第一章 神界都市アレンテス(1)
「ここは何処だ……?」
薄暗い中で俺は目が覚める。周りからはざわざわと大勢の人の気配がする。
「たしか俺は……うっ……!」
先程の機内での凄惨たる光景が頭にフラッシュバックする。
「そうだっ・・・! 里美! 花苗!」
返事も無く、辺りを見回すが暗くてよく見えない。これは夢か? いや、でもあの生々しい感覚は夢ではあり得ない。確かに俺達は死んだはずだ……ならここは? 天国か何かか?
くそ……。何が守るだ……。俺は何もできなかったじゃないか・・・。
突如青白い光と共にモニターらしき映像が上の方に映し出され
「皆の者! 我が神界にようこそ! 君達は実に運がいい!」
誰だ……? 神界……?なんだ? 何が始まった? モニターらしき物には何も映ってない。
薄明かりで周りの様子が見える。そこには日本人とは思えない顔立ちの男や、金髪の女、耳や尻尾を生やしたものなどが一様に困惑の表情を浮かべていた。人数は30人くらいだろうか、ここはどうやらドームの中みたいな半円系の広間らしい。
「知っての通り、君達は一度死んでいる。だがその魂が消滅する前に我が拾い、ここに呼び寄せた。君達には是非やってもらいたいことがある。」
周囲のざわめきが大きくなる。やはり俺は死んだのか。だが里美達は? ここには俺しか来ていないのか? やってもらいたいこととは何だ? 疑問ばかりが募る。
「君達にはこの世界に数ある試練を突破し、このリングを集めてほしい。リングを100個集めた者は我が最終試練に挑む権利を与えよう。そして見事、我が最終試練を突破し得たなら、その者の願いを何でも一つ、叶えてやろう。期間は2年だ。その仮初めの肉体と君達の魂は2年で完全に消滅する。無論、死んだりしたらその場で消滅する」
モニターらしき物に金色のリングが映し出される。
何かゲームみたいな展開だな……。これはひょっとするとアニメや小説なんかでよくある転生というやつか? 期間の2年が長いのか短いのか解らない、だが試練を突破できれば里美や花苗を救えるかもしれない。いつまでも落ち込んでても仕方がない。こうしてやり直せるかもしれないチャンスを得たんだ。しっかりしろ。
俺は決意を新たに次の情報を待つ。
すると一人の女がモニターに向かって声を上げる。
「ねぇ! あなた神様!? 願いを何でも叶えてくれるって本当!?」
「次に左の胸に手を当て、『ウインド』と唱えてみたまえ」
「なんで無視するの!? 答えてよ!」
ちょっとあの女黙っててくれないか? ボブカットの金髪で顔を見る限り俺と同い年くらいだろう。涙目で未だに質問を続けている。尚、答えは無い。
俺は言われたとおり、胸に手を当て『ウインド』と唱えてみる。
すると俺の前に小型のモニターらしき物が出る。なんだこれ、すごい。
周りの者も次々に『ウインド』と唱えている。先程の女はうつむいて肩を振るわせている。
「その画面には君達の情報が記載されている。レベルやステータス、スキルや所持金等だ。10分やろう。色々確認するがいい。尚、一度出したウインドは次から頭の中で念じるだけで開いたり閉じたりができる。」
なるほど、いよいよゲームだな。俺は自分のステータスを確認する。
名前:田所正弥
レベル1 ランクE
体力10
攻撃5
防御5
敏捷5
魔力5
魔法 なし
スキル 根性 早熟
所持金0G
所持リング0
スキルの項目に触れるとスキルの内容が表示される。
根性:即死に値する攻撃を受けても耐える
早熟:レベルが上がりやすい
これが低いのかどうかは解らないがレベルを上げて強くなって試練を突破すればいいんだな。なんかモンスターとかもいそうだな……。
スキルは増えるのか? これだけじゃ正直やっていけなさそうだが……。だが期間が短い中でレベルが上がりやすいのは有利だろう。アニメや小説なんかではすごい能力が与えられてたりするもんだがそういうのは無しか……。
「さて、時間だ。君達にはこれから模擬試練に挑んでもらう。内容はこちらだ。ウインドを見たまえ」
俺のウインドに新たな項目が加わり、それを指で触れる。
神の模擬試練
ダンジョン内でより多くのポイントを獲得せよ。制限時間は1時間。
ポイント一覧
鉱石採取 1P
モンスター討伐 1P
プレイヤー討伐 2P
ドロップアイテム3P
隠された秘宝 10P
成功条件
時間内に10P以上の成果を上げる
失敗条件
時間内に10P以上の成果を上げられなかった場合、または死亡。
成功報酬
リング1 1000G
失敗時の罰則
無し
やはりモンスターがいるのか、それにプレイヤー同士戦えというのか?殺し合えと? 俺にできるのか……? 隠された秘宝というのを見つければ一発クリア、だが簡単には見つからないだろう。
「今回の試練は模擬である為、ダンジョン内での死亡も失敗扱いでこの場に転送という形にしておいた。普通の試練では死亡は即消滅なので気をつけるように。さらに今回に限り、突破者には一つだけこの我に質問を許そう。答えられる範囲であれば答えよう。以上だ。それではいってくるがよい。最後にこれは自動再生なので、今我に何か言っても意味が無いぞ」
「そういうのは先に言ってよね!」
今回は死んでも平気なのか……。だが10P貯めれば里美達のことを聞けるかもしれない。なんとしてでも突破しなければ。あの子は駄目そうだな……。
そして俺達は光に包まれる。