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神に祈るより肉を焼け。追放シスターの屋台改革!  作者: 灰猫さんきち
第4章

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40:美味しい携帯食

 夜になって割れ鍋亭に戻った私は、フィンとミア、ラテを集めて相談していた。

 どういうわけか食堂の隅にはクラウスもいて、無言で剣の手入れをしている。なんか最近この人、半分お店のスタッフみたいになってるなぁ。


「警備兵さんたちが、大変そうでね。毎日、旅するキッチンを持っていきたいけど、詰め所は何箇所もあるでしょ? ちょっと回りきれないよね」


「せっかく行っても、兵士さんが出かけているかもだしね」


 フィンも頷く。


「そこで!」


 私はばーんと手を広げた。


「新しい『携帯食料』を作って、いつでも美味しく食べてもらいましょう!」


「おー?」


 ミアが首を傾げている。


「今までのけいたい食料って、どんなの?」


「固くてカビててクッソまずい黒パンよ」


 私が鼻にしわを寄せながら言うと、フィンとミアはくすくす笑った。


「カビてるのはよくないね。その、食料ギルド? は、商品をちゃんとかんりしていないの?」


 と、フィン。ミアも続ける。


「そんなのくばって、商人のなおれ。お父さんなら、そう言う」


 ここでクラウスが口を挟んだ。


「食料ギルドは王都の食べ物を幅広く扱っている。主食の小麦は、ギルド経由でなければ手に入らない」


「よく知っていますね」


「引退した冒険者の仲間が、今はパン屋をやっている。小麦粉の価格を釣り上げられていると嘆いていた」


「へぇぇ……」


 聞けば聞くほどろくでもないな、食料ギルド。

 これは黙って待っていても、警備兵たちの食料事情の改善は望めそうにない。

 やはりここは、私が新しい携帯食料を開発しようではないか!


「それでね、みんなに相談。美味しくて力が出る携帯食料、どんなのがいいと思う?」


 私が言うと、まずフィンが手を挙げた。


「はいっ! カビたらいやだから、日持ちするのがいいです」


「うんうん。持って歩くものだから、日持ちは大事よね」


 次にミアが口を開いた。


「日持ちはだいじだけど、固すぎるのはヤダ」


「確かに。あんまり固いと食べるのに時間がかかるしね」


 今度はクラウスが言った。


「片手間に食えるものがいい。戦いが続いている合間に、口に放り込んですぐに食事を済ませられる」


「なるほど。冒険者の意見、参考になります」


 最後にラテが言う。


『魚味がいい』


「さて。それじゃあ意見をまとめると、『日持ちがする』『固すぎず食べやすい』『片手間に食べられる』ね」


『おい! 吾輩の意見を無視するな!』


「はいはい。趣味全開にしないでね」


 とはいえ、味変するのはいいアイディアだ。いくつか味を揃えておけば、飽きずに食べられるだろう。


 ううーん?

 私は前世の記憶を引っ張り出しながら、考える。

 前世の携帯食といえば、おにぎり。でもおにぎりのお米は、この国では少々割高だ。趣味で作って食べるならいいけど、たくさんいる警備兵に行き渡らせるにはコスト面で不安がある。


 次に乾パン。携帯保存食だけど、あれは特に美味しいものではなかった。

 栄養面でも頼りないし、これはないかな。


 その次に思いついたのは、栄養バランスバー。私も時間のない時にエナドリと一緒にお世話になった。

 あれ、味や種類が案外豊富で、まあまあ美味しいよね。

 悪くない……が、ああいうものが日持ちするのは、前世の高い技術で密封されたパッケージがあるからだ。

 この世界で日持ちを重視しつつ再現するとなると、固く焼き締めることになるだろう。そうなるとちょっと、食べにくいかも。


 でも、栄養バランスバーの方向性はいいと思う。もう少し工夫だ。


「あっ」


 一つ思いついて、私は声を上げた。

 みんなが私の方を見る。


「兵糧丸はどうかな!?」


「ひょうろうがん?」


 フィンとミアがコテンと首を傾げた。





 兵糧丸とは、前世日本の戦国時代の忍者たちが食べていたという携帯食料だ。

 材料は米ともち米。

 でも、蒸した小麦でも何とかなると思う。しっかり熱を通しつつ、多少の水分を残すことで日持ちと食べやすさを両立させる。

 中身に抗菌作用のある薬草や食材を混ぜれば、さらに日持ちはアップするだろう。


 私がこの話をみんなにすると、目を輝かせて聞いてもらえた。


「おもしろそう、美味しそう!」


『たこ焼きで使った魚粉を入れれば、魚味になるな』


「小さく丸める携帯食か。それは便利だ」


 方向性は決まった。次はさっそく、兵糧丸に混ぜ込む材料を考える。


「ショウガは外せないよ。おなかがぽかぽかするもん」


「ドライフルーツ、入れたい。刻んで入れればいい?」


 フィンとミアが口々に言う。

 ショウガは抗菌作用があるし、フルーツは味のバリエーションと栄養の補強になる。どちらもいい考えだ。


「森ニラはどうだ? あれは滋養強壮に効くんだろう?」


『薬草ならナタリーに聞いてこい』


 クラウスとラテも言う。

 森ニラもいいと思う。それほどクセのある味ではないから、他の食材との相性にもよるけど、細かく刻んで入れれば栄養アップになる。

 

「うん、どれもいいアイディアね。フルーツでスイーツ系の味にしたり、魚粉と森ニラでお食事系の味にしたり。楽しみになってきちゃった!」


 あとはナタリーに抗菌作用があって食べやすい味の薬草を聞いて、他の材料も集めて来よう。

 今回は前のシジミ貝みたいに、遠征してまで取ってくる食材はないはずだ。


 こうして、兵糧丸作りが始まった。




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