表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら、普通に最高なスパダリ辺境伯と溺愛結婚してました〜現代知識で悪女の妨害を華麗にスルーします!〜  作者: 夏野みず


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/8

社交界の噂と「心理的ハードル」の撤去

 ローナの最初の試みは失敗に終わったが、あの女は諦めなかった。次は、より陰湿で、貴族社会に特有な「噂」を武器にしてきた。


 それは、辺境の貴族が集まる舞踏会での出来事だった。ローナは、私とマクナル様を王都の流行や格式から遠い「辺境の田舎者」として孤立させようとした。


 会場に入ると、ローナは既に地元の有力貴族たちに囲まれていた。この公爵令嬢は、王都の最新のドレスと、洗練された社交術で、あっという間に人々の心を掴んでいた。


 私とマクナル様が挨拶に向かうと、ローナは優雅に微笑んだ。


「アナスタシア様、素敵なドレスですわね。地元の職人さんが心を込めて作られたのでしょう。王都の流行とは少し違いますが、辺境の素朴さが際立って、大変可愛らしいですわ」


 その言葉は、私を褒めているようで、実はマクナル様に「あなたの妻は王都の流行も知らない田舎者だ」と訴えかけていた。


 ローナはさらに続けた。


「それにしても、マクナル様。王都の舞踏会で、貴方様がどれほど注目の的だったか、アナスタシア様はご存知ないのでしょうね。辺境にいらっしゃってからは、王都との交流も減って、きっと寂しい思いをされているでしょう」


(ここで私が怒ったり、反論したりしたら、ローナの思う壺だ。「辺境伯夫人は器が小さい」という噂が立つだけ)


 私は穏やかに、しかし会場全体に響く声で、マクナル様に話しかけた。


「マクナル様。ローナ様のおっしゃる通り、王都の華やかさは素晴らしいものでしょうね。でも、私は王都での生活よりも、この辺境での生活の方が、はるかに充実していると感じています。それは、貴方様が、貴方様ご自身の『本当の価値』を、ここで見出しているからです」


 私はマクナル様の手を優しく握り、その瞳を真っ直ぐに見つめた。


「マクナル様は、王都では『優秀な貴公子』の一人に過ぎなかったかもしれません。しかし、ここでは、マクナル様は辺境の民を飢餓から守り、安全を守る『絶対的な統治者』です。日々の泥臭い仕事一つ一つが、辺境伯としてのマクナル様の存在価値を証明している。その隣にいられることこそ、私にとって最高の誇りです」


「王都での退屈な社交辞令よりも、私は貴方様が、領地の問題解決に熱中する、真剣な横顔を見る方が、よっぽど胸がときめきます」


 私の言葉は、辺境の貴族たちの心を強く揺さぶった。彼らは、常に王都の貴族に見下されてきた。しかし、私の言葉は、辺境の地で懸命に働くマクナル様と、彼らを擁護するものだった。


 マクナル様は、私の言葉に深く感動したようだった。その青い瞳は熱を帯び、私への愛情が溢れていた。


「アナスタシア。そなたは、常に私を最も深く理解してくれる。王都の社交界など、私にとってはただの儀礼だ。辺境の地で、そなたと二人、この領地を築き上げていくことこそが、私の真の喜びだ」


 マクナル様はそう宣言し、私を抱きしめた。


 この瞬間、ローナの仕掛けた「王都と辺境の格差」という心理的なハードルは、完全に撤去された。辺境の貴族たちは、私を「辺境伯に真の価値を与える賢夫人」として迎え入れ、ローナの周りから潮が引くように離れていった。


「君は恐ろしいほどに賢いな、アナスタシア。そなたの言葉で、私たちが『辺境伯夫妻』として、この領地に完全に根を下ろしたことを、皆に理解させた」


「マクナル様の真の価値を、皆に伝えたかっただけです」


「愛しているよ、私の賢い妻」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