表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【BIO DEFENSE】 ~終わった世界に作られた都市~  作者: こばん
2-1.再会

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

238/354

3-1 本土へ

「アタシが言うのもなんだが……気を付けていくんだよ。」


申し訳なさそうな顔で、そう言うのは見送りに来た松柴だ。わざわざ四国と淡路島を結んでいる大鳴門橋にところまで来ている。

カナタ達一行は例のグループのいる岡山県とをつなぐ瀬戸大橋ではなく、淡路島から明石海峡大橋を通って神戸に渡ってそこから岡山県の方に付近の探索をしながら向かう計画をした。自動車などの交通機関が死滅した今、結構な遠回りになるが監視のしやすい橋を渡って堂々と行くのはさすがにまずいだろうという話になったのだ。こちらがしているように向こうも見張りぐらい立てているだろう。


さすがに四国にかかる三つの橋すべてを監視・警戒はむずかしいだろう。夏芽が見た限りでもそこまで大きいグループではなかったらしいし、今の状態でそんなに大きいグループを維持するにはかなりの規模の安全な場所と物資を補充できる環境が必要だ。

それらを鑑みて、カナタ達は№4が警戒を担当していた大鳴門橋のほうから進行することにしたのだ。


メンバーはカナタ、ゆず、ヒナタと由良とアスカの新隊員を加えた現十一番隊、それから元十一番隊として今は七番隊の隊長になっているダイゴ、八番隊の隊長になっているスバルが特例として参加している。十一番隊の力と功績をよく思わない連中がいる事がどうにななったわけではないのだが、№4どころか№都市全体の危機であるかもしれない。と、いって強行したらしい。さらに六番隊からハルカも参加してくれている。

ここまではいいのだが、他にも同行する人物がいた。


「なあ、本州の方はどうなっているのか全く未知の状態なんだ。はっきり言ってどれくらい危険なのかすらわかっていない。まだ間に合うからおとなしく帰らない?」


カナタがそう言って話しかけたのは一行の中でもひときわ小柄な人物だ。話しを聞いた花音が自分も同行すると言い出したのだ。

もちろん、カナタを始めゆずもヒナタも言葉を尽くして説得したが花音はどうしてもついていくと言い張って聞かなかった。さらには松柴や橘まで危険を説いて説得に当たったのだが、花音の気持ちを翻すことはできなかった。


「いいえ!もう一人で待っているのは嫌なんです。私は役に立てるとは言いませんが、せめて足を引っ張らないようにしますから……」


必死な顔をしてそう言い張る。


「まあしょうがないんじゃない?ここまで言うのに連れて行かずに一人にする方が逆に不安だよ。僕も気にかけて守れるようにするからさ」


困り顔のカナタと泣きそうな花音の間に入ってダイゴがとりなす。


「……わかったよ」


渋々ではあったが、カナタはそう言って身を引いた。確かにここまで決意を固めてしまった子を一人にすると何をしでかすか分からない。それならばみんなの目の届くところにいてもらったほうが安心できる。


「ありがとうございます!」


取りなしてくれたダイゴと承諾したカナタに向かって花音は大きく頭を下げた。さっきまで泣きそうにしていた顔をニコニコとさせながら。


「……俺、はげるかもしんない」


一人カナタはそう呟くのだった。



大鳴門橋の四国側に築かれた砦。その頑丈なもんがゆっくりと開かれていく。かつて長野を始めとする野心のあるグループが大鳴門橋の先にある淡路島まで勢力を拡大して明石海峡を境とするべきだ、と声高に叫んで一定の住民の賛同まで得て淡路島攻略の作戦が行われた事がある。

松柴は反対派だったし、別の任務で動いていたカナタ達は関わってもいないが、当時の最大戦力である一番隊と二番隊を中心に部隊が編成された。


その結果は惨憺たるものだった。まだ感染者に対する情報も少なく慣れてもいない事もあり、実力者揃いだったはずの一番隊、二番隊のほとんどが帰らぬ人となった。

感染者に襲われ、命を落とした人が今度は敵となって襲ってくる。この事を甘く考えていた結果、生きて大鳴門橋を戻ってくる事が出来たのはたった一名。それも荷物持ち、ポーターとして参加した非戦闘員だった。

その人も大けがをしていて、治療の甲斐なくすぐに亡くなった。


軽率な作戦で得た物はほんの少しの物資、情報すらなかったという結果に終わった。

作戦自体は軽率な物だったとしても、当時の一番隊、二番隊は自衛隊や警察、格闘技の有段者など「比較的戦える」人ばかりだったのに、わずかな物資や情報さえ持ち帰る事ができなったという事実は大きい。これからそこに向かおうとしているカナタ達の表情はけして明るくはない。


時間をかけてようやく軽自動車が一台、通るか通らないかくらいの幅が開いた。カナタはもう一度見送りにきている松柴たちに一礼するとゆっくりと門をくぐった。


「へぇ……」


「うわあ!」


背後で門が締まる重厚な音を聞きながらカナタ達は前を向く。そこはもう海の上だった。

四国と淡路島を結んでいる大鳴門橋。カナタ達は足元からまっすぐに伸びている。橋の幅は結構広く、自動車が余裕をもってすれ違えるうえに、片側には歩道まである。


「気持ちいい……眺めもいいし。天気が良かったから向こうまでよく見えるね。……あれがなかったらいい景色だったんだけど」


ゆずが潮風を受けながら大きく伸びをしながら言った。確かに今日は天気がいいので、眺めは最高だ。本来なら……ゆずが言うあれ、とは。先がよく見えるために見えてしまった感染者の集団だ。橋の中間付近でばらばらの方向を見ながらふらふらと歩いている。ぱっと見、十体は超えている。


双眼鏡を出して見てみる。恰好を見るに№4に攻めてきた集団のなれの果てかもしれない。


「いち、にい、さん…………十三体いるな。橋の上だと避けようがないし、今はまだ距離があって気付かれてないけど、面倒だな」


カナタは双眼鏡から視線を外しながら嫌そうに言う。橋はほぼ一直線に伸びているが、放置された車があり、それが意外と動きを阻んでしまうのだ。


「まぁ、本州の方が危険だって話だったし……わたしは覚悟して来てるわ。まかせて!」


カナタの隣に並びながら勇ましいことを言っているのは六番隊から来てもらったハルカだ。腕まくりをしながら気合の入った表情をしている。戦いになれば前衛に出る気に違いない。

ハルカは佐久間との一件の後、加勢にきてくれた祖父の晴信にみっちりと稽古をつけてもらっていたようだし、腰には仁科道場に飾ってあった仁科家伝来の名刀が下がっている。戦闘力はかなり上がっていると思える。


「まあ……しゃあないかぁ。橋の上だし避けようもないしな」


それに対してカナタは頭の後ろで両手を組んで、あまり気合の入ってなさそうな声を出している。しかし、これまでの戦いを経て彼の実力を知る者ばかりなので、いまさら何かを言う事はない。


そのまま進もうと数歩進んだところで後ろから声がかかった。


読んでいただきありがとうございます。作品について何か思う事があったら、ぜひ教えてくれるとうれしいです。

ブックマークや感想、誤字報告などは作者の励みになります。ページ下部にあります。よろしければ!

忌憚のない評価も大歓迎です。同じくページ下部の☆でどうぞ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
いつも楽しく読ませていただいています!ゾンビ物が好きで毎回更新を楽しみにしています!十一番隊がバラバラになった時はどうなるんだと思いましたが、ここでまたみんなが一緒になれてよかった・・・!これからも頑…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