3話 マスターベアー討伐
暴走ベアーに対峙すると、ロングソードをゆっくりと抜いた。
それを見ていたリノンが、自暴自棄になって喚き出す。
「アホ!おたんこなす!間抜け!!」
「おぃおぃ。それは認めるが、静かにしろ。集中できん。」
「集中してどうかなる問題じゃないのよ!!見て分かるでしょ!!」
「倒せばいいんだろ?倒せば。」
「倒せるはずないでしょ!!あのどす黒いオーラが見えないの?
ああっ!間抜け!!アルムの剣を抜きなさい!!」
言われるままに、宝剣を抜いて対峙した。
すると、ぼんやりと何か影が蠢いてるのが見える。あれがオーラなのか?
「ほら!大きな黒いオーラが見えるでしょ!妖精を30匹以上は食べてるわ!」
「夜で、保護色で、良く見えん!!」
「もうロードベアーの領域なのよ!あ~ん>< もう絶望><」
「倒せばいいんだろ?倒せば。」
「アホ!アホ!きゅうり!なすび!!
王国騎士団50騎居ないと討伐できないレベルなのよ!」
ええっ?まじか?王国騎士団の奴と3年前に剣闘大会で戦ったが、
めちゃくちゃ強かったぞ?そいつら50騎だと??
「アホはお前だ!!そんな事は早く言え!!」
「何度も言ったじゃないのよ!!」
ベアーはもう目の前に居る。そんなに強そうには見えないが、
あれは弱く見せて油断させる策略かっ!!
「若きナイトよ。儂はその妖精を望む。邪魔立てすると死ぬ事になるぞ。」
「まじか?普通に話してるぞ?すげ~~~!!」
「何驚いてるのよっ!!妖精を20匹食べると、
人語は話せるようになるのよっ!あ~ん>< 早くどうにかしてよ><」
「ベアーの親父さん、こんな羽の無い幼性食べても腹壊すぞ?」
「羽は貴方が切ったのでしょ!もう!!そんな事より早く逃げないと!」
「お前等の道化に付き合うつもりはない。早く妖精を寄越せ!」
「おっさん、悪いな。俺は、このアホを守ると決めたんだ。掛かって来な!!!」
「ふっ。愚か者めがぁぁぁ!!!」
ベアーは立ち上がった。うひょ~~!!3mはあるのだろうな。
二足歩行で寄って来る!素早い!!一気に間合いを詰められた。
「きゃぁぁぁぁ!!!」
「んじゃ、やっつけるか。」
「は、早くやっつけなさいよっ!出来るものならねっ!!
本当に出来るものなら、首を切らないとダメよ!!」
「直ぐに妖精と一緒にさせてやろう。安心して死ねぇぇ!!」
巨体から繰り出される大きな右腕が俺に襲い掛かる。
当たると、間違え無く即死だ。
轟音と共に、俺の頭上に大木の様な手が迫る。
だが・・・動きが見える。こいつ油断してるのか、手を抜いてやがる。
だったら、俺を甘く見た事を後悔させてやろう。いや、まて・・・
これなら逃げれるかもだ。幼性と逃げるか?
考えている間に頭上に迫った手を、確認した。
だが・・・避けるまでも無いな。軽くアルムの剣で薙ぎ払った。
ふふ~ん♪いい感触だ。頭上を捉えたはずの、ベアーの手だけが空を舞う。
手のひらを失った事に気付いていないベアーが、俺の頭上から地面にかけて
大きく振りかぶった。
ぶぉん!! 大きな風を切る音。
ズズ~~~ン!! ベアーの右腕はそのまま地面を叩きつけた。
その隙を逃さない!!
ベアーの腕を足場に駆けあがり、ベアーの首をアルムの剣でスパッと落とした。
身体から離れた、首が俺を見る。
「な、何と???ありえぬ!!」 首だけになって叫ぶ。
ベアーの身体を蹴って、一回転して着地した。
落ちて来る首が地面に叩きつけられる前に、素早く取った。
首だけの癖に、まだ生きている様だ。
その時、首の無くなった身体が大きな音と共に倒れて大地が揺れる。
倒れた身体を無言で見つめる。
「おっさん、油断し過ぎだろう?その後悔はあの世でしてくれ。」
「若きナイトよ。儂の負けだ。だが、微塵にも油断はしてない。」
「嘘こけ~~~。屁こけ~~~。んなはず無いだろう?」
「ふはははっは。そうゆう事にしておこう。」
「・・・おっさん・・・潔くて、いい奴だな?」
「あちゃちゃ~~~。このベアーは亜人でも大丈夫だった様ね。」
「首と胴が離れたら、無理だろ?」
「当たり前でしょ!!考えて切りなさいよ!!」
「お前が首を落とせ!って言ったんだろうがっ!!」
「そんな昔の事覚えてないわ!!」
「ぐっ。所詮は幼性か。話にならん。」
「ふはははははは!!儂はもう命の灯が尽きる。ナイトよ強くあれ!」
「おっさん・・・ごめんな。ごめんな。」
「ふっ。逆の立場だったら、儂はお主等に慈悲は与えぬ。気にするな。」
「おっさぁぁん!!やっぱりいい奴だ。。。」
「・・・いや、その剣で切られると邪気も払ってくれる様だ。」
「えっへん!!リノン様の加護をアルムの剣に宿らせてるのよ。」
「・・・そんな事、一言もいってないじゃん?また・・・適当な事を。。」
「もう時間の様だ。お主は良い物を持っておる。大切に育てよ。」
「おっさんもあの世で元気でなぁ・・・」
「ああ。それではな・・・ぁ・・・」
「おっさぁぁぁぁん!!!」
俺は、悪いモンスターばかりでは無い事を知っている。
