ローナの惨めな末路と最後のざまあ
ローナの結婚相手として選ばれたのは、王都の貴族社会から既に信用を失い、莫大な借金を抱えた、年老いた子爵だった。その子爵は、辺境の小さな領地を所有しているだけで、実質的な財産も権力もゼロに等しかった。
ローナの公爵家は、形式上「辺境の貴族の元に嫁がせる」という体裁を取りながら、実際には、ローナを王都の社交界から完全に追放し、子爵の借金返済の「担保」として売り飛ばしたに等しかった。
この結婚は、ローナがマクナル様という最高のスパダリ夫を手に入れようと目論んだ全ての行動への、決定的な報いだった。
(彼女が最も嫌っていた、権威も美しさもない、みすぼらしい生活。それを、彼女自身が望まない形で手に入れることになった)
私がローナの惨めな末路を知ったのは、王都からの使者を通じて、公爵家から正式に「ローナの婚姻と辺境伯夫妻への謝罪」が伝えられた時だった。
マクナル様は、その知らせを聞いても、何の感情も示さなかった。
「ローナ嬢の末路は、彼女自身が選んだものだ。私たちは、私たちの幸せだけを考えればいい」
しかし、私は、最後に一度だけ、ローナに会いたいと思った。これは、私自身の過去、そして、この世界のアナスタシアとしての人生に、完全に区切りをつけるための儀式のようなものだった。
私はマクナル様に相談し、あの方の立ち会いのもと、ローナが王都を離れる直前に、辺境伯邸の庭で対面することになった。
ローナは、以前のような華やかさは失われ、顔はやつれ、その瞳からは生気が消えていた。彼女の着ているドレスも、古びて流行遅れのものだった。
「アナスタシア。何のつもりよ」
ローナは、私を睨みつけた。その眼差しには、まだ嫉妬と恨みが残っていた。
「ローナ様。貴方様に一つだけお伝えしたいことがあって参りました」
私は、ローナの目の前で、マクナル様の手を優しく握った。マクナル様は、私を抱きしめるように、その手に力を込めてくれた。
「私は、貴方様が何度も私たち夫婦に仕掛けた妨害工作を、全て把握していました」
私がそう言うと、ローナの顔が一瞬、凍り付いた。
「毒入りのハーブティー、偽装された事故、離間の手紙、そして不法侵入。その全てを、私は、貴方様が想像もしていなかった『現代の常識と科学』で、簡単に見破りました」
私は穏やかに、しかし断固とした口調で続けた。
「貴方様が私を追い出せなかったのは、私が賢かったからではありません。貴方様の悪意が、あまりにも浅はかで、古風で、そして非合理的だったからです」
「私の夫、マクナル様は、最高の知性と愛情を持つ方です。貴方様のような、古い価値観と感情論だけで動く悪意が、あの方の愛を奪えるはずがありませんでした」
ローナは、私の言葉に、反論の言葉を失った。彼女の全ての努力が、私にとっては「子供の遊び」でしかなかったという事実が、彼女に最大の屈辱を与えたのだろう。
「さようなら、ローナ様。貴方様の未来が、貴方様の選んだ道の結果であることを、心からお祈りしています」
私はマクナル様と腕を組み、ローナに背を向けた。
ローナは、最後まで何も言えず、ただ庭に立ち尽くしていた。彼女の視線には、私への憎しみと、マクナル様への諦めきれない執着が混ざり合っていたが、私たち夫婦は、もう二度と振り返らなかった。
数日後、ローナが乗った馬車は、王都の権威も富もない、みすぼらしい辺境の子爵領へと向かった。彼女の華やかな悪役令嬢としての人生は、こうして終焉を迎えたのだった。




