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アバターシノビブレイカー_対電忍【小説家になろう版】  作者: 桜崎あかり
第16話『リアルとバーチャル、二人の忍者』

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第16話その3

「やっぱり、何かが起こっている」


 雪華(ゆきはな)ツバキは今回の迷惑系配信者の動向を見て、大きな事件が起こる前触れと考えていた。


 やはり、忍者VTuberとして動く時が来たのか……という意味でも。


(転売ヤーは目立った動きをしていないが、やはりニュース報道のアレが影響しているに違いない)


 迷惑系配信者と同様に転売ヤーも様々な動きを見せているが、ダンジョン(しん)のダンジョンの一件もあってか現在は落ち着いている。


 転売ヤーの場合は他の個所で大きな事件がニュースで報道されているため、各自治体で転売ヤー規制を早期に……という動きがあった。


 実際、埼玉県はダンジョン神のダンジョンの件もあって、転売ヤー規制ガイドラインが8月に成立し、それ以外の都道府県でも早期にガイドラインを発表できるように進めている所だろう。


 どちらにしても、迷惑系配信者にも同じようなガイドラインを作って締め出しを行おうとしているのは……リアルダンジョンの件を踏まえれば明らかだが。


「大きなニュースになる前に……動かないと」


 そして、ツバキは本来の目的を終えると、オケアノスを後にする。


 時間としては午前12時に入ろうとしているようなタイミングか?



 類似タイミングで、ある支部に足を踏み入れていたのは春日部支部のホップである。


 今回はさすがにガーディアンの標準ともいえる露出度も抑えた制服を着ているが……。


(なるほど、ね。ここが噂の足立区のガーディアンがメインで動く支部のひとつ……)


 地下のガレージは天井が低く、幅としては10メートル未満、そこにガーディアンのパワードスーツなどが複数置かれているような場所だ。


 このガレージの天井が低い理由は、いわゆる洪水対策で大量の雨水が別の場所へ流れるようなラインを確保したうえ、地下に基地を作った結果がこれらしい。


「これはこれは、春日部支部からわざわざ……」


 声をかけてきた男性には見覚えはない。しかし、足立区のガーディアンの一人として有名なガーディアンメンバーとしては、SNS上でも名前が知られている。


 明らかにSFヒーローのようなメットを常にかぶり、インナースーツも常時というと……熱中症対策はどうするのだろう、という懸念もあるが。


「ところで、この時期だと熱中症対策も気になるけど……」


 ホップのさりげない一言を聞き、彼は苦笑いをする。彼が指さす方向には特殊な形状をした機械が複数個、配置されていた。


 どうやら、あれが冷房らしい。暖房への切り替えも可能な機械なのは間違いないが……形状としては冷房に見えない。


 羽のない扇風機というのもあるが、これには風が流れてくる穴があるにはあるのだが、虫などが入り込まないように、それも小さめになっている。


「このスーツも、いわゆる冷却装置は存在します。まぁ、そういう事と思っていただければ」


 軽い話は、この辺にして彼はホップがここに来た理由を大まかに察している。それを踏まえての切り返しだ。


「本題に入らせていただくけど、例のARチャフグレネード、製造しているのはあなたたちじゃないの?」


 ホップの発言を聞き、彼は表情一つ変えることはない。


 メットをしているので表情を見ることは、ほぼ不可能なのだが……その形状的にも素顔が見えるようなタイプでもないため、表情を見てあると察することもできないだろう。


「あれは違いますね。ガーディアンからの資料を調べましたが、根本的に構造が違う」


 回答は、まさかの否定だった。類似システムを作っていることに関しては否定しないものの、ARチャフグレネードは否定している形だろう。


「むしろ、あのシステムを悪用したARチャフグレネードを作られたこと自体、イレギュラーなのですよ」

 

 更に言えばシステムを悪用されたこと自体が、イレギュラーとも語る。


 あのチャフグレネード自体、別の目的で開発していたのだが……思わぬ形で表に出てきたとも語った。

 

(さて、他に何かあるでもないが……)


 ホップは他に思い当たるような情報もないので、引き上げようとした、その矢先……。


「ガーディアンが? わかった、今向かう」


 何かの連絡が入ったのか、彼の様子が変わる。どうやら、臨時の出動らしい。


「申し訳ない。今、任務が入ったもので」


「こちらも、この辺りで出るつもりだったので、お構いなく」


 ガーディアンの男性は任務に向かい、ホップの方は支部を後にする。


 両者ともに、別の意味でも都合の悪いことをしゃべらなくて助かる……と思ったが、それは別の話になるだろう。



 午前12時ごろ、レインボーローズはふと周囲の様子を見る。


 ガーディアンが姿を見せているのはわかるが、自分が目撃したことのないような装備のガーディアンも散見された。


 目的はどちらにしても、不正ツールを使った迷惑系配信者だろうが。


(他のガーディアンに混ざって、装備が変わっている人物も……コスプレではなさそうだけど)


 ガーディアンのコスプレの場合、微妙にカラーリングが異なるものやエンブレムの違いもある。


 それがない以上は全員が本物といえるが、一部メンバーの持つガジェットは明らかにゲームで使用するようなARガジェットではない。


虹坂(にじざか)、あの足立区のガーディアンも来ている情報が入った。引き返せ』


 レインボーローズの持つスマホから聞こえてきた声は、春日野(かすがの)タロウの声である。


 虹坂とはレインボーローズの名字ではあるが……。


「足立区のガーディアン? あれって、ブラックバッカラ事件より前から活動しているアレですよね?」


『そうだ。あのガーディアンだ。下手に彼らと鉢合わせしない方がいい』


「それはそうと、ハルカも来ているって話ですけど」


『ハルカも? それは初耳だ。任務とは別なのかもしれないが』


「任務と別? それって……」


 二人が通話している間にも足立区のガーディアンが動き出した。発見したのは不正ツールを使ったチートプレイヤーのようだが。


 使用しているガジェットが巨大ロボットだったり、大量破壊兵器にも見えなくもないようなガジェットを運用しているのも、他のガーディアンと決定的に違う個所。



 そして、これをきっかけに大きな決戦が始まろうとしていた。


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