第12話その1
「このデザインは、まさか……?」
雪華ツバキがダンジョン神のダンジョンで目撃した巨大ロボット、それはガーディアンで使用されていたARフレームに似ていた。
何故、それがダンジョンの入場者特典として配布されようとしていたのか? 転売ヤーの影響で配布が中止になったのは、どういうことなのか?
「300年前というのも、全ては何者かのシナリオなのか? それとも……」
ツバキはふと忍者構文を思い出す。あれは確か300年前の文章、ということにはなっている。
しかし、本当に300年前の文章という形で忍者構文が存在した、という情報ソースは存在していないのだ。
忍者構文自体、実は何者かによるカバーストーリー説が濃厚ということでもある。
一方で、誰が何のために……というのはあった。炎上勢力が利用するにしても、一歩間違えれば自分たちに反動が来るのだから。
その証拠がリアルダンジョンを巡る迷惑系配信者によるマナー違反の数々であり、これを取り上げたまとめサイトが次々とガーディアンによって閉鎖されている。
果たして、忍者構文とは何なのか? そして、その真相とは?
「どちらにしても、急ぐ必要あるのか」
ツバキとしては転売ヤーの一件など、重要課題は存在する。
それを踏まえて、行動を起こすのならば……と考えた。
どちらにしても、転売ヤーが行動を起こせばダンジョン神のダンジョンも無事では済まないだろう。
「結局、今日の段階では画像なし、か」
帰宅のために草加駅から電車で竹ノ塚方面へと向かうタケ、最終的に画像を今日の段階で手に入れることはできなかった。
理由はどうであれ、向こうの出方次第なのかもしれないが……。
(ARパルクールのガジェットで姿を見せた人物、こちらの予測が正しければ……)
タケはガーディアン以外に別勢力がまとめサイトつぶしに便乗した行動をするのでは、と考えている。
まとめサイトは特定のアフィリエイト系サイトの影響で、良い印象がもたれないのもあって、ガーディアンにとっては敵対勢力と認識していた。
それは秋葉原を拠点とするアキバガーディアンや足立区を拠点としたガーディアンも一緒だろう。
向こうはSNSの炎上勢力全体を敵対勢力とみているのに対し、タケの想定する勢力はピンポイントでまとめサイトを狙っている。
まとめサイトだけをつぶしたとしても、結局は炎上系インフルエンサーや迷惑系配信者が、その立ち位置になるだけで現状を変えることはできない。
「ブラックバッカラの一件、調べてみる必要性があるか」
タケが調べようとしていたもの、それはガーディアンでもトップシークレットクラスになっているブラックバッカラの事件だった。
調べようとしてもガーディアンのパソコンで調べれば足が付く。それを踏まえ、自宅で検索をしようと考える。
それを踏まえ、もう少しガーディアンで作業もできたようなものだが切り上げた……に近い。
(どちらにしても、あのガジェットがARパルクールのものだとして、あそこまで動かせるゲーマーがいるかどうか……)
タケには何か引っかかるものがあり、どうしても……というのがある。
実際に動画があれば、そちらで確かめれば早い話だが。
「随分と派手にやったもので……」
草加市にあるゲーミングパソコンショップ、その事務室では映像の内容を見て驚く春日野タロウの姿があった。
一部のバイトはいるものの、何人かは定時なので上がっているのが現状か。
閉店時間は午後9時にはなっているが、午後7時台となれば客足も限定的になってくる。
そういったこともあり、店長であるタロウは事務室でとある映像を確認していたのだが……。
「ARガジェットは破損しなかったのが不幸中の幸いだが、かなり目立ちすぎた」
周囲のギャラリーを踏まえるとガジェットの破損はなかったものの、あまりにも目立っているのがわかる。
ガーディアンが別所で活動していたのもギャラリーが多い理由かもしれないが……。
「こちらとしてはARチャフグレネードの製造ラインを止めるという目的はあるが、目立ちすぎるのも困りものか」
タロウはどちらにしてもARチャフグレネードが拡散するのを阻止したいが、目立つのもガーディアンが動くので危険だろう。
この動画に映し出されている人物、月坂ハルカはこの場にはいないが……。




