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杉。

作者: 貝原元

目を覚ますと杉の木になっていた。


それが現実だと気づくまでには、少し時間がかかった。


まず目の前に広がる風景が、いつもと違うことに気づいた。

空が遠い。いや、空が高いのだ。


そして視界に入るのは無数の緑の葉と、その隙間から差し込む光の粒。葉が揺れるたびに、光がまるで踊るように変化する。


最初は夢だと思った。

こんな現実があるはずがない。


周囲は薄青い霧に包まれ、空気はしっとりと湿り気を帯びている。

その中に混じる土と樹木の香りが鼻をくすぐった。

微かに鳥の声が聞こえ、近くでは小川がささやくように流れる音がする。


その風景は、これまで感じたことのないほど鮮やかで美しかった。


「夢に違いない。」


私はそう思い、体を起こそうとした。

しかし、どうにも動けない。

いや、動けないというよりも、そもそも体が人間のものではない。

いつもは当然のように存在する腕も脚も、そこにはなかった。


代わりに、私の「存在」は地面にしっかりと根付いている感覚があった。

それは奇妙だったが、どこかしっくりくるものでもあった。

まるで、その場所こそが自分の居場所であるかのように感じられる。根が深く地中に張り巡らされ、土や水の動きまでが肌で感じられる。


そこからさらに意識が広がり、周囲の生命の脈動が微かに伝わってくる。


「どうしてこんなことに…?」


言葉は、頭の中でこだました。

しかし、誰も答えない。ただ森の中の静けさがその問いを吸い込むだけだった。

風が葉を揺らし、その振動が私の全身に響いた。最初はただの風の音だと思ったが、やがてそれが自分の一部であることに気づいた。


葉が揺れる音や幹が風にしなる感覚が、私の声のように感じられるのだ。


足元――いや、根元には冷たい土の感触が広がっていた。それは不快なものではなく、むしろ心地よい。

根を通じて周囲の状況が分かる。

水がどこを流れているのか、地面の中の小さな生き物が動いている気配まで伝わってくる。


「これは現実なのか?」


再び問いかけるが、答えはない。

ただ、風と土と葉のざわめきが私を包み込む。その瞬間、私は自分が完全に人間ではなくなってしまったのだと理解した。


突然、頭の中に低く響く声が聞こえた。

それは重く、深く、まるで地中深くから湧き上がるような響きだった。

その声は私に向けられており、避けることも、無視することもできない圧倒的な存在感を持っていた。


「目覚めたのだな、新たな杉の木よ。」


私は驚いた。

その声には、ただの言葉以上のものが込められていた。

無数の時間を生き抜いたような重厚さ、そして森全体を統べる威厳のようなものが感じられる。

それは、他のどんな声とも異なり、私の体の中――いや、根や葉の先端にまで響いてくる。


「誰だ?一体、何が起きているんだ?」


声を出そうとしたが、声帯がないことに気づく。しかし、問いは不思議な形で相手に届いたようだった。その答えが、再び深く響いてきた。


「私はこの森の長老、クスノキだ。お前は裁きを受けるために、ここに呼ばれた。」


裁き?なぜ私が?頭の中は混乱でいっぱいだった。

これはただの悪夢だろうか。それとも現実の延長線上にあるものなのだろうか。


「裁きって何のことだ?私はただの人間だった。それがどうして杉の木なんかに…?」


言葉の端々には焦りが滲んでいた。

だが、クスノキの声には揺るぎがなかった。


「君はかつて人間だった。そしてその行いが、この森を傷つけたのだ。その罪を償うため、お前は杉の木としてここに立っている。」


私の体――いや、木の幹が震えるような気がした。

その声には怒りだけではなく、悲しみも混じっているようだった。

それが、私の心をより強く締めつけた。


