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第8話「24,000枚のありがとう」

机に並べられたシールの山を前に、橘は深呼吸する。

一枚一枚に込められた思いを、採用者へ届ける――その作業は地味だけれど、とても温かいものだった。


この作業は、1人でやれば1年以上かかる覚悟のもの。

それでも、応募してくれた皆に感謝を伝えたい気持ちが、橘の手を止めさせない。

24,000枚のシールを、1人でも多くの笑顔に変えるために、今日も静かに、しかし確実に動き続ける。

橘は机に並べられた大量に積み重ねられたシールを見つめる。

「……よし、まず応募してくれた方に、この1枚を送ろう」


同じデザインが10枚ずつ印刷されており、そのうち1枚を採用者へ、1枚を台帳用に残す。残りの8枚は、ネット販売用だ。


橘はシールの1シートを手に取り、採用者用と台帳用の2枚だけを切り取り線に沿って丁寧に分ける。

「まず応募してくれた方用の1枚、次は台帳用……残りは販売用だな」


手は淡々と動くけれど、心には感謝の気持ちが溢れている。

そして、後は貼るだけの状態にするためにシールに加えて、宛名ラベルとお礼状を封筒に入れる。手元の作業は地味だが、心は温かい。


「一人で24,000……全部送るのは大変だけど、何年かかっても感謝の気持ちを伝えるんだ。まずは、この分だけで」と小さく呟く。


すると、1週間後──黙々と作業している橘に気づいた樋口が笑顔で現れる。

「手伝うよ! 井上さんと鈴木さんと伊藤さんも呼んでるから」


橘は、ほっと胸を撫で下ろす。助っ人がいれば作業もずっと早く終わる。


封筒を渡す前に、橘は井上にこっそり声をかける。

「澤田くんと何か進展あった?」

「仕事で一緒だったときに挨拶程度ですね……

話したいんですけど、中々自分から話せなくて(笑)」

橘は作業の手を止め、独り言のように小さく呟く。

「……よし、いいこと思いついた」


「ちょっと確認したいんだけど、澤田くんとお昼、2人きりでランチでも嫌じゃない?」

井上は、少し照れながらも微笑む。

「大丈夫です! むしろ嬉しいし、有難いです」


橘は、社用チャットで澤田にメッセージを送る。

『もしよかったら今日のお昼、澤田くんと井上さんと私でランチ行かない?』


数分後、澤田から返信が来る。

『行きたいけど、時間合わないかも……』

橘は、すかさず返す。

『それなら時間合わせるよ。お昼休憩に私の部署に来てね』

澤田から返信が来る。

『了解』


橘は、井上にこっそり声をかける。

「澤田くん、今日お昼休憩のときにここに来るから、心の準備しててね」

「何時ですか?」

「時間は分からないの。だから、私たちが合わせることになったの。

私は仕事抜けられないってことにしておくから、井上さんと澤田くん2人だけだよ、ふふふ」


後ほど、澤田が橘のいる部署に到着する。橘は手元の作業を指さしながら微笑む。

「ごめんね、まだ仕事残ってるから2人で行って来て」


井上は少し緊張しながらも頷き、澤田も軽く肩をすくめる。

「澤田さんの知ってるお店に行きたいです」

「俺の行きつけでよければ」

満面の笑みで井上が言う。

「ありがとうございます」


橘は一息つき、シール発送の続きを始める。採用者への感謝を胸に、手は止まらない。

24,000枚の発送は、まだまだ道のりが長い──けれど、その一枚一枚に思いを込めて。


協力してもらった甲斐もあり、本来なら1年以上かかると思われた作業も、今回は まとまった時間を割けたおかげで、あっという間に終わった。

普段は1日20分しか触れない作業だったのが嘘のようだ。


「これで採用された皆に送れた」


GIFTアプリには、『採用されてシール届きました』投稿がたくさん見受けられた。

コメント欄が『私も届きました』などの好意的なものばかり溢れる。


たくさんの投稿ありがとうございます!

このスタンプラリーの企画を考案したものですが、感謝の気持ちを伝えたくて24,000枚シール送りました。


橘は貼付済シールの台帳を撮影し、GIFTアプリにアップする。

その厚みからも送った量の多さが一目でわかる。

「これだけの方に届いたんだ……」と、思わず手を止めて見入る。


今回、採用できなかった作品もあり、申し訳ないです。まず応募くださった皆様に感謝の気持ちを伝えたいです。


台帳に貼ったシールの山を見て、改めて感謝の気持ちが溢れる……。

24,000枚なので、台帳1冊では足りませんでした(笑)


#柴犬好き

#ギフ丸かわいい

#ギフ丸好き

#ギフ丸グッズ欲しい


コメント欄

・ハッシュタグ笑ったw

・橘さんのギフ丸愛が強すぎてw でも、その熱量好きです(笑)

・ギフ丸以外のグッズも欲しい〜

・てか台帳すごすぎ!


橘はコメント欄を読みながら、画面の前で微妙に首をかしげた。

「……あれ? ギフ丸好きなの、もしかして私だけ?」


少し驚きながらも、すぐにぽつりと呟く。

「コメントにもあるけど、こんなに素敵なキャラがたくさんいるのに、何でまだグッズ無いんだろ? 不思議……」


でも、その声は すぐに弾む。

「グッズ化したら、推しキャラなんかも出来ていいんじゃないかな」

貴重な時間を割いて読んでいただき、ありがとうございました!

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