恋騎士物語[放浪騎士の数奇な運命]
おはようございます。夏玉 尚です。
諸事情でユーザーネーム変更しました、旧すらいむ[N]です。
初めての恋愛ものです。
上手く書けているかどうかはわかりませんが、少しでも「良い」と思っていただけたら嬉しいです。
ではどうぞ。
「放浪騎士」=仕える主がいない騎士のこと。他にも信念を持って各地を旅している騎士のことなどを指す。
ギィンッ!
剣と剣が打ち合う音が、山あいの草原に響き渡る。
陽はまだ沈んでいないが薄暗い。
幾度となく聞こえる剣と剣の交じる音と、草原を駆ける音。
ガキィ・・・キィン!!
一振りの剣が宙を舞う。
喉元に剣を突きつけられる敗者。
喉元に剣を突きつける勝者。
だが敗者にあるはずの恐怖、
勝者にあるはずの驕りが見当たらない。
スッ
勝者は首ではなく、髪を結っている紐を断った。
敗者の髪は長く、肩の辺りまである。
それは敗者が女であることを示していた。
「やっぱりアルには敵わないよ。修行を
積んでも手も足もでなかった。」
敗者は微笑みながら呟いた。
「驚いたよ、イル。まさか女だったとはな。俺は何年も騙されていたんだな。」
アルと呼ばれた勝者は笑いながら言葉を返した。
「女は騎士にはなれないんだ。だから男のふりをしてたんだよ。」
イルは悲しげに俯いた。
「でも女のイルもいいと俺は思うよ。」
「もとから女だっ!」
2人の顔には笑顔があった。
先程まで命を懸けた戦いをしていたとは思えない会話だ。
「最後にアルと戦えてよかったよ。負けでもアルに負けたのならいいと思えるし。」
「旅をやめるのか!?」
「うん。そろそろ故郷に戻ってもいい頃だと思うんだ。」
「女姿のイルも見てみたいな。今まで鎧姿しか見たことなかったから。・・・でも」
「どうした?」
「あのさ、イル!俺と旅に出ないか?剣の腕もいいんだしさ。俺はイルと一緒にいたいんだよ。」
アルは顔を真っ赤にしながら告げる。
同じようにイルも顔を赤らめ、再び俯く。
「いや・・・いけない。確かに行きたいけど。・・・アル、いつかもっと強くなって私を迎えに来てくれないか?」
そして、イルの顔も真っ赤になる。
「わ、わかった。絶対迎えに行く。それまで待っててくれ。」
アルは真っ直ぐイルを見て言い切った。
イルは目を輝かせアルに頷く。
その頬には一筋の涙が伝っていた。
黒騎士物語と同じく、連載にもしようと思えばできそうな感じです。
続きが気になった方は、感想など書いてもらえると嬉しいです。