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10-3

休日更新だぁ!

なんと橘が連れて来たのは、まさに今話していた警備隊のトップだった。


「私も代表の護衛として一緒に№3に行っていたのだが、こっちでよからぬことが起こっていると情報が入ってね。代表の勧めもあって橘君と戻って来たというわけだ。すでに大体の話は聞いている。」


 鹿島がここにいる訳を話し、すでにこっちの事も知っているという。それをきいた十一番隊の面々の表情が明るくなる。警備隊のトップが頭を下げたのだ。つまり非を認めている。それならばすぐにでもカナタの逮捕は間違いであるとして釈放される事だろう。

 みんながそう思った。しかしその後に鹿島が話したことはその期待を打ち消す物だった。


「あー……私の力で問題が解決すると思っているのなら、重ねて申し訳ない。まず剣崎くんはそう簡単に釈放されない。なぜかと言うと、真偽はどうであれ正規のやり方で訴えられているから、警備隊としては調べないわけにはいかないからだ。今回の件は、六番隊の獅童くんが守備隊の長野さんを通して、剣崎君に殺害されそうになったと訴えた事が始まりとなっている。」


 この鹿島の言葉に、十一番隊のそれぞれから文句があがるが、鹿島がそれをいったん抑える。


「不満はわかる。しかしその時点で現実に獅童君は片腕を失い、全身にひどいけがを負っていたと資料に残っていた。その獅童君が剣崎君にやられたと言うのだ。調べないわけにはいかないが、当の剣崎君は遠征で不在。それで戻ってきてからとなった……」


 ここで鹿島は一旦言いよどむ。一瞬の間を置いて、やや言いにくそうに話を続ける。


「ここからが、わが警備隊の失態でもあるのだが、本来なら片方からの訴えだけで罪が成立することはない。現行犯以外ではね?本来なら剣崎君が帰還した後、任意で同行を求める。もちろんその時点で怪しい素振りをしたり、逃げようとすれば確保もありえるだろうが……今回はそういう訳でもなく、いきなり確保・連行している。これではまるで犯罪者の扱いだ。どうも警備隊の中に長野くんの息のかかった者がいるようで、指令の内容に改ざんがあったそうだ。いまでも反逆の恐れがあると思われているようだ……」


「なら!それをあなたが行って違うって言えば!」


 それまでは黙って聞いていたゆずだったが、さすがにこらえきれず鹿島に詰め寄る。

 しかし、そんなゆずに鹿島は黙って首を振るばかりだ。


「それはできない。私はここにはいない事になっている。黙って戻ってきたことが明るみになれば服務違反で私も罰せられるだろう。仮に代表の意向で通したとしても代表の手足と周りに思われている剣崎君の助けになると思うかい?私が何を言った所で、代表の差し金だと言われるだけだ。」


「じゃあ、よくわからないけど……あなたはカナタ君の助けにはならないって事?」


 規律や派閥などの力関係にうといゆずにはいまいちわからない内容だったが、言っている事はだいたいわかったのか、鹿島にストレートに聞く。

それには鹿島ではなく、橘が答えた。


「そうではありません。鹿島隊長は確かに公に動くことはできませんが、警備隊内部の情報やこういった場合の通常の流れなどを聞くことができます。また相手の罪が明らかになれば警備隊権限で動けるでしょう。」


 なるべくわかりやすいように、ゆっくりと橘が説明することでようやくゆずも納得したようだ。その後ろで、スバルがなるほど……とか呟いていたがそこには触れないでおこうと思ったようだ。


 警備隊権限というのは、警備隊は都市の治安維持、犯罪の摘発を主な活動としているので治安を脅かす行為、もしくは犯罪が明らかになった場合はすべてに優先して行動できるという特権がある。いまは獅童や長野がが嘘をついてカナタを陥れている事しか分かっていないが、何のためにそうしたのか、それが警備隊特権にふれるような事であれば鹿島も大手を振って行動できるという事だ。


「でも、何もわかってないぜ。考えたくないけど、単に手柄争いと個人的な怨恨の延長の可能性だって……」


「いえ、さすがにそれだけでここまで都市を騒がせて大掛かりな事はしないでしょう。今回の事で万が一嘘が露呈した場合、さすがの長野も獅童も都市に残る事はできなくなるでしょう。リスクが大きすぎます。」


