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アバターシノビブレイカー_対電忍【小説家になろう版】  作者: 桜崎あかり
第26話『忍者の拡散と新たな刺客』

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第26話その3

 その日の午後には、株式会社オケアノスから発表があり、非公式なリアルダンジョンで迷惑配信者などによる炎上で運営できないでいる状況に対し、ガイドラインを作ることで対応することが正式発表された。


 これにより、非公式ダンジョンは違法行為という事になり、運営者を逮捕していく方向になるのだが、その日のうちにリアルダンジョンの99%で自主的に閉鎖を発表、他のイベント会社へ売却し、順次ARダンジョンへ切り替えられていく。


 これだけの事が、わずか1時間弱で起きたなんて、誰が想像できるだろうか?


 バーチャルダンジョンはこのガイドラインでは対象外のため、影響を受けたのはリアルダンジョンだけだが……。遊園地のお化け屋敷のようなものや、謎解き系脱出イベントは対象外なので、そちらにも影響はない。


 ある意味でも便乗で稼ごうとしたら、迷惑系配信者の影響で炎上したリアルダンジョンが全滅する展開になるとは……。


 何も知識がなく便乗稼ぎをしようとすれば、いずれはこうなる、というのを彼らは実践してしまったのだ、と。


 翌日には、リアルダンジョンは絶滅し、ダンジョン配信と言えばARダンジョンとバーチャルダンジョンの二強時代となっていく。



『今回もARダンジョン配信ですが、昨日のガイドライン発表で、ここまで環境がよくなるとは予想外です』


 西新井のARダンジョンで配信を行うのは、雪華(ゆきはな)ツバキである。


 彼も、このダンジョンの話を昨日に知ったのだが、入場制限があったので行けずじまい。


 翌日に何とか混雑もないという事で、ダンジョンへ向かえることとなった。


 装備関しては、忍者モチーフの装備を使用している。ある程度の自由度はあるようにも思えるが……。


『内容は、モンスター討伐型で一般的なダンジョンと同じですね。ARガジェットを使用する点だけ違うようですが』


 さすがにダンジョン(しん)のダンジョンみたいに巨大ロボットは使用できない。


 ダンジョンの広さ的な意味でも、そういった制限はあるものの、他のARダンジョンと遜色ないくらいには快適になっている。


 これもオケアノスのARダンジョンガイドラインの影響だろうか?


 エリアによっての配信制限が一切ないという点も大きいが、逆にそれもあってワクワク感は減っているような気がしないでもない。


 ARダンジョンは関東エリアや関西エリア限定であることも多く、他のエリアには順次設置とのことだが、タイミング的に逃してしまわないか……という懸念もあった。


 その辺りはガーディアンの存在やSNS炎上案件が日本各地に拡散するのを防ぐ狙いもあるので、仕方がない一面もある様子。


『それでも、今後は関東エリア以外にも展開することは決まっていますので、今後のダンジョン配信にも期待ですね』


 やはりというか、落ち着いて配信をしているような気配もする。


 ダンジョン配信なのに落ち着くものなのか、というのはあるが、ダンジョンを舞台にしたゲームではなく、あくまでもこれはお化け屋敷などの延長線上という意味でのダンジョンだ。


 それを踏まえると、モンスターの配置などもダンジョン配信向けに調整され、そういった意味ではワクワク感が得られにくい……のはあるのだろう。


 それでもツバキは声を大事にしつつ配信を続ける。いつぞやのゲーム配信と同じように。



「あのダンジョンも、悪くはない。今後は迷惑系配信者を生み出さないようなSNSガイドラインが急務になるだろう」


 ガーディアン新宿支部の男性支部長は、支部長室でツバキの配信をチェックしながら思っていた。


(しかし、ガーディアンが先導してガイドラインを作るとなっては、同じようなことを繰り返す)


 テーブルの近くにあるペットボトルのお茶に手を付けつつ、彼は思う。


 ガーディアンがガイドラインを作っても、必ずどこかで抜け穴を作り、それを悪用されて炎上するのは目に見えていた。


 だからこそ第3者主導によるガイドラインが必要なのだが、それでも抜け穴が作られてしまうのは……宿命か。


 炎上勢力や転売ヤーのような目の前のお金にしか興味がなく、そこから先を見ないような勢力が荒らしていくのはどのSNSにもあるだろう。


 それを踏まえると、ブラックバッカラ事件は起こるべくして起こった、と言わざるを得ない。


 別の事件は、というと……そこまでの規模にならずガーディアンが鎮圧しているのを踏まえると、そういう事なのか、というのが分かる。


「果たして、どのような結末を迎えていくのか……」


 彼はふと、ガーディアンの顛末も含めて、何かを思う。


 果たして、それはどのような形で……。



「なるほど。こういう展開になったか」


 ゲーミングパソコンショップの事務室、タブレット端末で小説サイトに掲載された小説を読んでいたのは、春日野(かすがの)タロウだった。


 彼が読んでいた小説のタイトルは『アバターシノビブレイカー』であり、この【作品】でもある。


 テレビアニメも放送中だったのを踏まえ、タロウは原作小説も読んでみようと本屋やネットショップも回ったが、どこにも置いていなかった。


 書籍化をすっとばしてコミカライズ、アニメ化とメディアミックスするような作品もあるにはあるが、それらはイレギュラーだろう。


 実際、ブラックバッカラ事件も脚色された形でテレビアニメで放送されており、9月には終盤が放送される。


 事件としては4月から6月までの出来事であり、その後の7月にアニメが始まった……と言う異例スケジュールだ。


 それを踏まえると、この事件もブラックバッカラと同様にテレビアニメ版の宣伝という意味でリアルにも事件が起きている……と言う声もSNS上にあるレベルだろう。


「いい最終回だった。まだ最終回かどうかはわからないが……」


 そして、タロウはこの小説をブックマークし、作業に戻ることにした。


 ブラックバッカラ事件と同様のフォーマットになっているとしたら、この事件は9月で決着するのではないか、と言われている。


 今回の一連の事件が1クールのアニメを思わせるようなものであり、ある意味でも「リアルで同じような事件が起きているから作品を規制しろ」みたいな動きもあるかもしれない。


 しかし、そうした声はこの世界では出てこない。事件の内容があまりにもフィクション過ぎて話にならない、と却下しているのはわからないが。



『忍者とはありとあらゆる炎上を阻止するために存在する、対電脳の刀。忍者とは悪意ある闇の全てを斬る存在でなければならない。彼らが斬るのはあくまでも悪意ある炎上であり、それ以外のものを切り捨ててはならない』


 この忍者構文が本当にフィクションなのか、それともノンフィクションなのか、それを見極める手段は見つからない。


 それは、これから起きる8月末から9月の出来事からすべてが変わっていくのだから。


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