怪物の誕生
昔、世界は二つに別れていた。
一つは私たちが住んでいる世界。
もう一つは、鏡の世界。
この物語は、鏡の世界で起きたこと。
昔、鏡の世界には、
氷の心を持つ、王子がいた。
その王子は、氷を操ることが、出来た。
その王子の名前は、『レイ』。
今、レイと少女が、死んでしまった。
笑い狂った、少年が横でレイ達を見つめながら。
だか、少女は死ぬ前に、言っていた。
時を戻す魔法を。
その口にしていた。
「時を司る、精霊よ、時をあの日に戻し、て…」
その瞬間、時は遡る。
死んだはずのレイと少女は、
傷を負う前へ戻り、それより更に前、
少女と王子が出会うより、遥か昔へ。
鏡の世界ができた頃まで、戻ったのだった。
「寂しいよ。誰か。ねぇ、」
一人の少女は、悲しく、寂しく、過ごしていた。
彼女は、秘密姫。
秘密姫は、鏡の世界ができてから、
ずっと、ずっと、一人で生きてきた。
ある日の事。突然の出来事だった。
現れる筈の無い、
自分以外の人間が、現れた。
それから、百年後…
鏡の世界には、一つの国が出来たのだった。
そして、また月日は流れ、千年後。
氷の心を持った王子が生まれた。
王子は、氷を操ることが出来た。
誰も使えない筈の魔法。
王子だけが、氷の魔法を使えたのだ。
王子は、『怪物』と呼ばれていた。
そして、その矛先は、秘密姫へも、向かった。
皆、「秘密姫は、『怪物』だ!」
そう思い、殺しにかかった。
だが、殺すことはできなかった。
王子が、『レイ』が、秘密姫を助けたのだから。
秘密姫は、トランプ(スペード)の魔法を操れるため、
昔から、狙われていた。
ずっと昔から、遥か昔から、
彼女、秘密姫は、一人で生きてきた。
怪物として。
化け物として。
でも、もう一人ではない。
怪物は、怪物を見つけた。
仲間を得たのだ。
秘密姫とレイは、秘密姫の持つ魔法。
トランプの魔法の秘密を知るため、
永久に続くだろう、この国の秘密を知るために、
秘密姫とレイは旅に出るのだった。