった反動で脚を滑らせる。


 今だパーナ!!


「ファイヤーボール!!」


「ギシャァァーー!!」


 火の玉が剣蟷螂にあたり、一気に身体中に燃え広がる。


 剣蟷螂は炎に巻かれ、のたうち回る。



「これが……私の……本当の力……?」


「馬鹿なこと言ってないで離れろ! 燃え移るぞ!」



 やがて剣蟷螂は動かなくなり、炎と共に朽ち果てた。


「終わったか……」


「やったわ……! やったわマサヤ!」


 大はしゃぎをしながら抱きついてくるパーナ。


 だが俺はちっとも喜ぶ気になれない。


いつの間にかミドランドと呼ばれていた男も消えていた。


 また目の前で誰かを見殺しにした……。


 俺は弱い……。このままじゃダメだ。



 強くなりたい……! みんな守れるくらいに……!









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