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アバターシノビブレイカー_対電忍【小説家になろう版】  作者: 桜崎あかり
第23話『新宿支部の狙い』

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第23話その3

「その答えが、これにあります。ある意味でも変身ヒーローを募集するのです。そうすれば、忍者構文の忍者にも対抗できましょう」


 ガーディアンの定例会議の中、新宿支部長のまさかの発言に対し、周囲は動揺した。


 この発言に関しては、秋葉原本部のメンバーも若干動揺しているようには見えるが、実際には動揺していない。


 むしろ、動揺しているのはテレワーク勢の方と言えるだろう。


 一部のテレワーク勢の中には、秋葉原本部長が見たガジェットを見て、何か思うところが……という人物もいるのだが。


『新宿支部はガーディアンの乗っ取りを考えている。それでは、過去の案件と同じだ』


『ネットガーディアンという類似組織を生み出したのは、やはり……』


『やはり、新宿支部はガーディアンから除名するべきだ。これ以上の裏切り行為は見逃せない!』


 他の支部から様々な声が挙がる。当たり前と言えば当たり前であり、それさえも新宿支部は把握していた。


「今回の件は、一連のタケが起こした事件を受けて、様々な観点から決めたものだ。新宿支部独断ではない。それでもなければ、単独で進行していた案件とも違う」


 まさかの発言をしたのは秋葉原本部長の男性である。この一言を聞き、沈黙する支部長も何人かいた。


 それでも、新宿支部の独断を許せば……と考える人物はいるだろう。


「それに加え、タケでさえも知らない、一部にしかわからない真実にも……新宿支部は気づいた。彼には資格がある」


 秋葉原本部長の次の発言後、彼が右手指でパチンと音を鳴らすと、会議室の光景が変化した。



 次の瞬間に姿を見せたのは、いわゆるVTuberのスタジオのような若干広い程度の部屋だったのである。


 しかも存在するものも、パイプ椅子とテーブル、それと新宿支部長が持ってきたアタッシュケースとその中身……。


 このスタジオにいるのは、秋葉原本部長と新宿支部長の男性二人だけ、他には誰もいない。これは、どういうことなのか?


『会議にいた幹部が、消えているだと?』


『どういうことだ!? これでは定例会議も茶番だった、というのか?』


『ガーディアンが少数精鋭、そういう意味でも少数精鋭だったのか』


 他の支部が驚くのも無理はない。秋葉原本部は実働部隊こそ数百人規模ではあるのだが、上層部は本部長1人だけだったのである。


 ガーディアンが支部長1名で残りが実働メンバーという構成を踏まえれば、何となくわかりそうな部分ではあった。


 出入り禁止が一時解除された草加支部、春日部支部も助手的なポジションの人物はいるものの、あくまでも実働メンバーの延長であり、幹部ではない。


 しかし、他の支部は秋葉原本部に限ってはルール自体が別物という認識を持ってしまい、ここだけ幹部級のメンバーが常駐する、と考えていたのだ。



「ガーディアンが元々、支部長ごとに独自ルールを付けられることはご存じでしょう? メンバー構成を独自ルールにしているような気配を秋葉原本部に感じられなかった」


「ガーディアンの支部構成ガイドラインを見ても、実際に幹部制度は記載されていなかったし、その中で幹部制度はおかしいと思った。それだけの事」


「他の支部は幹部制度を導入しているかもしれませんが、独自ルールを設定できるのは1つだけ。つまり、そういう事と言えるでしょう」


 新宿支部長はガーディアンのガイドラインを見たうえで、幹部制度がないはずなのに定例会議で幹部が複数いることに違和感を持った。


 ガーディアンの組織自体、幹部制度がないのはいわゆる癒着などの懸念があっての対応であり、過去のガーディアンからの裏切り者が反乱を起こした事件などを経験してのものである。


 中には他の支部が幹部制度を導入しており、それを秋葉原本部は独自ルールで……思い込んでいた支部もあったようだ。


 あくまで独自ルールは1個まで、それも全体開示で他の支部にも分かるようになっている。


 修正は可能ではあるものの、それは秋葉原本部が承認したうえでの変更であり、基本的には支部長の変更でしかルールを変えることはできない。


「解説はその辺りにしておいて、本題と行きましょう。このシステムの正体は……AIによる独自思考プログラムを使用したものだった、というところでしょう」


 新宿支部長の解説の後、本題に入るのだが……秋葉原本部の正体がAIを使用したシステムを使用した組織あることが明らかとされる。


「フィクションの作品だと、人工知能を思考プログラムや会議補助、それ以外の分野で使う事もあるでしょう。しかし、今はAI関係で様々な問題が存在する令和の時代、迂闊にAIを使っていることは避けたかった」


