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私の父が好きな婚約者なんて捨てたい

作者: リーシャ
掲載日:2026/09/01

「また?」


「はい」


 使用人の言葉を聞いて深くため息を吐いた。ここは大陸の中で真ん中ほどの国力を持つちょうどいいバランスを保っている、豊かな土地を持つ国。何十年もずっと安定しているので、国民の幸福度が高い。

 しかし、その国民の一人である女は現在、とてもではないが幸せであるとは言えない状況に頭を悩ませていた。またと言う言葉に周りは諦めた様子の空気に満ちる。


「お嬢様」


 小さな頃から貴族の家に仕えている使用人が、そっとこちらを気遣わしげに見てくる。彼女たちにもわかるほど、彼の行動は問題だ。我が国の王女に現を抜かしているのなら、王家に不信をいだかせて我が家ごと離れた。幼馴染に夢中になっていたら、浮気を理由に離れた。


 そのどれでもない。リーフィニの婚約者である男、レダンが三度のご飯よりも好きと公言するのはリーフィニの父親だった。恋愛的な意味ではなく、英雄視しているのだ。


 父はレダンの家の領地に出たモンスターを昔、討伐したことがある。その時、危機的状況だったのがレダン本人だ。貴族子息がなぜそんな命の危険に合ったのか。

 それは、彼が勝手に家を出て、勝手に護衛をつけず領地の中で走り回ったからだ。年頃の男の子だから冒険心に惹かれたのは、当時子供だった彼をどうこう言えない。


 そこにモンスターが現れて、父が討伐したとのことだ。そこから彼の憧れは恋のように冷めることなく、今も継続中。

 父は男の子供がいないから、モンスターのことや武器のことを話せる彼と気が合うのか、娘のことなど何の把握もせず楽しく語らう。


 母も眉を顰めているほど頻繁に家に来る癖に、リーフィニとは会わず父とばかり会う。婚約者と会う約束をしておきながら、婚約者との面会をボイコットするのだ。

 毎回ボイコットや急遽取りやめになる理由は「義父との話し合い」だ。うまいこと使われているこの状況に、もう婚約を解消したくて堪らない。なぜリーフィニが、彼の隠れ蓑や理由にされないといけないのだろう。


 これが愛人候補の恋人ならあっという間に婚約白紙や解消、破棄に持って行けていたのに。よりにもよってうちの父と仲がいいし、父と親睦を深めるためだけに婚約させられたリーフィニ。


 いい加減、こんな関係はうんざりでどうにかしたい。父と親睦を深めたり話したりしたいのなら、わざわざリーフィニの婚約者になんてならなくてもいい。どうせ、一番父の近くに行けるからだろう。


「手紙を送ったのに、返しもせずにうちに来てるのに私に会うこともせず、間に挟まる理由なんてないじゃない」


 せめて手紙の返信を持ってくるべきだろう。今頃、父と冒険談義に花を咲かせているのだろうか。腹が立ってドレスが音を立てて擦れる。


 小さな頃はリーフィニとて、父と仲がいい男の子に二人とも楽しそうで話も弾むし、婚約の話が出た時はこんな光景が毎日あるのかと微笑ましく受けた。が、こんな毎日になるなんて思ってもみなかったのだ。


 こんなことになるのなら婚約など結ばなかったのなら良かった。しかし、彼は口が上手いので丸め込まれて結局婚約させられたかもしれない。今も、周りも上手いこと丸め込まれているのかもしれないが、肝心の婚約者に全てバレているという欠点は、一体全体どうするつもりなのか。


 まさか、親をどうこうできるから婚約者とも、このままストレートに婚姻できると思っていそうで。呆れてしまって、婚姻を結ぶ気などとっくに木っ端微塵だ。

 その意思を彼は見えないフリをしているのを知っていた。彼に会いたいのなら、父親と会話をしている部屋に行けばいいと言われるかもしれないが。

 なにが悲しくて、約束も全て義父との親睦を深めるという理由に毎回変える男のために、女が無理矢理会話に横入らなければならないのか。小さな頃ならまだしも、今はこれっぽっちも好きでもないし愛してもないのに。