「そんな覚えはない!私はただ、普通に生きていただけだ!」


自分の言葉が虚しい抵抗にしかならないのを感じていたが、それでも言わずにはいられなかった。無実であることを主張したいというより、自分自身を納得させたかったのだ。


「記憶は薄れ、忘れ去ったのだろう。しかし、森の記憶は決して消えることはない。お前が何をしたのか、それをこれから知ることになるだろう。」


その言葉とともに、目の前の風景が変わり始めた。

周囲の森が揺れ、霧が薄れていく。私の意識が遠ざかり、代わりに別の光景が広がっていく。それは私がまだ人間だった頃の記憶の断片のようだった。




 クスノキの言葉が消えるとともに、私の視界は不思議な感覚に包まれた。

まるで意識が森全体に広がるように、風景が変化していく。そこには、過去の光景が浮かび上がってきた。それは、私がまだ人間として生きていた頃の記憶だった。


まず見えたのは、建設機械が轟音を立てながら木々を薙ぎ倒す場面だった。

伐採される巨木が地面に崩れ落ちるたび、地面が震え、周囲の生き物たちが逃げ惑う姿が映し出された。


私はそれを見ながら、どこかで見覚えのある光景だと思った。そして、次の瞬間、その現場でプロジェクトの進捗状況を確認している自分の姿を見た。


「これは…違う。私じゃない。私はただ指示を出していただけで…。」


だがその言葉を否定するように、別の記憶が流れ込んできた。私はデスクに座り、予算や工程の資料を確認している。そして、その中に環境への影響を軽視した開発計画が記載されているのを見つけた瞬間だ。


「これを修正すべきじゃないか?」と誰かが提案する。

しかし、私はそれを無視し、こう言った。


「時間がないんだ。このまま進めよう。」


その短い言葉が、後にどれほどの影響を及ぼすのか、そのときの私は全く理解していなかったのだ。


記憶はさらに続く。工場の建設現場では、伐採された木々の跡地にコンクリートが流し込まれ、地面が覆い尽くされていく。小川が塞がれ、水が溢れて周囲の土地を浸食している。工事車両が次々と土壌を削り取り、森の中の静けさを破壊していく様子が鮮明に映し出される。


「これが…私の選択の結果だというのか?」


心の中に、重苦しい後悔が生まれる。それでもなお、私はどこかで「私一人の責任ではない」と思いたかった。だが、記憶はそれを許してはくれなかった。


次に見えたのは、建設が終わった後の工場周辺の風景だった。

そこには、かつての緑豊かな森の面影はなかった。代わりに、乾燥した地面とわずかに残る木の切り株が点在しているだけだった。

空気は埃っぽく、鳥の声も動物たちの気配も消えていた。


そして、最後に映し出されたのは、森そのものの記憶だった。

木々の根を伝う声、動物たちの静かな嘆き、小川の流れが途絶えた瞬間の悲しみ。それらが森全体の怒りと哀しみとなり、私を包み込んだ。


「これがお前の選択がもたらした結果だ。」


クスノキの声が再び響いた。

それは冷たく、容赦のない響きだったが、どこかで私に期待を込めているようにも感じられた。




 記憶が途切れると同時に、私の意識は再び森の中へと引き戻された。

しかし、そこはただの静かな森ではなかった。周囲の木々が私を取り囲み、風に揺れる葉がざわめきを立てている。だが、それはただの風音ではなく、明確な意志を持った木々の声そのものだった。


「これから森の裁判を始める。」


クスノキの声が響き渡ると、森全体が一斉に動き出したように感じた。葉が揺れ、枝がきしむ音が私を取り囲む。

それは威圧的でありながらも、どこか静かな威厳を感じさせた。まるで私の行動一つひとつが、今この場で裁かれるために待っているのだと告げられているようだった。


「お前の行動がこの森に何をもたらしたか、それを今一度問い直す。お前には選択の機会が与えられる。」


選択。私はその言葉に違和感を覚えた。

この状況で、一体どんな選択をしろというのだろう?


