第13話その2
・2025年1月17日付
pixiv版移植に伴う調整を行いました。
ある募集告知が展開されている→ある募集告知が展開されていた
類似したタイミングで、ガーディアン側では緊急会議が実施されていた。
場所は、東京の秋葉原にあるガーディアン本部。
周囲のビルには、様々なアニメやゲームの宣伝ポスターが展開されたり、駅でもデジタルサイネージと呼ばれる機械で告知を行っていた作品もある。
そのデジタルサイネージの中には、ある募集告知が展開されていた。
【SNS炎上を阻止するためにも、ガーディアンの力になりませんか?】
【ガーディアンでは、SNS炎上阻止をするためのメンバーを募集しております】
それは、まさかのガーディアン募集告知のデジタルサイネージを使用した宣伝だったのである。
テレワーク方式や支部へ通勤するパターン、土日・祝日の休日確保、曜日シフト可能、通常以外にも深夜部門があることも明記されていた。
しかし、それでも時給2000円台と桁は違うのに、ガーディアンというだけで警戒をするような通行人もいたりする。
実際にガーディアンが行っていることをどこかで見聞きすれば、警戒したくなるのも無理はないだろう。
秋葉原の本部にいるのは、1人の支部長でありその支部長の周りには複数のモニターが設置されている。
これらの電気は、秋葉原の本部屋上にある太陽光発電システムで充電したものを使用していた。
そして、各支部をつないだテレワーク方式だが出席している支部長は全員男性である。
出席している支部および本部は、池袋支部、新宿支部、東京支部、さいたま本部、大宮支部、神奈川本部、千葉本部、茨城本部、栃木本部という具合だった。
欠席をしている草加支部および春日部支部の支部長は女性なのだが……この辺りは支部の特色が出ているのかもしれない。
なお、ガーディアンとしては独立している足立区のガーディアンは特例で会議には出席していなかった。
群馬はガーディアンの支部はないのだが、個別で対応している組織はあるらしい……という情報もある。
「一連の迷惑系配信者とインフルエンサーによるダンジョン転売事件は、何とか解決したようだな」
『まだ氷山の一角でしょう』
『いずれ、似たような事件は起こります。このタイミングでガイドライン強化をした方が……』
ダンジョン転売事件、青凪と名乗っていたインフルエンサーと、それに同調した迷惑系配信者によるアイテムの転売で利益を稼ごうとしたことである。
この事件を解決させるきっかけとなったタケもまた、別支部のメンバーではあったのだが、他勢力へ情報を流していたことも報告された。
『今回の元凶となったタケも、ガーディアンのメンバーだったとか』
『彼の該当支部が何処かを洗い出すよりも、まずは転売ヤーやまとめサイトを一掃する方が先だ』
『しかし、一連の事件に最も近い所にいた草加支部が欠席とは……』
『向こうも向こうで、大きな事案を抱えている。緊急会議とはいっても……そういうことだ』
今回不在の草加支部および春日部支部にも突っ込みが入るのだが、それらは些細なことに過ぎないのでスルーしている支部もいた。
「今回の緊急会議には、該当支部がいては都合が悪い」
『と、言いますと?』
『例の押収されたチャフグレネードに関しての件ですよ。それを回収したのが、元支部のメンバーであれば尚更……』
『ブラックバッカラ事件。確かにあの一件で日本はAI分野で海外とは別路線を……というフェイクニュースが拡散したレベルですからね』
『あの事件の英雄、月坂ハルカとレインボーローズ……彼女らと協力していたのが、草加支部と聞きますが』
『一方で、春日部支部は一連のARチャフグレネードの脅威を知っていながら報告義務を怠ったとか?』
「つまりは、そういうことだ。次の段階へ行くのに、ブラックバッカラ事件と共通点が見られる以上、あの支部に聞かれるのは……」
その後も会議は続けられ、30分で緊急会議は終わる。時間としても昼前というべきか。
緊急会議終了後は、定期の通常会議も同時に行われた。
そのテーマは炎上勢力に関してだったのだが……。
「我々としては炎上勢力を根絶するのは急務だ。しかし、逆にこちらで利用できるような勢力は残すべき、という事でもある」
『それでは他の勢力がガーディアンのマッチポンプと炎上させるのは……』
『確かにマッチポンプが繰り返されるという疑いはかけられるだろう、が、それは過去にも同じようなケースもあった』
『悪の組織を撃退したヒーローものの最終回が終わり、次に新たな敵勢力と戦うヒーローものの第1話……ガーディアンのやっていることは、そういう事なのですよ』
『それさえも認識せず、炎上勢力が再び出てきたらガーディアンが取りこぼした、と炎上させる行為も目立ちますね』
『ガーディアンが関与しているわけでもなく、この事件もガーディアンが裏で操っているのでは……というのもあります』
「引き続き、そのほかの一件は警戒し、ARチャフグレネードの件を優先にして行動するようにしてもらいたい。なお、一部勢力の動きには配慮されたし」
秋葉原本部の一言によって、会議は終了となった。緊急会議と合わせても1時間は満たないだろう。
一方、ガーディアンの草加支部。草加駅の近くにあり、コンビニやスーパーも近場なので、立地条件はいい。
メンバーに関しては数百人規模というのもあって、ガーディアンの中では秋葉原よりも人数がいるのでは……と言われるレベルだ。
ガーディアンの会議終了後、草加支部の支部長が支部長室で動画をチェックしようとしたのだが……。
(アクセス権がない? いったい、どういうことなのか)
ガーディアンの制服を着こなす一方で、ブルーライト対策用の眼鏡をしている女性、彼女が草加支部の支部長である。
それぞれにガーディアンの専用パソコンへのアクセス権を支部長は持っているのだが、その専用パソコンで公開されている動画を……何故か閲覧できなかった。
これに対し、ガーディアンが草加支部を切り離そうとしている可能性があるのでは、と疑問に持ち始める。
「支部長、ご報告が……」
ノックの後に入ってきたのは、ガーディアンの春日部支部の支部長である。
彼女の場合、ガーディアンの制服ではなく、なぜかスクール水着に『ほっぷ』とひらがなで書かれた名札を付け、麦わら帽子をかぶっているという……異例のコスプレともいえるだろう。
しかも、草加支部長よりも身長が10センチ近くも高い。草加支部長も170越えの高身長なのだが……?
「そっちもなのか」
草加支部長が春日部支部長であるホップと情報交換し、現状を理解した。
どちらにしても、切り離しとは別件であり、明らかにARチャフグレネードがらみだろう。
「タケの一件に関しては、こちらも調査はしているが……」
春日部支部長は、タケの動向を調べてはいるのだが……情報がなかなか出てこない。
「それ以外にもイベント会社だ。タケを撃破して拘束したという人物、目撃したのだろう?」
草加支部長はイベント会社の男性社員の姿を目撃したのでは、と春日部支部長にたずねるが……反応はない。
「どちらにしても、重要なのはタケが情報を流した勢力が何処か、だ」
草加支部長は、ふとテーブルに置いていたある写真を見ている。
(ツバキが何か早とちりをしなければ……)
草加支部長の見ていた写真、それは雪ツバキと姉の二人で撮った写真だった。