 この婚約は政略ではない。単に父に恩を感じた婚約者が親に無理を言って、縁を繋ぎ支援などをしてあちらの家とこちらの家を太く末長くし続けるため。

 などといった建前を彼は貴族的な言い回しで、両家に説明しているのを知っている。こちらからすれば、ふざけるなと声を大にして言いたい。


 自分が一番楽しいからやりたいだけだろう。リーフィニなんて婚約者どころか、父と話すための必要不可欠なアイテムとでも思っているのだ。彼はこっちの会話には耳を傾けないのに、父と話すと顔色も明るくなり、実の息子のように慕っていることを隠しもせず。

 以前、話を聞いていないでしょ。父の話しか聞いていないでしょと指摘したところ、真顔で「父親に嫉妬するなんて、流石にどう反応したらいいのかわからない」としらばっくれた。


 その時、この男はこうやってリーフィニに寄生して、永遠に女王のような立場の憧れの人間の側に侍るのだと、目元を暗くさせた。言うなれば、自分は父親へのステップに必要不可欠な特別なチケットだ。

 並ばないと会えない憧れの人に会うために、彼はショートカットさせるためにこちらの意思を無視して今後も父親に会うために、手放すことはしないのだ。


 娘の婚約者になれば好きなようにうちに来れるし、好きなように話しかけられる。そんなバカな使われ方をずっとされているわけだから、今更家に来るなと言っても父は許すのだ。

 娘の気持ちより、男婿の気持ちと意気投合していることからわかる。父親と仲が悪いよりいい方がいいのかもしれないが、父に執着する彼を見ていると過剰だ。


「お父様」


 父の部屋に行くとレダンの笑い声が聞こえる。口元を引き結び、気持ち悪さを出さないように貴族の顔つきを貼り付け、深呼吸をしてから中へ入る。


「おや、リーフィニどうした?」


「はい」


 どうした、じゃない。娘と入婿の男の面会日で面会時間のはずの時間に、その人物たちがお互い同じ場所にいないことをちっとも把握していない父に、まずは呆れが顔に出そうに出る。どうして彼が入り浸っていていて、娘と交流する時間が取れているなどと思えるのか。


 ため息をついて、父と義理息子の立場の彼を見る。このまま彼を望むままに息子にするなど、許せない。今まで我慢してきた怒りが沸々と二人を見ていると、途端にブクブク吹き出してきた。

 なぜ、こんなに我慢しないといけないの。父の娘というだけで、好きでもない男にこけにされて。婚姻後も同じように、父を優先する男の背中を惨めに見送るなんぞ真っ平ごめんだ。


 好きだと口先だけ嘯き、父へは素晴らしいと目をキラキラさせて口元を緩ませる姿をずっと見続けるなんて。子供が生まれても父親らしいこともしないかもしれない。

 するとしても、お母様の義父上は、なんて口上も口癖も子供に吹き込まれるなんて。嫌だ、絶対そんなの嫌だ。子供の口癖が「お祖父様」に変わるだけなど悪夢ではないか。


 父と子供が交わす内容は己の父のことなれど、嬉しさなど皆無。やめてと言っても、彼はいつも自分の父親のことを褒めているのに何が不満なんだと、悪びれずきょとんと目を丸くさせるのだ。


 恐ろしい未来なのに、どれをとっても回避できる気がしない。将来、お祖父様の家に行くと二人して、実娘のこちらが行きたくないと言うのに平気で置いていくだろう。

 二人でお祖父様のところに行こうなと、子供を次は出汁にして足繁く通うのが今から楽に浮かぶくらいには、彼をもう信用できなくなっていた。肩をゆるりと手で摩ると鳥肌が立っているのが、感覚的にわかる。


 今からそれが想像できる。こちらを大切にするが、それは父に対するパフォーマンスに過ぎない。愛しているふりをして娘の話題を振ればあっという間に父の機嫌を直せるし、喜ぶ。

 ただでえ、冒険やモンスターという話で意気投合しているのだ。さらに義理息子であり、娘の夫、孫の父親、義理の息子。一つ一つ肩書きが増える毎に父との縁が深まる。


 手放す大ファンはいまい。リーフィニだってもし、仮に婚約者の母親が大ファンの女優だったのなら義理の娘になると思えば、それはもう泣くほど嬉しいだろう。

 くだらない心理と義理の父親、真の息子になるためだけに婚約をしていて、さらに妻になって辛い子供を産む作業をするなんて。考えただけでストレスが蓄積していく。


 二人が並んで座っているのを見るだけで、嫌悪が湧くまでになってしまっているみたいだ。今日こそ、今日こそ言うのだと己を鼓舞する。だが、こちらの勇気を萎ませるように父がふわっと娘が来たからか、目元を滑らかに緩ませる。そんな顔をする人を傷つける言葉を投げかけられるほど、身を任せられない。


