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【BIO DEFENSE】 ~終わった世界に作られた都市~  作者: こばん
2-1.再会

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4-7

カナタ達はしばらくその場に佇み、見るともなしに景色を見ていた。もうゆず達がいる所は薄暗くなってはっきりとは見えない。

バリケードの向こうでは何か言い合っているようだ。


「きっとこれまでに同じようなことを言われて襲われたんでしょうね……悪い人には見えなかったし」


ハルカが表情を険しくさせながらそう言った。


「……もしかしたら入れてくれないかもな。過去にそんな事があったのなら、そう簡単には信用できないだろうしな」


カナタもそれに頷いてそう言うと、花音が済まなそうに言った。


「ごめんなさい……私がいても信用してもらえなかった。何か信用してもらえるような事を言おうと思ってたんだけど、いざその時になったら何も言葉が出てこなくて……」


そう言いだした花音をハルカがそっと抱き寄せる。


「花音ちゃんは悪くないわ。悪いこと考える人たちが先にあの人たちと会ってただけよ。それがなかったらきっと今頃入れてくれてたわ」


ハルカがそう言って花音をなぐさめようとするが、花音の表情は晴れない。

カナタも気にしないように話しかけようとしたところで、バリケードの方から違うくぐもったような男の声がした。そちらを見て思わず固まり絶句してしまう。


先ほどの若者と同じように車のボンネットの上に立っている男は、片足を負傷しているのか松葉杖をついている。それだけではない、片腕も肘の先からなくなっているのか、包帯でぐるぐる巻きにしてあり出血の跡も生々しく残っている。声がくぐもって聞こえたのは頭から顔にかけても大けがでもしたのか、知り合いが見ても誰だか分からないだろうと思うほどに包帯が巻いてあり、少しだけ見えている髪の毛の色ぐらいしか分からない状態だった。


「お前たち、№都市から来たというのは本当か?」


カナタ達が声も出せないでいると男は辛そうに身をよじりながらそう聞いてきた。


「あ、ああそうだ。№4から来た。都市の事が分かるのか?」


驚きを隠せないままカナタは思わずそう聞き返した。男はあいかわらず辛そうに動いて、車のボンネットに腰かけるようにしてカナタ達を見た。


「ふ……知ってるも何も、俺も№4から来たんだからな。お前たちは守備隊なのか?女は隊服を着ているが……小さい子供なんぞこんなところに連れてきて……危険だとは思わなかったのか」


責めるような口調で男は言う。その言い方から悪い人間ではないと思えた。ハルカや花音の事を案じているのが伝わって来たからだ。


そこでカナタはここに来たわけを話し出した。目の前の男が本当に№4の人間で、それならなぜこんなところにいるのか。などの疑問は浮かんだが、悪い人間ではないと感じた直感を信じて。



「なるほど……都市を襲おうとする勢力があるのか……それを偵察にいく途中というわけだな。」


「そう言う事です。もうすぐ日が落ちるので隅の方でも貸していただいて安全を確保したかったんです。」


そこまでカナタが言うと、男は少しだけ考えて後ろの方、車の影に控えていたさっきの若者に二言三言何かを告げる。そしてカナタ達に向き直ると、首でPAの方に来るようなしぐさをしながら言った。


「後方にいる仲間たちを呼んで中に入れ。武器も食料も提供はできないが、安全は分けてやろう。ただし、見張りを手伝う事と奴らが近づいてきたら排除するのに手を貸す事。条件はそれだけだ。あとは……お前が仲間の代表か?」


カナタを見ながら包帯の男がそう聞いてくるので、黙って頷くと男は「あとで話がある」と、それだけを言って最初に応対した若者に手を貸してもらいながらバリケードの向こうに姿を消した。


「とりあえずよかった……でいいのかな?ハルカ、花音ちゃんについていてくれ。俺はゆずに合図を出す」


そう言って、仲間たちがいるであろう場所からよく見えると思われる位置に移動すると、交渉は成功という合図を出す。ゆずがずっとこっちを見てくれているはずだから仲間たちはこれでこっちに移動してくるはずだ。


予定通りカナタの合図を確認したゆずがライトを点滅させて了解の合図をしてきたのを見て、ハルカ達の所まで戻った。


「みんなが来たら声をかけてくれって。そこで待ってるみたい」


カナタが戻るとハルカがそう言った。そこ、と首と目線で示したバリケードの先にはさっきの若者だろう男が少し離れて立っている。


「なんにしても夜の闇の中進む羽目にならなくてよかったよ。あれ、本気で神経が参ってしまうからなぁ」


「カナタさんでもそうなっちゃうんですか?」


呟いたカナタの言葉に花音が反応する。とりあえず結果オーライだったので、だいぶ緊張がなくなっている。


「俺でもって所が引っかかるけど……まぁそうだね。パニックの前だと何かしら明かりがあって、№都市もライフラインは充実しつつあるから最近は真っ暗って事はほとんどないけどさ。誰も人のいない所とか本当に真っ暗なんだよ。今日みたいに雲が多い避難か月や星の明かりすらない。自分の意志で動かした手の先も見えないくらいだから……んで、そんな闇の中にいるとさ、だんだん自分が闇の中に溶け込んでいくような錯覚に陥ってきて、歩いていても進んでいるのかも分からなくなってくる。そのうち上下の感覚もあいまいになってくるんだ。そのうえ今にも闇の中から感染者が現れてくるような気がしてきて……あの時は怖かったなぁ」


「ふふん。怖すぎてカナタ君が手をつないでくれって言ってきたことは内緒」


いつからそこにいて話を聞いていたのか……いつの間にか近くまで来ていたゆずがカナタの話の後を続けた。


「おい……内緒って意味わかってるか?スムーズな流れで暴露するんじゃないよ」


あっさりと秘密をばらされたカナタが半目で睨むが、ゆずは小さく舌をだしたまま顔を背けている。


「へえー。お兄ちゃんそんな事をゆずちゃんに言ったんだ!普通は逆じゃない?」


ニヤニヤしながらヒナタが寄ってくる。アスカや由良もあえて視線を合わせないようにしている所を見るとカナタの秘密はもう公然のものとなってしまったようだ。


「いや、ほんとに怖いんだって!そんでおかしいのはこいつの方なんだよ。平気な顔してスタスタ歩いていたんだから!」


ゆずに軽くヘッドロックをかけながら指を突き付けてカナタは言うが、ゆずは平然としているし見ればスバルやダイゴも笑いを隠しきれていない。


「お前ら、一度体験してみろって!マジで怖いんだからな」


悔し気にカナタがそう言ったが、花音ですら口を押さえてヒナタと笑い合っている。どうやらここに味方はいないようだ。カナタはがっくりと肩を落として、仲間が揃った事を待ってくれていた若者に伝えようとしたが、その若者にさえスッと目を逸らされ、地面に崩れ落ちそうになるのをこらえるので精いっぱいだった。

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