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第1話「届けるということ」

民営化されたギフト局が、全国の人々に新しい価値を届けるために立ち上げたSNSアプリ「GIFT」。

知らない人にも、安心して感謝や想いを届けられるこのサービスは、社員たちの工夫と信用の結晶だった。

日本ギフト局──全国の人々に手紙や荷物を届ける組織。かつては国営だったが、ある総理の方針で民営化されるとともに上場することになった。

長年、手紙や荷物を運ぶという社会インフラとしての使命を担ってきたギフト局だったが、民営化後は経営の自由度と同時に責任も増した。赤字のギフト事業を銀行事業や保険事業の利益で補うという微妙なバランスの中で運営されていた。


そのギフト局が、全国の人々に新しい価値を届けるべく立ち上げたのが、SNSアプリ「GIFT」だった。

本人確認のため、登録時には不正利用や誤登録に対するチェックも徹底されていた。

なりすまし対策として、受け取り方法は局留めか窓口受取を選べる仕組みになっており、受取時は本人確認書類の提示が必須だった。

これで郵便受けからの紛失や不正受取のリスクを抑えている。

これもギフト局ならではの長年築いてきた信用、──安心して利用してもらうための工夫だった。


GIFTの無料会員は広告を見ることで利用可能であり、有料会員は手数料こそ高いが、その分サービスの利便性が増す。

基本は投稿機能だが、住所を知らなくても相手にギフトを送れるのが特徴だった。

品物や電子チケットの手数料で僅かな利益が積み重なり、会社の運営を支える仕組みになっている。電子チケットなら配送不要で手数料収入となるため、ある意味ギフト局へのお客様からの寄付のようなものなのかもしれない。


ギフトは匿名でも送信でき、受け取り設定をオンにしているユーザーにのみ届くため、知らない人から勝手に届く心配はない。

もちろん、SNSでのつながり──リアルで会ったことがない相手にも、安心して気持ちを届けられるように設計されている。

会ったことがなくても、投稿を通して感じた想いや感謝をそっと贈ることができる。

それが、GIFTが「ただのアプリ」ではなく、人と人を繋ぐ小さなきっかけになった理由だった。


橘 光希は、ギフト局で3年目の若手社員。ギフト局に入社する前から、このサービスの利用者として楽しんでいた。

休憩室の窓際でスマートフォンを手に取り、画面をじっと見つめながら、小さくつぶやく。

「このGIFT、樋口先輩が作ったって聞いたけど、本人に直接当時のこと聞いてみたいな」


その声に、柔らかく笑う樋口の姿が目に入った。樋口 典子──社内でも評判の企画担当であり、GIFTの立ち上げに深く関わった人物だ。

「GIFT使ってくれてるんだね」


橘は、少し緊張しながらも口を開く。

「わぁ樋口先輩!……このGIFTって先輩が考えたんですよね?」


樋口は肩をすくめ、控えめに、しかし穏やかな笑顔を見せた。

「ええ、若い頃に考えたのよ。正直、こんなに普及するとは思わなかったけど…偶々だよ〜。みんなの協力があったから、ここまで広まったの」


橘は、胸の奥が小さく高鳴るのを感じた──先輩の謙虚さに尊敬の念を抱く。

「先輩、GIFTって海外の人も使えるんですか?」


樋口は、少し考えて答える。

「海外へのサービスは、まだ検討中よ。本人確認の問題もあるし、すぐには始められない。でも、日本国内なら安心して使えるの」


橘は頷く。

「なるほど…まずは国内で、みんなが安心して使えるように作られているんですね」


窓の外を眺めると、全国の人々がそれぞれの生活を営みながら、GIFTを受け取り、感謝を送る未来が広がっているように思えた。


橘はスマートフォンを手に、心の中でそっと誓う。

「私も、ここで誰かの想いを届けられる人になりたい……」


けれど、どんなに便利になっても──誰かの想いを届ける本質は、やっぱり人の温もりなのだと思った。

貴重な時間を割いて読んでいただき、ありがとうございました!

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