「森を守るために木として生き続けるか、それとも人間として戻り、再び同じ過ちを繰り返すか――そのどちらかを選ぶがよい。」


木々のざわめきが一層激しくなり、それがまるで私の心臓に直接響いてくるようだった。私は思わず反論した。


「どうして私が…?私は、ただ普通に仕事をしていただけだ!これは私一人の責任じゃない!」


その言葉に、一本の若い木が鋭い声をあげた。


「人間たちは皆そう言う。だが、君が工場の建設を進める選択をしたのは事実だ。たと

え直接の手を汚していなくとも、責任はある。」


私は返す言葉を失った。確かに、記憶の中で見たのは自分の選択の結果だった。だが、その事実を認めるには重すぎた。私は、何とか自分を正当化したい気持ちでいっぱいだった。


「でも、あれは仕事だったんだ。私には、あれが正しい選択だと思えたんだ…」

すると、別の老木の声が響いた。


「正しいかどうかを決めるのは、お前ではない。我々は、お前が何をしたのか、何をしなかったのか、そしてこれから何をするのかを見極める。」


その言葉に、私は息を飲んだ。この裁判は、過去の責任だけでなく、未来の行動についても問われているのだと悟った。


「木として永遠にここに立つことで、森を直接見守る選択もある。それは孤独だが、森の一部として新たな命を守る道だ。しかし、もし人間に戻る道を選ぶなら、森を再び傷つけないだけではなく、積極的に守る行動を取らねばならない。それには大きな犠牲と覚悟が伴うだろう。」


その瞬間、森全体が静まり返った。

葉の揺れる音さえも止まり、私の心臓の鼓動だけが響いているように感じられた。


「選べ。どちらの道を行くのか。」


私は重圧に押しつぶされそうになりながらも、どうすればいいのかを必死で考えた。

木として生きる覚悟を持つのか、それとも人間として責任を果たすのか。

どちらを選ぶにせよ、それが人生を根本から変える決断になるのは明白だった。


「選べ。」



クスノキの声が再び重く響く。

周囲の木々が静まり返り、空気そのものが凍りついたように感じられる。この場にいるすべての存在が、私の選択を見守っているのだ。

私は深く息を吸おうとしたが、木としての身体ではそれもままならない。


ただ、心の中で自問自答を繰り返した。


「木として永遠にここに立つ」か、「人間に戻り責任を果たす」か。


そのどちらを選ぶにせよ、簡単な道ではない。


「木として生きる」という選択が頭をよぎる。


もし私が木のままでいるなら、この森の一部となり、直接その命を守り続けることができるだろう。風や雨、土の中の生命たちを感じながら、森と共に生きる。それは一見、静かで平和な選択のように思える。


しかし、その裏には孤独と永遠という試練が隠されている。

私は他の木々と繋がりながらも、人間としての感覚や記憶を完全に失うことになるだろう。それが果たして「生きる」と言えるのだろうか?


「だが、人間に戻る道は、それ以上に険しいのではないか?」


その考えが私を襲う。

人間として戻るということは、この森を再生する責任を背負うということだ。

私は森を守るために行動を起こさなければならない。それには、現実社会での困難や挫折、妨害が伴うだろう。さらに、再び同じ過ちを犯してしまう可能性もある。

それでも、森の声は私に問い続ける。


「お前は人間として、本当に森を守る覚悟があるのか?」


私の心の中で葛藤が渦巻く。

木々のざわめきが少しずつ再び響き始めた。

まるで私の迷いを感じ取り、急かすように圧力をかけてくるかのようだった。

葉が揺れ、枝がきしむ音が耳を満たし、木々の声が心に直接響いてくる。


「木として生きるなら、森はお前を受け入れるだろう。しかし、人間に戻るなら、森が許すのは行動の結果のみだ。その道は簡単ではない。」


クスノキの言葉は厳しいが、それには希望も込められていた。

この森を救うための力が私に残されていると、彼らは信じているのだろうか。


私は目を閉じた。

これまでの記憶が頭の中を駆け巡る。

工場の建設現場、伐採される木々、小川を失った動物たち――その光景が心を締めつける。同時に、杉の木として目覚めたときに感じた森の静けさ、命の脈動が蘇る。

それは、森が私に託した最後の希望のように思えた。


「分かった。私は…」


一瞬の静寂が訪れる。そして、私は意を決して答えた。


「人間として戻る。そして、森を守るために生きる。」


その言葉が響くと、森全体がざわめき始めた。葉が揺れ、枝がきしむ音が合わさり、まるで森全体が深く息をついたようだった。それは同意のようにも、警告のようにも聞こえた。


