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14-4

休日投稿分です。

「うわっ!おい、カナタ押されてんぞ、指示!どう動けばいい?こっからだとまともに相手方も見れねえんだから。あぶねっ!」


距離が近くなるにつれて、至近弾が増えてきてスバルの頭のすぐ横に当たったりしている。ダイゴは放置車両とポリカーボネイトの盾をうまく使って遮断できているが、それも至近距離からは防ぐのは難しくなってくる。


(カナタさん、こっちから突っ込みましょうか?)


さすがに黙って見兼ねたのか、真城がそう伝えてきたが、それはお断りしておく。真城たちは護身用程度しか武装していないうえに人数も少ない。今は喜田たちを挟んでカナタ達と反対側に隠れているようだが、気づかれてしまうとかなり危険だ。


「ちょっと何してんのよ!めちゃくちゃ撃たれてるじゃない!」


撃ち合いの音でようやく喧嘩を切り上げた伊織がカナタの横まで来て声を張り上げる。急いで自分も銃を取りだして撃ち始めるが、それに気づいた敵の狙いを集中させてしまうだけだった。一発撃てば五発くらい返ってくる。


「もう、姉さんがいつまでも子供みたいに言い合ってるからでしょ!」


伊織の横に来た詩織は弓を斜め上に向かって撃つ事で、自分を射線にさらすことなく攻撃している。しかし狙う事は出来ないし、撃つ速度も銃の様にはいかない。あまり効果は望めない。


「ふ……やはりここは私に出番。見てると言い、あんな錆びた車なんか撃ち抜いて……」


「なんや、勿体ぶって……使わないって言ったんちゃうかい」


「姉さん!」


得意げに言い出したゆずに、またも挑発的な言葉をながる伊織を詩織が窘めている。


ゆずはその言葉に反応する前にカナタが間に入って止めている。


こいつらは一緒にしたら絶対ダメなやつだな。売り言葉も買い言葉もワゴンに入れて半額セールでもやってるに違いない。


ゆずは、伊織の言葉に何か言い返そうとしていたが、カナタが半目で睨んでいるのに気づくと何事もなかったような顔をしてへカートのスコープを覗いた。

そして、指が引き金にかかり……撃つかに思えたが止めてカナタの方を見た。


「まずい……カナタ君、まずいかも。」


「分かってるよ!まずいよ。頼むから真面目に……」


この期に及んでまだそんなことをとでも言いそうなカナタの顔の前に手のひらを向けて、言葉を遮ったゆずは喜田たちがいるさらにその先を指さした。


「まさか……」


嫌な予感がしたカナタが光学望遠スコープでゆずが差した方を見る。


「ああ……マジかー。無理もないっちゃないか」


そこに見えたのは、高速道路をこっちに向かってやってくる感染者の一団だった。これだけ派手に撃ち合いをしているのだ、引き寄せてしまったとしても無理はない。


(全員応戦しつつ移動準備。感染者の接近を確認した。数はおよそ20前後、距離は150から200)


インカムで隊員たちに伝える。この通信は真城達にも聞こえているはずなので、避難を開始するだろう。藤堂姉妹もすぐ横にいるので、聞こえたのだろう。撃つのをやめてカナタを見ていた。


「あっちだ、感染者が寄って来てる。どうするか……」


後方には感染者の影は見えないが、このまま逃げても喜田たちの追撃を受けるし、ここは高速道路だ。戻るとなると一個前のインターまでは大分戻る事になってしまう。


「あんなに……あんたら、感染者とはやり慣れてるんでしょ。あれを倒せば済むと思う?」


若干悔しそうにそう聞いてきた伊織に、薄い胸を張ったゆずが何か言おうとするのをヒナタが口を塞いだ。


「いや、後続がいる可能性が高いと思う。それにあの集団と戦う音がまた引き寄せるだろうな。あいつら何も考えず撃ちそうだし……」


ゆずに代わってそう答えたカナタは、目線で今もガンガン撃ってきている喜田たちを指す。


「何も考えずに撃ちそうなのは、あんたんとこのチビもおな、もご……」


今度は余計なことまで言いそうになった伊織の口を詩織が塞いだ。


「もう、お前らなんなの?喧嘩するなら帰ってくんない?」


たまりかねてカナタが言うと、伊織とゆずは目を逸らした。



その頃、数に物を言わせて撃ちまくって押している喜田側は、おかしい事に気づいていた。


「どういうことだ?」


喜田も愛用している拳銃トカレフを片手に、さっきまでこれでもかと撃ち込んでいたのだが、手下の一人が耳打ちしてきた事が気になって聞き返している。


「はい、奴らの目的は№1に行く事で№4の代表も同行しているはずです。当然最優先の護衛対象のはず。しかし最初から誰も姿をみておりやせん」


そう言われ、喜田もここで待ち伏せした時から今まで一度も姿を見ていない。危険を減らすために変装していたとしても、あそこにいる連中は若いやつらばかりだ。さすがにむりがあるだろう。


「どういうこっちゃ?」


「考えられるのは、あいつらは囮で本命は別ルートで向かってる……とかですかね」


手下の男はそう言うが、それなら藤堂の娘たちがここにいるのはおかしい。さすがに他都市の重要人物を囮と同行はさせまい。

あとは、安全のため少し遅れて移動しているパターンか?


「いや、それもおかしいな。戦力に余裕はないはずや、分散させるのはデメリットしかない。」


自分で出した仮説を自分で否定する。ほんならどういうこっちゃ……

しかし、それに答える物は誰もいない。


「まぁええ。このまま押し込んであいつらを吐かせればすむこっちゃ。お前ら、もっと攻めたらんかい!」


そう言った瞬間だった。喜田は何かを感じたのか、弾かれたように後ろを振り返った。そのまましばらく視線をさ迷わせていたが、やがて眼を細めて一か所を見ると呟いた。


「あかん……あかん、時間かけすぎや。おい!お前ら後ろからゾンビ来てんで、さっさと行って捕まえんかい!」


動物的な勘とでもいうべきか、喜田は感染者の接近を感じ取った。もっともたいした才能を持っているわけでもない喜田がパニック前も後も生き残ってきたのは、この野性的な勘に助けられた事も多かったのだ。しかし……


「いつまでも何しとんの?おっさん」


そんな喜田でも感じ取れなかった存在からの声に震えあがった。慌てて振り返り、声の主を探してさ迷う喜田の視線が積み上げられた放置車両のてっぺんで止まった。


そこには一人の女の子が片膝立てて、喜田を見下ろしていた。

上下共丈夫なデニム生地の洋服を着て、キャップをかぶって指出し手袋をしている。丈夫といっても上着は袖なしをTシャツの上に羽織っているだけだし、下はすらりとした白い足を惜しげもなくさらしたショートパンツというラフな服装だが……


「夏芽、はん……」


どちらかといえば、ふてぶてしい喜田が一歩引く様子を見せる。少女は一見すると華奢でかわいらしい外見をしているのだが、喜田の様子からすると見た目の通りというわけではなさそうだ。さらに言えば、ここにカナタやハルカがいれば見た事があるのに気づいたかもしれない。かつて十一番隊ができる前に、カナタ達の元からハルカを遠ざけた人物。それが彼女だったからだ。

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