「そこで本部長が思いついたのが、いわゆるVTuberの配信だった。それを利用し、更にはAIアバターも準備し、いかにも賢人会議を思わせるようにした」


「さすがに、AIアバターを本来のベースモデルのまま使えば、すぐにトリックがばれてしまう事を恐れ、こういう仕様にした……所でしょうか」


 新宿支部長にすべてを見破られた本部長は、ため息をひとつ……その後にアタッシュケースのふたを閉じた。


「本部長の独自ルールは『会議のトリックを見破ったものに、ガーディアンの全権を譲る。ただし、暗殺などの手段で本部長を消すことは認められない』でしたね」


 新宿支部長の言及した秋葉原本部の独自ルール、それを聞いてテレワーク勢が動揺したのは言うまでもない。


 このルールは他の支部にも開示されており、出入り禁止状態だった草加支部と春日部支部も知っていた。


「まぁ、ガーディアンのルール自体に手を加えるような独自ルールは不要と考えていたからな。それを踏まえてのこのルールだったが、従う時が来たようだ」


 観念した秋葉原本部長は、役目を終えたとばかりに本部長の全権を新宿支部長に譲ろうとした。


 しかし、それを拒否したのが新宿支部長である。それは、どういうことなのか?


「ですが、今の自分に秋葉原本部を含めたガーディアン全ての支部を動かせる技能(スキル)はありません。それは、他の支部の反応を見ればお判りでしょう」


「本部長の人柄、やり方、他にも様々な箇所があってこそガーディアンが今まで動かせていた。そういう事です」


「不正事案で炎上したわけでもない以上、ここで全権を譲ったら、それこそ他のまとめサイト勢力などに炎上のネタを提供するのは目に見えています」


 新宿支部長の話を聞き、確かに一理あると考える支部長もいた。


 一方で、秋葉原本部は若干だが動揺を隠せないでいる。


「だからこそ、これで忍者構文に対抗するのです。ガーディアンのコンテンツ価値を上昇させるためにも」


 新宿支部長の狙いはこれにあった。


 ガーディアンの経済価値は数億ともいわれた時期があり、SNS炎上を阻止する組織は他のコンテンツ価値を上げるという意味でも重要視されていたこともある。


 コンテンツ炎上で価値を下げた作品はいくつも存在し、中には歴史の闇に消えたようなコンテンツも実際にあった。


 そういった時代を終わらせるという意味でも、新宿支部はガーディアンに対して炎上勢力以外とも戦う必要性を訴えていたのである。


 それが、ネットミームとして拡散している忍者構文だ。それ以外にもネットミームは存在し、今も増え続けているのかもしれない。


 下手をすれば、こうしたミームがコンテンツ流通の疎外となり、経済活動の障害になることだって否定できないだろう。


 SNS上に拡散するミームがさらに二次創作されて拡散し、それが炎上し……という状態もあり得ない、と言い切れないのだ。


「ガーディアンの、コンテンツ価値……」


 秋葉原本部長としても目から鱗であった。


 ガーディアンは、あくまでも職業(ジョブ)の一種であり、コンテンツであるという考えはなかった。


 それこそクリエイターや小説家、作曲家などと比べても同じフィールドにガーディアンを並べてもいいのだろうか、というのもあったからである。


 ガーディアンはSNS炎上を阻止するための存在であり、それがコンテンツと言えるような仕事とは思えない……。


 だからこそ、秋葉原本部長はガーディアンは影の存在、光に当たることは許されない、と考えてしまったのだろう。


 令和の時代に、それを考えさせられるとは……予想もできなかった。


「分かった。その話、乗ろうではないか」


 こうして、ガーディアンもコンテンツ流通という意味で参戦し、忍者構文を巡る争いはさらに激化していくことになった。



 一方で、この流れを良しとしない組織もある。SNS炎上を仕事としていたまとめサイト勢力や迷惑系配信者だ。


 いまだにこうした勢力が生まれるあたり、戦隊もので言う今週の怪人枠では片づけられない何かがあるのだろう。


 それに加え、ガーディアン参戦には頭を抱える者もいた。配信などでさらに取り締まりが厳しくなるのでは、と考えるダンジョン配信者たちである。



 彼らの明日はどっちだ?


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