「お父様、聞きたいことがあるので見ながら聞いてほしいのですが」


「わかった」


 父は椅子から立ち上がるとこちらへ来る。追随するようにレダンも立ち上がるが、リーフィニはジッと見て観察した。やはり、後追いするようについてきている。


「私も行きます」


「いえ、あなたはここにいて。私はお父様に用があるから」


「いや、気になるからね」


「お父様と二人で話したいの」


「でも」


 でもでもでも!ああっ、うるさいこの男は!真正面から来るなと言っているのに、なぜぬるりと静止する手を避ける?


「お父様行きましょう」


 さっさと父を連れて部屋を出る。後ろを見なくとも着いてこようとする気配に、さらに鬱陶しさがブワッと増した。どうして来るなと言うのに動く。動くなと言われているのがわからないなど、人間として理解できる知能を己の生まれた生家にわざと置いてきているとしか、思えない。本当に嫌。


「どうした」


「お父様、この時間、いつも彼と一緒にいるのわかってる?」


 彼から離れた場所で父に問いかけると、親は目をパチパチさせる。


「うん?そう、なのか?気にしたことはなかったが」


 父は基本的に体を動かすのが好きなタイプなので、かなりルーズだ。そういうところも好きだが、気づいてほしい。少しでいいから。


「本来、彼と婚約者として交流する時間なんだけど……いつもお父様のところに行くと交流する時間をなくすって、知ってた?」


「聞いてはいたが……男の子なんて、所詮そんなものなような気がするからなぁ。女の子より、モンスターや冒険の方に気を取られることはお父様もあったことなんだ」


「お父様、じゃあ、お父様がお母様と会う時間をお母様のお父様、お祖父様と会う時間に毎回当てるの?お母様をほったらかしにして?私、お母様からそんな話は聞いたことがないけど」


「……あー、そう言われれば、デートはしてたかな」


 母との思い出を恥ずかしそうに言うのは言うが、今欲しいのは惚気じゃなくて気付きなのだ。


「彼に言おうか」


「言わなくていい。お父様が言うと、お父様が言ったから仕方なく交流されてしまうでしょ。それは交流じゃなくて、大好きなお父様のお願いとして喜ばせてしまう」


「え?そうか?」


 父が望んだ瞬間、婚約者が望んだからでもなく彼が望んだわけでもなく、英雄の父からの頼みとなり直ぐ上書きされてしまう。惨めなんて物では測れない時間にされる。二人で暫し話し込み、別れると自室に戻った。


 その後、使用人からリーフィニのところへレダンが来ると言う話もなくその日を終えた。別の日に埋め合わせするという話も、いつの間にかされなくなった。

 最初の頃は、代わりの埋め合わせという名の父と話すための日を指定していたが、今は自由に訪問予定を勝手に決めて婚約者と会う隠れ蓑を利用し堂々と父の部屋に行く。


 父と彼が義理の息子と父以上の仲以外だということは知っているし、わかっている。父に嫉妬しているわけじゃない。家族になるつもりもない異物が、己の好きなように動くのが不愉快なだけだ。彼は婿になりたいのではなく、父の息子になって近寄って話しかけたいだけ。


「リーフィニ!どうしたんだ?」


 婚約者が来ているというから、応接室に通した。今までならば父の部屋にいの一番に向かっているのに、特殊なことだ。彼が声をかけてきたのは、家に来るという手紙に拒否を突きつけたから。

 門番に入れないように言っていたのに入れたのは、今日がここへき続けて二週間目になるから。毎日通い続けていたらしい。そんなに父に会いたいのかこの男は。本当に気持ち悪いんだから。


 父と二人で話しているのを見て、着いてこようとしているのを見てからというもの。似たような気持ちが心の中からポロっと出てくるようになった。隠せなくなってきたが、そうすると心がスッキリとなって解放感が強い。


