アルバイト探し
エメリアはまずギルドへと向かった。
ギルドと言ってもいくつか種類があり、一般的に、魔物退治関係や依頼などを扱う冒険者ギルドをギルドと呼んでいる。エメリアの目的地は、お店や商売関係の商業ギルドだ。
エメリアは大きなレンガ造りの建物の前に、深呼吸をした。
重厚感のある木造の扉は、カランと音を響かせ、来客を告げた。
時折興味津々な視線が突き刺さる。エメリアは受付へと早足で進んだ。
「すみません、住み込みでアルバイトを探してるんですが」
「はい、どのようなアルバイトをお探しですか?」
「えっと、魔石を売ってる所がいいです」
受付が優しそうなお姉さんで、ほっとする。
エメリアは少し緊張がほぐれて、知らずに口元を緩めていた。
「魔石……。それだと三店の募集があります」
その三店の地図を書いてもらい、エメリアは意気揚々と外に飛び出して行った。
エメリアはまず、一番近い貴族御用達のお店・ラノムへと向かった。
この国でもかなりの知名度を持っている有名店だ。値段はかなり高いが、その分質もいい。
お店に近づくにつれて、だんだんと人通りが増えてくる。この辺りはいろんなお店が集まっており、いい匂いがそこかしこから漂ってくる。
お昼をまだ食べていないエメリアには凄まじい誘惑となった。
必死に誘惑を払いのけながら、ラノムの扉をくぐる。
白を基調とした豪勢な内装。床は磨き抜かれて鏡のようにエメリアを映し出していた。
今更ながら自分の格好が気になってくる。
動きやすいようにと考えて選んだ服は、どれも元貴族とは思えないほど質素なものだった。
場違い。
ふとこの言葉が頭をよぎるが、今はそれを気にしている余裕はない。何せこれからの生活がかかっている。
エメリアはためらいがちに従業員に話しかける。
「あの、商業ギルドからアルバイトの紹介してもらって来たんですが……」
「はい、少々お待ちください」
待たされること十数分。エメリアはショーウィンドウに飾られた魔石を観察していた。
純度が高い……。それに、細かい細工が施されててとっても綺麗。もう芸術品の域だね。さすがラノム。
しばらくして、さっきの従業員と共に太った男が現れた。
指輪やらネックレスやらをジャラジャラとつけており、男の財力をこれでもかと見せつけていた。
「ふむ、お前がアルバイト志望か。店員か、職人か。どっちだ」
「職人の方です」
「俺の方の管轄だな。コンテストでのメダルの色は?」
「いえ、メダルは持ってません」
この街では毎年魔石のコンテストが開かれている。
皆腕に自信があるため、周りを抑えてメダルを勝ち取ったものはあちこちから依頼が舞い込むようになる。
だがコンテストなんて両親が許してくれるはずもなく。いまだ出る機会はないままだった。
「なんだ、持っていないのか。じゃあ用はないな。帰ってくれ」
「え」
あっという間に外へと追いやられる。
後ろを振り向けば、ちょうど扉がバタンと音を立てて閉められたところだった。