 スバルが言う事は橘はそう言って否定した。


「そうだね、警備隊まで動かしてるからね。下手したら都市を追放……そのリスクを背負ってまでやる事?」


 ダイゴが考えるが、今の段階では何も分からない。


 みんなが首をひねっている中、リビングの端で一人俯いている者がいた。その隣に近づくと肩に手を置く。


「力になりたいんじゃろ?やっておあげなさい。」


 そう話しているのは、龍と翠蓮だった。龍が優しい目をして翠蓮に話しかける。


「彼らの事が気になるんじゃろ?そなたにしては珍しく肩入れしておったしな。」


「しかし先生……私は」


 そう言われ、翠蓮は顔を上げるも躊躇している様子だ。


「なに、都市の中は安全じゃろうし、そなた達ならそう長くはかからんじゃろ?儂はしばらくここで厄介になろうかの。お願いできるかな?」


 最後はゆずの方を見て龍が言う。なんのことかよくわからないが、ゆずは頷く。とりあえずここまで連れてきて放り出すような真似はしたくない。カナタでもきっとそうしたはずだ。


「ほれ、儂はゆっくりしておる。落ち着くまでにしばらくは色々と迷惑をかけるじゃろうし、白蓮などはカナタ君の所に入隊する。ここで役に立つところを見せておいて損はないぞ?」


 そう言う龍はどこか嬉しそうな雰囲気を出しながら、翠蓮へ語り掛けている。それに後押しされたのか、翠蓮はやおら立ち上がると、リビングの中央にいるゆず達の所へ行くと白蓮の隣に立った。


「姉さん」


 見上げる白蓮が嬉しそうに肩に置かれた翠蓮の手に自らの手を重ねる。


「私たちにお任せ願えないでしょうか。これでも潜入・情報の収集は得意としております。白蓮と……妹と二人ならどのような困難な状況からでも情報を拾ってまいりましょう」


 凛々しい顔をした翠蓮はゆず達の顔を見回してそう言い放った。


「それは……助かると、思う。ええと……みんなはどう思う?」


 主にゆずに向かって翠蓮は話していたのだが、ゆずは少し困った顔になり判断をみんなに振った。


「翠蓮さんならきっと間違いないだろうけど……それって長野や獅童の事を調べるって事だろ?危険じゃないか?」


 スバルは翠蓮の事を信用しつつも、危険ではと危惧しているようだ。


「ここまでの事をまとめると、狙いは長野、獅童……それからあの覆面の集団、かと。」


 真剣な顔つきで翠蓮さんは複数の名を挙げる。長野、獅童はみんなも同意見だったが、覆面集団の事は考えになかった。それほど脅威でもなかったからか頭から抜けてしまっていた。


「あの覆面の集団は、三番隊のおかげで予定通りの事ができなかっただけかと。少し気になるのです。」


 「姉さんの言う通りだとぉ、思います~。ちぐはぐな感じなんですよねぇ」


 白蓮も覆面達が気になるらしい。


「もしできるなら、お願いしたほうがいいと思う。翠蓮さん達は実力者だし、何より僕たちは相手にばれないように何かを調べる技術なんてないし……可能な限りの情報を集めておく必要はあるんじゃないかな?きっと何かまだ隠してると思う」


 ダイゴは全面的に賛成の様だ。

 それらを聞きながら、ゆずは自分はやはりリーダー的な事は出来ないと実感した。自分がなにかするのはともかく、自分の判断で人の行動を決める事にとても迷いが出る。

 素早い決断ができないのはリーダーとしては致命的な欠点であるとゆずは思う。実際はそれを補う存在がいれば決してそんな事はないのだが、ゆずの中でリーダーと言えばカナタであり、カナタのようにできない自分はリーダーとして適格ではないとそう思ってしまう。


それでも今はカナタから託された役目を全うしないといけない。その思いだけでなんとか決断する。


「分かった。翠蓮、白蓮。お願いする。どうかカナタ君を救うのに手を貸してほしい」


 そう言ってゆずは自分が思っているよりも、必死な感じで頭を下げ二人にそう言った。

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