第14話その2
ダンジョン神のダンジョンにある開かずの部屋、それは各エリアに1つ配置されており、その扉はどのような手段を使っても開かなかった。
ダンジョン内で強引なごり押しなどで開けようとしたものもいたが不発に終わり、中にはチートツールのようなものを使おうとした形跡もある。
外部ハッキングで部屋を開けるというのは論外だが、そこまでしないと開かないのでは……と言及されるレベルで開かずの部屋だったのだ。
その中にはサポートメカが存在していた、というのも第1エリアの部屋が開かれたことから判明したもので、最初から置かれていたのかも定かではない。
更に言えば、そのサポートメカのベースがライオンであるという事も、部屋が開かれてから判明したものである。
「よくないねぇ……」
この状況を放置できないと考えていたのは、春日野タロウである。
ゲーミングパソコンショップの接客などを他のバイトに任せ、自分は待機部屋でニュースをチェックしているのだが。
待機部屋といっても他のバイトとも兼用なので、そこまで長時間滞在できるわけではない。
部屋に置かれているのも、パイプ椅子にテーブル、テーブルの上にはコーヒーメーカー、コーラやジュースなどの入った冷蔵庫、ノートパソコンが3台ある程度。
部屋の広さは、そこまで狭いものではないが……数十人が入るのは無理があるだろう。
「今のところ、部屋の解放以外で正式ソースが出ている気配もない。この状況に誰が動くのか」
開かずの扉が解放された件もまとめサイトで最初の情報を手に入れ、その後に正式ソースを探してはいる。
しかし、扉が解放された形跡がある以外は情報ソースがない。サポートメカも、そのベースがライオンであることもフェイクニュースと疑われている段階だ。
それに対し、タロウはSNSのフェイクニュースなどでダンジョン神のダンジョンが炎上するのでは……と懸念している。
彼に関して言えば忍者構文を信用できるソースと考えているが、それでも五分五分だ。完全にソースを信用しきって自滅したといえるタケとは違う。
「開かずの扉が開いた所で、こちらが有利になることはない!」
ある男性冒険者はダンジョン神のダンジョンで開かずの扉が開いても誰かが有利になることはないと考えていた。
そして、様々なモンスターを討伐し、ダンジョン内で使用できるポイントを集めていく。
(転売ヤーのような勢力は、所詮は……)
ポイントで装備と交換し、それをリアルのオークションサイトなどで転売する転売ヤーは、ダンジョン配信には興味がないと考えている。
それに加え、彼らのような行動がダンジョン配信の民度を下げていき、最終的にはオワコンへと追い込む……それが彼らのやり方なのだ。
「誰だっ……!」
そんな彼がダンジョン内を探索していると、突如として姿を見せたのは……蒼影だったのである。
大規模な転売ヤー掃討作戦後は、そこまで目立った目撃事例はなく、それでも迷惑系配信者などの討伐で現れる位だった。
それが、まさかの目の前に現れたことには驚きを隠せない。
【忍者構文の忍者キタ】
【まさかの展開だ】
【何という】
【信じられない】
【リアルタイムで目撃できるのか?】
彼のダンジョン探索は実際に配信がされており、コメントでも蒼影が出現したと同時にコメント数が増え、閲覧者も増え始めた。
配信している男性にとっては想定外といえる出来事なのは間違いない。
彼としては、蒼影に遭遇することなくダンジョン探索をするのが目的だったからだ。
「一体、自分が何をしたというのだ? 炎上系配信者でもない自分を……」
この男性配信者は炎上系でもなければ、迷惑系配信者でもない。
しかし、蒼影が姿を見せたのには理由がある。つまり、その法則に当てはめれば……。
数分後、配信が中断した。その理由は蒼影との戦闘で敗北したのもあるが、ガーディアンに通報され、拘束されたことによるもの。
戦闘といっても、蒼影による槍の斬撃によるものであり、更に言えば一瞬の刹那でもあった。
そして、蒼影に敗北後、ガーディアンが彼を拘束したのには理由がある。彼の正体は、情報のリークを行う配信者だったのだ。
さまざまな作品で情報リークを行い、炎上を行ってきた彼も迷惑系配信者などに該当しないが、蒼影にとっては炎上を煽る存在と視認された瞬間でもある。
忍者構文における『ありとあらゆる炎上を阻止するため』という部分にはいわゆるフライング情報やリーク情報も含まれていた。
蒼影はありとあらゆる炎上によるコンテンツ流通の妨害を許さない。
つまり、そういう事だったのだ。