過去に、心優しいモンスターに助けて貰った事があるからだ。
俺を助けた心優しいモンスターは、俺を庇って死んだ。。。
このおっさんと、そのモンスターが何故か重なった・・・
息絶えた、おっさんの首を抱きしめる。
すると、倒れた巨体から眩い光を発し、辺りを煌々と照らす。
白っぽい光が、身体から次々と溢れ、巨体の上で太陽の様な球体になる。
綺麗な球体になると、青く変化を始めた。
俺は、初めて見る神秘的な光をずっと見ていたが、リノンは呑気に
羽の手入れをしている。
まぁ・・・慣れてるって事だろうな。
再び、青い球体に視線を戻すと、その球体は3つに分かれた。
分かれた二つの光の青球は俺の方へと向かって来る。
「えっ??な、なんだ?」
リノンを見ると、両手を広げて受け入れ態勢だ。・・・危険は無い様だな。。。
そして、一つはアルムの剣に吸い込まれ、一つは俺の身体に吸い込まれた。
あ、温かくて気持ちいい。。。
#解放してくれてありがとう。少しだけ力を分けてあげるね。#
直接頭の中に声が響く。
そして、身体が青く輝くと光は俺の身体に吸い込まれた。
何だか、すっきりした気がするし、身体が軽くなった気がする。
「ええっ!!信じれないわ!!目盛りが3つ上がったわよっ!!」
何が凄いか不明だが、喜びながら飛び跳ねるリノンの激しく揺れる
乳の方が凄いと思うのは俺だけだろう。。。
「貴方!!凄すぎる!!国軍騎士団50人と同等の強さなのよっ!!」
「・・・いや、多分この剣だ。リノンがこの剣と俺を同期してくれてから、
この剣を持つと、身体が軽いし、動体視力もかなり上がってる。
更に付け加えるなら、相手に集中すると周りがスローに見える。
その証拠に、鞘に収めると脱力感が半端ないし、スローだった周りが
普通に動き出す。」
「伝説のアルムの剣の加護がそんなに凄いとはねっ!私に感謝しなさいよっ!
私のお蔭で助かった様なものでしょ!!」
「・・・いや、それ以前に・・・リノンのナイトに成らなければ・・・。」
「てへっ。」 頭を自分でコツンとして、舌を出す。
ふぅ~~~。まっいいか。
「今のベアーは冷静に判断してマスタークラスね。
マスタークラスをバンバン倒せば、アルマの道が直ぐに開けるわっ!」
「へぃへぃ。それは良かっただね。まぁ1年は付き合ってやる。」
1年契約なのよね。。。
あぁん。これ以上ないナイトが見つかったのに><
1年では無理よ!でも、この子だと10年も掛からずにアルマに行けそうね。
ん~。悩むなぁ・・・。正直に話すかなぁ。。。
「幼い性の象徴のリノン?難しい顔してどうした?鼻の穴が膨れて変な顔だぞ?」
「んな訳あるかぃっ!!いかなる時も、リノンちゃんは美しく可愛いのです!」
「・・・自分で言うか?所詮は幼性だな。」
やっぱり信用できそうだし、思ったより情に厚くて優しそうだし、何よりも
お前は俺が守る!って言ってくれて、有言実行してくれたし。。。
かなりカッコよかったなぁ・・・キャッ。
「・・・あのね・・・エルフって種族いるでしょ?」
「あ~うんうん。女ばかりの綺麗な種族だろ?」
「そうそう。私の耳を見て?何か感じない?」
「アホのリノンの耳が、エルフと同じ形??」
「アホは余計よっ!アホはっ!! そうなの。アルマへ行くとエルフになれるの。」
「ええっ!!!まじか??アホがあの綺麗なね~ちゃんになるのか?
いや、成れないだろう。アホだし・・・」
「キーッ!!もう!!聞いて!!
エルフになると、ナイトの力を借りずに一人で出来る事が増えるのよ。」
「まぁ・・・人型だし、人間と同じ大きさだしな。」
「そしてね?エルフって1000年とか生きてるって知ってる?」
「うんうん。爺ちゃんと住んでた時に村に居たエルフが860歳って言ってた。」
「そうなの。今の私が166歳で20年後の186歳でアルマに行けたとして、
エルフになると、186歳のエルフなのね。」
「・・・まずはエルフになる事が最初の目標だな?」
「そうなのね。良くできました。良い子良い子。」
パサパサパサっと飛んで、俺の頭に乗ると撫でる。
えっ?羽が再生してる??
「えへへっ。羽~再生したよ。さっき青い球が飛んで来たでしょ?
その内の一つが、私に吸収して再生したの。元々精霊の魂の集まりだしね。」
そう言えば・・・俺も吸収して、身体が軽くなったな。それに力がみなぎる様だ。
ああっ。そうか。モンスターになった奴等から、こいつらの仲間の魂を救うのか。
そうすると、あのリノンの持ってるヘンテコな道具の目盛りが増える訳ね。
要するに・・・モンスター討伐 = 良い事!って事だよな?
だが、モンスターにもいい奴も居る訳だ。首を切った後に良い奴って気が付いても
意味は無い。以外に考えさせられる物だ。。。
「危険も去ったし、少しでも休みましょう?」
「ああ。そうだな。寝るか。」
神秘の宝剣、アルムの剣を抱いて目を閉じた。
「でも、アルムの剣はどこで手に入れたの?」
この不思議な宝剣は本当に拾ったんだ。まぁ・・・騎士の亡骸から拝借したんだが。