 そんな精神安定方法、二度と手放せない。父は話をしてからというもの、娘の言葉に感じるものがあったのか。門番に通すなという指示になにかさらに追加することもなく、退けることもなく邪魔されることはなかった。


 正直、父が権限で撤回してくると思っていたから意外だった。もし、邪魔してきたら母のところの実家に向かうことを母だけに話していた。彼には父だけがいればいいのだから、婚約者の方が家にいなくても無問題だろうという判断。ここまで蔑ろにされて、健気に待つお姫様じゃないのだ。


 彼は今になってこちらの顔色を伺う。好きだからとか婚約者だからじゃない。父に会えなくなるから。


「会ってくれなくなったけど、なにかあったのか?もしかして、義父の身になにか?」


「はぁ」


 結局、会わなくても父親のところに回るのだ。期待していたわけじゃないけど、自分の態度を試みることもしない。


「会ってくれなくなったのはあなたでしょ?私に会わなくなったのはそっちなのに、まるで、私から会わなくなったみたいに言うのはやめてくれません?」


「な……いきなりどうしたんだ?」


「別に……あなたが私に会ってないのに、私に会うことに拘るところを見るのがね。私に会うこともなく、さっさと父に会いに行くだけなんだから、私たちがわざわざ手紙で訪問を伝え合う必要なんてないんじゃないですか?」


 前々から言いたかったことをさらさらと、一方的に告げた。ワンクッションこちらを挟むやり方は、不愉快極まりなかったのだと。


「は?今更になって何を言うかと思えば。落ち着いてくれ」


「落ち着いてます。あなたが焦ってるんでしょうけれど」


 焦り、今にも木っ端微塵になりそうな関係を必死に繋ぎ止めようとしているのは、どちらなのか。そんなのは一目瞭然だ。今になって対話しようと思うなんて、いかにも蔑ろにしていた証に他ならないではないか。


 まあ、リーフィニだけが知っていることではない。この家にいる使用人たちだって、リーフィニと会話を投げ捨てて恋人みたいに浮かれ父のところへ行くところをずっと見続けていた。

 今になってこちらへ尻尾を振っても情けをかけられているようで、愛など今更いらない。見せかけのお飾りなど、貰っても嬉しくもない


「とにかく、今は聞いてくれ」


「あなたは知らないかも知らないけど、そちらに送ったものがあるから帰ったら読んでください」


 手紙なんてろくに読んでなさそうだが、最後なのでと釘を刺す。彼が読まなくても彼の両親らへんも教えようとするだろうし、こっちが心配する必要はなさげだ。


「な、なんなんだ。今言ってくれ」


「私と話す気があったのですね」


 唇をあげて、バカにした顔で笑う。


「婚約解消の書類です」


「え?」


「元はお父様の活躍に感謝をした時の婚約だった。こちらからの婚約解消で、終わりにできるようになってるらしいんです」


 契約したとき、あくまで感謝を示すために結んだ。それに自分たちの息子が頼み込んだから。


「まっ、待ってくれ!急に婚約を解消なんて、いきなりそんなことを言われても」


「あなたにとってはいきなりなのですね。私とあなたがまともに話したのは、最後がいつなのか思い出せるのですか」


「それは……確かに最近、義父上とばかり話していたが」


 最近というが、彼と婚約してからの話なので、昔からの間違いだ。リーフィニといつたくさん話したのだろうか。まさかとは思うが、お伺いの手紙が会話と思ってるのではないのかこの人は。それとも、最初だけに交わす挨拶か。

 もしかして「君の父上は今どこに?」という定番のセリフを会話したと判定してるのか。それならば、彼は確かに会話をしていることになるのだろう。彼の中だけの話だが。


 父と話せれば満足なのだから、さぞやいま彼は幸せだろう。婚約しているのも、将来婚姻する予定のリーフィニを蔑ろにしているつもりも、全く一つもない感覚なのだ。


 なぜなら父と会話しているから。妻になる女の父親と楽しく話す婿は、世間的によい夫であり妻を正しく扱っていると、表面的に評価されはする。そこに、将来の妻とはまともに会話していないという点を見なければ。


 彼と会話をする気はもうない。というより、彼のために話をする時間はもうない。散々、彼がリーフィニと話すことをしなかったから。こちらは待った。さらに、父のところにばかり行くのはおかしいと口に出して問いただしもしたのだ。