「良いだろう。だが覚えておけ。お前に与えられた時間は限られている。その間に森を救うための行動を示せなければ、二度とこの選択は許されない。」


クスノキの声が厳かに響き、私の中に新たな重責が刻まれた。

その瞬間、視界が真っ白に染まり、意識が再び遠のいていく。森のざわめきが次第に遠ざかり、代わりに光と音が私を包み込む。人間としての感覚が徐々に戻ってくるのを感じながら、私は深い決意を胸に抱いていた。




 目を覚ますと、私は再び人間の身体を取り戻していた。

手足を動かす感覚、風を肌で感じる感触、目に映る世界の鮮やかさ。それらが、一度失っていたことに気づかされるほど新鮮だった。しかし、胸の奥には言葉にならない重圧がのしかかっていた。

クスノキの言葉が耳に残り続けている。


「森を救うための行動を示せ。」


私はすぐに行動を始めた。まずは地元の住民に話を聞くことから着手した。森を守ることの重要性を伝えるために、訪問や集会を重ね、住民たちとの対話を試みた。人々は最初、私の話に懐疑的だった。


「森なんてほっといても生きていけるじゃないか。そんなものより、生活が大事だよ。」

「確かに森は大事だけど、私たちには関係ない話だ。」


そういった言葉が返ってくるたびに、胸が痛んだ。

しかし、私は森の裁判で感じた重さを思い出し、諦めることはしなかった。


「この森がなくなれば、洪水や土砂崩れが増えるかもしれません。川が枯れ、水が汚れれば私たちの生活にも影響が出ます。この森を守ることは、私たち自身を守ることでもあるんです。」


そう語るたびに、少しずつではあるが、共感を示してくれる人々が現れた。特に若い世代の中には、私の話を熱心に聞き、行動に移そうとする人たちもいた。


 次に、企業や行政への働きかけを始めた。森を守るためには、大規模な支援が必要だった。しかし、そこで待っていたのは、思っていた以上に大きな壁だった。


「開発計画を変更するなんて現実的じゃない。利益を損なうことはできない。」

「環境保護は理想論だ。我々にはそんな余裕はない。」


何度も会議を重ねるたびに、その言葉が突き刺さった。それでも、私はクスノキとの約束を思い出し、折れるわけにはいかなかった。私は相手に訴え続けた。


「利益は大事です。しかし、それが短期的なものに過ぎないとしたらどうでしょう?この森を守ることは、地域全体の未来を守ることにつながります。それが結果的に長期的な価値を生むのです。」


やがて、いくつかの企業が私の提案に耳を傾け始めた。

ある建設会社の若い担当者はこう言った。


「僕も、この森を守りたいと思います。ですが、上層部にどう説明すれば説得力がありますか?」


私はその言葉に勇気を得て、さらに具体的な行動計画を練り直した。そして、住民や企業、行政を巻き込んだ「森の再生プロジェクト」を立ち上げることに成功した。



 再生プロジェクトの第一歩として、動物たちの保護区を設けることが決まった。伐採されたエリアには、新たな植樹が行われ、川の浄化作業も始まった。

最初は小さな取り組みだったが、その効果が目に見えて現れると、人々の意識も変わっていった。


「こんなに早く川の水がきれいになるなんて思わなかった。」

「植えた木が少しずつ成長していくのを見ると、希望が湧いてきますね。」


住民たちは変化を実感し始めた。子どもたちが植樹イベントに参加し、企業が資金援助を申し出るようになった。森の未来を守るための小さな輪が、少しずつ広がっていくのを感じた。




