第6話「デジタルで広がる輪」
次はアプリ開発課との初打ち合わせだ。橘は、緊張と期待を胸に会議室へ。
橘が会議室に入ると、懐かしい声が響いた。
「……橘? 久しぶりだな!」
振り向くと、入社したての頃に受けた研修以来の同期・澤田 幸人がいた。
以前より落ち着いた雰囲気で、机にはノートPCとタブレットが並んでいる。
「澤田くん……! 本当に久しぶり。まさか同じチームになるなんて」
「俺も驚いたよ。橘が企画担当なんだって聞いて、“あの橘”かって思った。研修のときのプレゼン、今でも覚えてるよ」
橘は少し照れながら笑った。
「勢いだけで乗り切ってるから、フォローよろしくね」
「任せとけ。アプリの仕様やデザインは俺が形にするから」
澤田はタブレットを操作し、試作画面を見せる。
小さなギフトマークが地図上に並び、スタンプを押すと光る仕組みだ。
橘は胸が高鳴る。
「すごい!……もうこんなに形になってるんだ」
澤田は笑う。
「いや、すごいのは橘の方だよ。この企画、橘が出したんだろ?」
橘は視線を落とし、照れたように笑った。
「尊敬してる先輩に背中を押してもらえたおかげなんだ」
「なるほど、橘らしいな」
橘は少し話を続けた。
「その先輩、樋口っていう女性なんだけど、GIFTアプリ考えたのもその人なんだー!
しかも、めっちゃ謙虚で、仕事もできる上に人格者でカッコ良過ぎるんだよね」
澤田は笑いながら言った。
「橘がその先輩に憧れてるの、めっちゃ伝わってくるわ(笑)」
橘は少し話題を変えた。
「そういえば…クリエイティブ課の人たちが素敵な作品にしてくれて、感動しちゃった」
「24,000も凄いよな。こんな短期間でクオリティ高くてビビった」
「だよね! しかも、著作権とかの問題なんかもチェックしてくれた上でだからね。感謝しかない」
打ち合わせ中、入社間もない後輩・井上 桃香がノートを取っていた。
「……あれ、澤田さんってカッコイイ……!」
思わず小声でつぶやく井上。
橘は気づかず資料を説明するが、後輩の視線は澤田に釘付けだった。
打ち合わせ後、橘は井上に軽く声をかけた。
「緊張するよね。大丈夫?」
井上は赤面しながら小声で答える。
「澤田さんカッコ良くないですか? 一目惚れしちゃったかも…です」
橘は、にやりと笑う。
「そうなの? 話してくれてありがとう!
じゃあ、彼女いるか聞いてみようか。ちょっと待ってて」
「唐突にごめんね。澤田くんって彼女いる?」
橘に聞かれ、澤田は突然意識し出す。
「……いないよ、ずっと彼女募集中(笑)」
(橘って、まさか俺のこと?)
橘は「澤田くん、彼女募集中なんだって」と井上に小声で伝えた。
井上は思わず両手で顔を覆い、目を輝かせながら小さく「やった……!」とつぶやく。
橘は微笑みながら言った。
「好きな人がいたら、仕事に行くのも楽しみになりそうだね……いいなぁ(笑)」
後輩の小さな喜びに、橘の心もふわりと温かくなる。
思わず口元がゆるみ、軽く笑いながら「よかったね」と心の中でつぶやく。
胸の奥がほんのり温かくなるのを感じながら、橘は次の打ち合わせ資料に目を向けた。
貴重な時間を割いて読んでいただき、ありがとうございました!




