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【BIO DEFENSE】 ~終わった世界に作られた都市~  作者: こばん
2-1.再会

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11-1 マザーと宿儺

 駐屯地からまた宿儺が進んだ跡を追いかけて、二日ほどが過ぎた。


 相変わらず宿儺が通った後は人も感染者も少ないので、かなりの速度で進めたと思う。

 その証拠に……


「いた……。距離は約1km。宿儺が感染者と人間の集団と戦闘している」


 岡山県と広島県の境付近で、その姿を確認する事ができた。

 宿儺は本能で人を襲ってるのかはわからないが、時折ルートを変えながら進んでいて、誰かが生活していたと思われる建物をいくつも破壊しながら進んでいた。

 少し前から、進みやすいからか山陽新幹線のルート上を西進していたのだが、またルートを変えて市街地を進み出した所だ。


「感染者と人間とって、入り乱れてるってことか?」


 支給品の双眼鏡では、そこまで先の事ははっきり見えないので、ヘカートの高倍率スコープを覗くゆずに聞くしかない。


「ん、多分人間が立て籠っている建物を宿儺が襲って、その音で感染者が引き寄せられたって感じ。人間の集団は壊れた建物から感染者を近づけないようにしている感じ。ただ、宿儺は感染者も攻撃しているみたいだから、双方から攻撃されてるみたい……」


 ゆずが声のトーンを落として説明すると、聞いていた喰代博士が唸った。


「うーん?感染者同士は争わないというのが定説なんだけどね?もしかして、その襲ってる感染者はコロニーの一部なのかもしれない」


 その言葉に、嫌そうな顔をしたスバルがこぼした。


「マジかよ……それってつまり、マザーがいるってこと?」


「あくまで可能性だけどね。でも可能性は高いと思う。これまで感染者同士が意味なく争うという事はなかったからね。例外の可能性としては……その宿儺とやらに人格が残っていて、意識して感染者を攻撃しているという事も……いや、わからないね。情報が少なすぎる。ここで論じるべきじゃないと思うよ」


 博士の意見にカナタも頷いた。多分、宿儺を相手する場合ハルカやアスカ、花音は戦力にならない可能性が高い。花音は彼女達を止めると言っていたが、そう簡単に割り切れるものではないし、初めて宿儺と遭遇した時、僅かだが感情が垣間見えた気がする。

 もし、宿儺に生前の記憶や感情が残っているとすれば、ハルカ達は攻撃を躊躇するだろう。


 カナタはしばし黙考する。


 腕を組んで考えるカナタを気遣い、誰も声を出そうとしないなか、ようやくカナタが口を開いた。


「理想は、マザーがいるならマザーを遠ざけて、人間の集団が敵が味方か確認する。味方なら協力するし、敵なら宿儺のまとになってもらおう。その上で宿儺に接触して彼女を止める。これがベストだと思うが……」


 そう言って仲間達の顔をぐるっと見たカナタは反対意見が出ない事を確認して先を続けた。


「でもマザーがいるなら、マザーも確認しないといけない。もし明石大橋にいたような……あんなのがいたら手を出す事が自殺行為だからな。」


「じゃあ、先にマザーを確認する?」


 ゆずが少し面倒そうに聞いてくる。気持ちはわかるが……


「面倒だがそうした方がいいと思う」


カナタがそう言ったところで、これまで黙ってたハルカが声をあげた。


「ごめん……カナタ。私はいるかいないかわからないマザーを探すより、一刻も早く美鈴ちゃんと絢香ちゃんの所に行きたい……あの子達、特に美鈴ちゃんは感染しない体質なのよ?きっと今も苦しんでる……その、リーダーとして安全に行きたいカナタの気持ちはわかるんだけど……」


 ハルカはそう言うと唇を噛み締めて俯いた。隣でアスカがハルカを慰めるように手を伸ばしているが、アスカもハルカと同じ意見なのだろう。


「ハルカが言う事も間違ってるわけじゃない。俺だって何か心当たりがあって言ってるわけじゃない。現状の情報による消去法でしかない。いっそ2チームに分けるか……」


 カナタが腕を組んで考え出す。


「大丈夫かなぁ……それほど層が厚いチームってわけでもないのに」


 ダイゴは不安を隠そうともしないでそう言った。


「確かにそうだが、宿儺……美鈴ちゃん達の事が気になって、不覚をとるような事も、考えられないわけじゃない。それならいっそ気にかかる方を優先すべきだ……と思う。」


 そこでしりつぼみになるのは、カナタとて自信があって言ってるわけじゃないからだ。


「じゃあまず組み分けしてみようぜ?ハルカチームがいいい奴!」


 スバルはまるでドッジボールが何かをする子供の組み分けをするみたいに言い出した。

 それに苦笑しながら花音、アスカ、由良、スバル、が集まる。

 カナタの元にはダイゴ、ヒナタ、ゆずが残った。そして喰代博士は宿儺に興味があるらしく夏芽を引っ張ってハルカの元に、リョータはヒナタに懐いているので、ヒナタについてくる。


「見事に半分に別れたな。ゆず、インカムは全部でいくつある?」


「ちょっと待って……えーと、ちゃんと動くのは八個。このインカムは短距離送受信タイプだから、たぶんそれぞれのグループ内しか通信は出来ないと思う」


 そう言ってゆずはインカムを全部出す。と、言っても残りは二個だが……それも四個ずつわける。すなわち、カナタ、ヒナタ、ゆず、ダイゴがつけて、ハルカ、スバル、花音、由良がつける。


「いいの?カナタ……」


「まぁ、何が正解かはわからない。やってみよう。ダメそうなら通信が届くとこまでなんとか逃げてくる。それでいいか?」


 カナタがそういうと、ハルカは小さくありがとうと言ってほほえんだ。


 決まった以上、即行動しなければならない。

 武器弾薬、食料などの物資もなるべく均等に分ける。若干一名せっかく増えた弾薬を持っていく由良を、恨めしそうに見る「妖怪5.56喰らい」がいたが、カナタが抑えている間に弾薬ケースにしまってもらった。


「よし、ここから二手に別れる。各自一層の安全確認を怠らないように。移動する!」


 カナタの号令の元、十一番隊は二手に分かれて行動を開始した。

 一組は宿儺が残した破壊の跡をこのまま追って……一組は感染者のコロニーらしき集団を確認できる場所を探しに別々の方向へ歩き出す。



「少し意外……」


 歩いていると不意にゆずがそう言い出した。


「どうしたんだいゆずちゃん」


 それに答えたのはすぐ後ろにいたダイゴ。


「花音はこっちの組に来ると思ってた。」


 それを聞いたカナタが不思議そうな顔をする。


「そりゃ、花音のお友達だったんだろ?美鈴と絢香って子達は。こっちのグループにはたいして目的もないだろうし、向こうに行くのが自然なんじゃないか?」


 そう言ったカナタに、ゆずはじとりとした目線を送る。


「……カナタくんはニブちん。これだからカナタくんは……」


「これだからお兄ちゃんは……」


 ゆずだけではなく、ヒナタにまで呆れたような物言いをされて、カナタは不満そうな顔をする。


「何でだよ……」


 カナタはそう言いながら、ダイゴを見る。ダイゴも意味がわからないのか、それともあえて言わないのか。両手を広げて苦笑しただけだった。


 

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