【第一章:塔にて眠る】 ——記憶のない魔女、目覚めと出発
月が雲の切れ間から顔を覗かせた夜。森の奥深くにひっそりと佇む古びた塔の中で、一人の若き魔女が目を覚ました。
その名はグリムドア。銀色の髪は夜の光を反射し、青と黒のローブがまるで星空のように揺れている。
彼女は自らの過去を知らなかった。ただ、十年前、塔の扉の前で目を覚ました時に胸に抱いていた一冊の本——**「銀月の書」**だけが手がかりだった。
本にはこう記されていた。
> 「月が満ちる十三夜、東の空に"鍵"が現れる。その時、真実が動き出す。」
グリムドアは、魔法に長けていた。塔の中にある魔法書や器具は、彼女が自然と扱えるように感じるものばかりだった。それでも、心の奥には常にぽっかりと空いた「なぜ私はここにいるのか」という問いが渦巻いていた。
ある夜、空に異変が起きる。満月の隣に、蒼い光の鍵のようなものが浮かび上がったのだ。
——銀月の書に記された"鍵"。それが現れたということは、運命が動き出したということ。
「……ついに、この塔を出る時が来たのかもしれない。」
グリムドアはローブの裾を翻し、長い銀髪を揺らして扉を開けた。
月光が差し込む中、彼女の瞳は決意に満ちていた。
こうして、彼女の旅が始まる。
自分の正体と、この世界の深い秘密を探るために——。