第3話「小さな一歩、大きな輪」
小さな企画でも、人の協力と評価があれば、形にできる──。
全国のギフト局を巻き込むスタンプラリー企画は、そんな希望の第一歩だった。
後日、休憩室で資料を手にした橘は、隣に座る樋口に少し緊張しながら声をかけた。
「先輩……緊張しまくりでヤバイです……」
樋口は、優しく微笑む。
「橘ちゃんの企画、すごく良いから自信持って! こんなに素敵なアイデアなのに認められなかったら、皆の見る目がおかしいんだよ。
私がいたら絶対推してるもん! だから、もし万が一、採用されなかったら何か食べにでも行こうね。もちろん私の奢りで(笑)」
橘は、胸が熱くなった。
「ありがとうございます。先輩の優しさに泣けてくる……。会議、行ってきます」
樋口は、チョコを差し出し囁いた。
「橘ちゃん、頑張れ!」
橘は、そのチョコのパッケージに書かれた「GOOD LUCK!」の文字を見て、深呼吸する。
「はい、頑張ります!」
⸻
会議室に入ると、上司たちも集まっており、橘は緊張で手が少し震えた。資料を共有画面に映しながら、落ち着いて説明を始める。
「今回の企画は、全国の離島など過疎地を除くギフト局にスタンプラリーを設置するものです。
スタンプラリー自体は無料ですが、2種類の台帳を有料にして、遠方の方にも楽しめるミニサイズのシールもネットで購入できるようにします。
また、GIFTアプリと連携したデジタル版も用意し、こちらは全国の離島など過疎地も含めて全て対応します。広告収入で収益を確保できる仕組みです」
会議の参加者たちが画面を見ながら頷く。
「なるほど、台帳やシールでの収益とアプリでのアクセス、両方を狙えるんですね」
「離島など過疎地も対象に入るのは、ありがたいです」
「アプリなら位置情報だから、スタッフがいなくてもその場所まで行けばいいですもんね」
「記念に残るし、いいですね!」
「それにスタンプラリーだとギフト局の営業時間しか出来ないけど、アプリなら24時間ですし」
「この企画、いいじゃないか。皆の反応も悪くない」と課長が言うと、橘の胸の奥がわずかに弾んだ。
「進めていいと思います」と部長が続け、会議室の空気が少し軽くなる。
「そうだな。これから色々振り分けて進めていこう」と他の上司も口を揃えたとき、橘は思わず息を呑んだ。
本当に承認された──。心の中でそう呟き、橘は静かに「ありがとうございます」と声に出した。胸の奥が温かくなり、これからの準備に向けて気持ちが引き締まる。
橘は少し考えて、確認する。
「スタンプラリーの台帳は、窓口で販売。シールはネットでのみ購入できる形にして、スタンプラリーのスタンプ自体は監視カメラの行き届いた場所に置いて、ご自由に押せる形で進めてよろしいでしょうか」
「うん、それで進めてみよう。まずはデザインからだね」
橘は少し安心しつつも、心臓がまだドキドキしている。
「はい。スタンプのデザインも、まずは社内公募で決めようと思います。もちろん一般公募も検討して、子どもやクリエイターの作品も取り入れられたら面白いかな、と」
「社内公募の方がまず手堅いし、話題性として一般公募も加えるのはいいですね」
「絵心がなくても、逆に味になるかもしれませんし(笑)」
橘は資料を閉じて、席を立つ。
「ありがとうございます、皆さんの意見を取り入れてさらにブラッシュアップします!」
⸻
会議が終わり、樋口と廊下で遭遇した。
「橘ちゃんお疲れ様! どうだった?」
橘は、微笑んで答える。
「先輩のおかげで……無事、企画が承認されました! これから準備を進めていきます」
樋口は、にっこり笑った。
「よかったー! これからどんどん形にしていこうね。楽しみだわ!」
貴重な時間を割いて読んでいただき、ありがとうございました!