 それでも道のりは険しい。活動には多くの資金と労力が必要で、時には挫折しそうになることもあった。それでも、森の声が私を支えた。

木々がざわめき、葉が風に揺れる音が、心の中でこう語りかけてくる。


「進め。お前の選択はまだ見届けられていない。」


その言葉を胸に、私は森を守るための道を歩み続けた。

森は確かに私を見守っている。

そして、私がその期待に応え続ける限り、森はその命を繋いでいくのだと信じていた。




 数年が経ち、私たちの取り組みの成果が少しずつ現れ始めた。

かつて荒れ果てていた土地には、新たに植えられた苗木が青々とした葉を茂らせている。初めは小さな芽だった木々が、今ではしっかりと根を張り、森の新しい生命の象徴となっていた。


川の水は透明度を取り戻し、小魚たちがその中で泳ぐ姿が見られるようになった。

かつて人の手によって奪われた命が、再びこの土地に帰ってきたのだ。

鳥たちが枝から枝へと飛び交い、彼らのさえずりが森全体に響き渡る。

その音は、かつての静寂とは異なり、新たな命の息吹そのものだった。


住民たちもこの変化を目の当たりにして驚きを隠せなかった。

森の再生を手伝った人々の中には、最初はただ興味本位だった者もいたが、今では森の重要性を深く理解し、その保護活動に積極的に参加するようになっていた。


ある日、森の植樹イベントで一人の子どもが私に駆け寄ってきた。

その子は、かつて私が講演で話をした学校の生徒だった。


「先生、この木、僕が植えたんですよ!」



彼は小さな胸を張りながら誇らしげに話した。

苗木のそばに立つその姿に、私はかつての自分を重ねた。

希望を持ち、未来を見据える姿。その無垢な決意が、私の心を温めた。




 再生プロジェクトが一定の成果を上げたころ、私は再びあの森を訪れることにした。かつて私が杉の木として目覚め、裁かれた場所だ。その場所に立つと、風がそよぎ、葉がざわめく音が耳元に響いた。それはまるで、私を迎えるかのような音だった。


あの杉の木はそこに立ち続けていた。

幹は以前よりも太く、枝葉は一層生い茂り、存在感を放っていた。

その姿を見ていると、胸の奥が熱くなった。私はそっと木に手を触れた。冷たさと温かさが混じり合ったその感触が、私を森全体と繋げているように感じられた。


「ありがとう。」



自然とその言葉が口をついて出た。

私を裁き、選択を迫り、それでもなお見守ってくれた存在に感謝の気持ちを伝えずにはいられなかった。


その瞬間、風が強く吹き抜け、葉がざわめき、大きな音を立てた。それは答えのようにも聞こえたし、私をさらに励ます声のようにも思えた。森全体が私の努力を認め、これからも共に歩んでいこうとしているようだった。


森の再生は、一つのゴールではなく、新たな始まりだった。

この活動を通じて、私は他の地域や国々の森を救うための取り組みにも参加するようになった。

世界中には、この森と同じように傷つき、再生を待つ森が無数に存在している。

それを知ったとき、私はさらに多くの人々を巻き込む必要性を強く感じた。


地元だけでなく、遠く離れた土地でも講演を行い、森を守る重要性を訴えた。話を聞いた人々の中には、積極的に行動を起こし始める者もいれば、静かに耳を傾けるだけの者もいた。それでも、種を蒔くことが未来の変化につながると信じ、私は話し続けた。


森は、かつての姿を取り戻しつつある。しかし、それは決して私一人の努力ではなかった。多くの人々が関わり、森を再生しようとしたその行動の積み重ねが、この結果を生んだのだ。


「森は人間に何を与えるかではなく、人間が森に何を返すかだ。」


この言葉を胸に、私は今でも活動を続けている。


そして、あの杉の木が見守る森を、未来へと繋げるための旅路を歩み続けている。

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