 その上で、彼はリーフィニと結婚すれば父と息子の関係になれるという、一点のみに突き進んでいることだけを知れただけ。十分だ。わかっていたが、対話をする気などレダンには初めからない。

 父の言葉は聞くのに婿入りのくせにリーフィニの言葉は軽んじる。次期当主の女を冷遇する婿は家に入れるに値しない。父に直談判の末の断言したのだ。だから、婚約白紙及び解消があっさり成立する。


 父の言葉だけを聞いていようと。将来手綱を操れない男が言うことを何一つ考えようとせず、こちらがさも悪いように誘導する夫なんていらない。

 うちの判断がそうなった以上、彼と婚約し続ける理由はない。嫁入りならばもう少し我慢したかもしれないが、婿入りなのだ。リーフィニの方の拒否権が断然強い。


「婚約がなくなったら、私はあの人の息子になれない!」


 レダンは焦った顔を披露して声を張る。声を張るようなことじゃないのに。なんていうか、ブレない人だ。だからこそ、余計に近寄りたくなくなったんだけど。


「勝手になっておけばいいのではないのでしょうか。そこまでは止めませんし。私の夫にはしたくありませんけれどね」


 言い終えると、彼を放置して熱いままのお茶を飲む。これでスッキリ解決だ。二度とバカの相手をしなくて済む。


「なぜ、大切にしただろう」


「大切?」


 あの行動や今までの対応を思い出したが、普通の婚約者たちのようにされたことなんてない。季節の贈り物だって、父より明らかに手抜きされて選ばれたような物だったし。なんだったら、リーフィニには郵便で送っておき父には手渡しという酷い格差があった。


「大切にしたのは父と関係が切れないようにしたかったからでは?」


「な、だ、だから、父親に嫉妬なんて君がおかしいと」


 そうそう、このセリフに何度黙らされてきたことか。


「お父様に嫉妬なんてするわけないじゃないですか。あなただって、あなたのお母様に嫉妬したことなんてないでしょ?」


 婚約者と親が仲がいいから嫉妬するなんて、本の読み過ぎだ。悪いのは圧倒的にレダンなのである。


「周りの者たちから父のおっかけとバレてましたからね?恥ずかしくてあなたが嫌いになったのですよ」


「は!?き、嫌い!?」


 飲み終わると立ち上がって、彼を外へ出すように指示する。最後まで「あの人に挨拶するまで帰らない」と居座ろうとしたが、父の命令を受けているうちの使用人たちにより、両脇を抱えられて馬車に乗せられた。


 その後も婚約が白紙になったというのに、毎日我が家に来て父の名を出しては会いたいという彼の姿が目撃される。だが、レダンの実父により回収されていった。彼の父親もなぜ婚約を白紙にされたのかを、今になって実感していることだろう。


 漸く、煩わしい男と縁が切れ毎回父のところにいるのを見る度に、微妙に嫌な気分にさせられた日々から解放されたのだ。嫉妬ではなく温い気持ち悪さを感じていたと、恐らく彼は一生知ることはないのだろう。


 父の妻は母だ。当たり前の権利のように入り浸るのを見ていると、家族という輪を汚されている気分になっていた。母は、それに関しては男同士の付き合いと思っていたから、気分が悪くなったりはしていなかったけど。

 娘視点からすると、娘を差し置いて侍ろうとする様はストーカーみたいで嫌だった。やっと言語化できたことが、今回に繋がる。


 父は次の婿をと思っているが、暫くは遠慮したい。親子水入らずとまではいかないが、せめて父と話すたびに思い浮かぶ元婚約者の影がなくなる程度には、落ち着いた日を楽しみたいものだ。

最後まで読んでくださり感謝です⭐︎の評価をしていただければ幸いです。おまけ扱いされる人生なんて嫌ですよね

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― 新着の感想 ―
たとえば母親や姉妹に執着しているなら不貞の疑いをかけられますが、同性だと(不貞はなくはないけど)難しいですよね。きちんと関係を切れてよかったです。
 リーフィニさんを英雄扱いしたい者が掲げる剣の錆か、英雄に会うための口実量産機と扱うのに躊躇いがない者のしつこい介入……じわじわストレスたまるかもしれませんね。 面倒な関係に一区切りついた様で、良か…
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