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転生したら、普通に最高なスパダリ辺境伯と溺愛結婚してました〜現代知識で悪女の妨害を華麗にスルーします!〜  作者: 夏野みず


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9/10

公衆の面前での「羞恥」攻撃と「科学的証拠」

 ローナは、あらゆる手段が尽きたと悟り、最後の、最も下品で、卑劣な攻撃を仕掛けてきた。それは、辺境伯邸で開かれた、領内の有力貴族を集めた晩餐会での出来事だった。


 ローナは、招待されていないにもかかわらず、親族の男爵を脅し、無理やり会場に乗り込んできた。


 この悪女は、私とマクナル様が談笑している場に乱入し、大声で叫んだ。


「アナスタシア様! 貴女の秘密を、私は知っていますわ! 貴女は、このマクナル様と結婚する前、王都で『恥ずべき過ち』を犯した、破廉恥な女ですわ」


 ローナは、私が妊娠する前に、別の男と関係を持っていたと主張した。


「その証拠に、貴女の身体には、当時の『証』が残っているでしょう」


 ローナは、私が着ていたドレスの、肩の少し下あたりを指さした。そこには、私が生まれつき持っている、小さな赤いアザがあった。


(なるほど。この生まれつきのアザを、『不貞の証』だと公衆の面前で主張するつもりね。悪質極まりない)


 私は、マクナル様の静止を振り切り、前に一歩踏み出した。そして、穏やかに、しかし会場全体に響く声で言った。


「ローナ様。貴方様の言葉は、あまりにも根拠のない、下品な誹謗中傷です」


「根拠がないとでも! 貴女の体に残された『シミ』こそが、貴女の過去の不貞の証拠ですわ」


 私は静かに微笑んだ。


「ローナ様。貴方様は、この『シミ』が、私が生まれる前から存在している、皮膚の『色素異常』であることをご存知ありませんか」


 私は前世の知識で、皮膚科の常識を持ち出した。アザは、多くの場合、生まれつきの色素沈着であり、不貞とは何の関係もない。


「もし、ローナ様が、私の生まれつきの身体の印を、公衆の面前で『不貞の証』と誹謗中傷されるのであれば、それは『辺境伯夫人の名誉棄損』だけでなく、『医学的な無知』を公言しているに等しいですわ」


 私は使用人に命じ、私のアザが幼少期から存在していたことを証明する、古い肖像画を急いで持ってくるよう指示した。


 マクナル様は、私を抱き寄せ、ローナに向かって、冷たい視線を浴びせた。


「ローナ嬢。君の最後の悪あがきは、私と妻の絆を砕くどころか、君自身の品性を、底の底まで晒しただけだった。君は、この領地にいる資格はない」


 ローナは、顔を真っ青にし、その場に崩れ落ちた。あの女の最後の攻撃は、「生まれつきの証拠」という、科学と客観的な証拠によって打ち砕かれたのだった。


 そして、この出来事が、彼女の没落への、決定的な一歩となることは、この時の私には、まだ知る由もなかった。

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