第21話その1
様々なニュースがSNS上で拡散しては、炎上を繰り返す。
何度も繰り返されていくうちに、時代が予想もしないような存在を生み出すことになった。
その名はガーディアン、彼らの目的はSNS炎上の阻止。それを掲げて、様々なまとめサイトや迷惑系配信者などを根絶していく。
やがて、そうしたパターン化したような流れは4クールのアニメや特撮番組などのように扱われていき、やがてSNS上でもネットミームとなったのである。
これに目を付けたメーカーがガーディアンに接触、ARガジェットを広めていき、ARゲームがブレイクしたともいわれているが、詳細は不明だ。
もしかすると、忍者構文の事件も、過去にあったブラックバッカラ事件も……こちらに部類するのかもしれないが、真相は分からない。
過去にも小説で同じような事件が描かれている作品があり、書籍化もしたという話もあった。
『ガーディアンは重要な秘密を隠している』
この一言から始まったのは、いわゆる炎上系インフルエンサーと呼ばれる男性の動画である。
『SNS炎上は、様々な箇所から出ている一方で、ある法則が存在するのだ』
彼は、いわゆる暴露系と言われるような立ち位置の配信者で、一部に関してはSNSを第炎上させたこともあった。
それだけでは飽き足らず、遂にはネットガーディアンと名乗る組織と敵対、最終的にはネットガーディアンには敗北したが……動画は百万再生を超えるアクセスを記録する。
その時はブラックバッカラ事件をマッチポンプと吐き捨てていたのだが、実際には違っていた。
彼が嘘を言ったのかと言われると、要所の発言は事実も混ざっていたため、それが理由で炎上しかけた、ともいえるだろうか?
『まとめサイトのいくつかが閉鎖され、一部の会社が炎上しているが、それらはガーディアンと敵対していた企業などが炎上したといわれている』
『確かに一部のまとめサイトは、やっていることが悪質であり、一部のインフルエンサーなどもまとめサイトに掲載されたことで、ガーディアンに拘束された』
『ガーディアンに拘束されたインフルエンサーは、その後どうなったと思う? 一説によれば、ガーディアンで洗脳されたという……』
途中で配信が途切れる。一体、何が起こったのだろうか?
【まさか、そんな一言だけで配信が停止するのか?】
【ここまでくると、言論統制のレベルでは?】
【一体、ガーディアンは何をしようとしているのか】
配信が止まった件に関して、単なる放送事故とつぶやく者もいたが、それ以上にガーディアンによって消されたと考える人物が圧倒的だ。
その後、炎上系配信者などのアカウントが一斉に凍結される事件が起きたが、こちらは特に注目はされることはなかったという。
注目されない理由は多々あるだろうが、迂闊にガーディアンへ言及すれば自分たちも同じように……と考える人物が多いのかもしれない。
さすがにガーディアンへ対しての物理的な抵抗をすれば、それこそジャパニーズマフィアの抗争を連想し、逆効果になるだろう……と思った者がいたのかは不明だが。
『この件の緊急会議は行わないのか?』
「あのインフルエンサーは、過去にブラックバッカラ事件でも放置されたインフルエンサーです。スルーが前提でしょう」
『確かにあちらが攻撃していたのはネットガーディアンであり、ガーディアンではない。しかし、混同するユーザーが炎上させる可能性はゼロではないだろう』
「言いたいことはわかります。それでも、放置すべき存在にまで目を向けたら、それこそ炎上勢力の思うつぼでしょう」
秋葉原本部では本部長と新宿支部の支部長が会話をしていた。
今回の件で緊急会議の招集を行わないのか、と新宿支部長は言う。
他の支部にとっても、今回の件は非常に重要なのではないか、との事だが、本部は動く気配がない。
『確かにフェイクニュースにつられた支部が……という案件があったのは否定しない。それからガーディアンも反省点を生かしているはずだ』
「ブラックバッカラ事件は、それだけで解決しなかったのですよ。ネットガーディアンという組織がガーディアンと同一視されてしまった段階で」
『アレをフェイクニュースと明言したのは、草加支部だったと聞きますが……いまだに出入り禁止を解除しないのには、理由が?』
「出入り禁止にした張本人が本部に健在である以上、こちらからは動けない事情があるのです」
『事情? それは本部の指示、もしくは都合では?』
「そうであれば、個人的な連絡と言えども通話連絡はしません。メールでのやり取りで十分でしょう」
話は続いていくのだが、話が動いていそうで進展がない。
これは一体どういうことなのか? 新宿支部もブラックバッカラ事件に関して何かをつかんだのだろうか?
『ネットガーディアンのガーベラ、今は行方不明扱いらしいですね。それにネットガーディアンの使っていた場所は、春日部支部が使っているとか』
「そこはさすがに把握していない。春日部支部が出来たばかりの支部でガーディアンの認定を受けていないのは認めるが」
(認定していない? それは、どういうことだ!?)
秋葉原本部の本部長の発言を聞き、新宿支部長はさすがに話を止める。
春日部支部は幽霊支部なのでは、というのが他の支部の認識だったのだが……今の発言が本当だとすれば、春日部支部は名ばかりの支部という事にもなるだろう。
『とりあえず、春日部支部の件は保留としておきましょう。まずは……』
新宿支部長が何かを切り出そうとした矢先、別の人物からの連絡があった。
どうやら、派遣していた人物からの連絡らしい。詳細はショートメールで、という事だったのでメールが送信されたのだが……。
(なるほど。蒼影がついに動くのか)
新宿支部長は、視点を本部長に合わせつつ、話を続けようとしたが、それも無理のようだ。
メールの内容が内容だけに、秋葉原本部に伝えるのはマイナスになるだろう、と。
『申し訳ありませんが、こちらにもちょっとした案件が出来てしまったので、この辺で』
そして、新宿支部は通信の方を切った。
秋葉原本部としても、下手に向こうへ話すには都合の悪い案件がないわけではない。
しかし、その案件は蒼影ではないのだが。
「あのコスプレを販売していたコスプレショップに、そういうつながりがあったのか」
彼らが手に入れた情報、それは少し前に閉鎖に追い込まれた蒼影のコスプレを販売していたコスプレショップの正体に関してである。
実はアダルト関連の事業をしている、実はまとめサイトのまとめ役をやっていた……のようなものではなく、その正体は予想外のものだった。




