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アバターシノビブレイカー_対電忍【小説家になろう版】  作者: 桜崎あかり
第10話『青と月』

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第10話その3

 月坂(つきさか)ハルカが向かった場所、それは川口駅より若干離れた場所にあるARコンテナの置かれたショップだった。


 このショップは規模としては中堅だが、大型ガジェットを扱う数少ないショップでもある。


 それ以外では、草加市のオケアノス内にある大規模ストア、春日部市のショッピングモール位だ。


 そういった事情もあって、ARゲームのアンテナショップでは客足が多いことでも知られている。


「ARパルクール用のフレームユニット、貸し出し中ではないものをすぐ用意できますか?」


 ハルカの方もここまで若干駆け足で向かっていたのもあって、若干息を切らしている様子だった。


 受付で応対している男性スタッフの方は、この状況に関して行間が読めない状況なのは間違いないが。


「フレームユニットは……ARロボットバトル用は全て貸し出し中で、購入用だけですね」


「ロボットバトル用のフレームは操作システムが難しく……じゃなくて、ARパルクール用の」


「ARパルクールの方は……今調べますので少しお待ちを」


 男性スタッフの方は、ある意味でも困惑の表情であるのは間違いないだろう。


 ハルカの方もフレームユニットで要求しているのは、操作難易度が高いロボットバトル用ではなく、容易になっているARパルクール用だ。


 他にもARリズムゲームの一部でフレームユニットを使うものもあるが、あちらはカスタマイズが面倒な点もある。


「今、別のスタッフがフレームの場所まで案内しますので、しばらくお待ちを」


 別の意味でもたらいまわしをされているのでは……とスタッフの対応を見てハルカは思うのだが、ここで文句を言ったとしても変わらない。


 逆に、そうした光景をSNSにアップして炎上させ、承認欲求を満たそうとする『バズり』勢力がいるのはわかっていたからである。


 自分も過去にそうした勢力の影響もあってプロゲーマーから一時期離れたこともあるから、そのあたりはわかるつもりだが……。



 ハルカが案内されたのは、ガレージといえるような場所というよりはコンテナ置き場だった。ここに、大型のフレームユニットがあるという。


 展示場と兼ねたようなガレージはオケアノスにしかなく、他はガジェット返却システムなどの関係でコンテナ置き場にフレームが置かれていた。


「ARパルクール用というと、これかな」


 専用の整備ツナギを着た男性スタッフが機械を使ってハルカの目の前にコンテナを移動させる。


 コンテナの移動は、地面の構造を見ればなんとなくわかるが、いわゆる宅配大手で使っているような特殊なものではない。


 細かいレールが地面に存在し、その上をコンテナを乗せた自動運転型台車が移動する……という具合だ。


 コンテナ到着後、ロックを解除し、フレームが姿を見せるのだがハルカはその姿に疑問を持つ。


「フレームというと本当にフレームだけと思ったのですが……」


 コンテナの正面シャッターが開くと、そこにあったのは脚部を畳んだ状態のロボットだったのである。


 厳密にいえば、ロボットというよりは腕と足部分に装着するようなパワードスーツにも見えなくもないが。


 フレームという割には、アーマーも装着され、ちゃんとしたロボットにも……。


 その外見を見て、ハルカは別の意味でも驚くしかなかった。


 ARパルクールに関しては、初期時代にパワードスーツにも似たようなフレームが多かったのもあって。


「フレームといっても、ARパルクールはスポンサーロゴがアーマーにデジタルプリントされる仕組みだ。それ以外は2メートル級のロボットと変わらない」


 まさかの男性の発言に対し、更にハルカは驚く。


 コクピットはARロボットバトルなどとは違い、腕と足はダイレクトに装着という具合だが……。


「腕と足は、普通に走るのと同じような感覚で操作する仕組みだ。ロボットバトルのフレームとは、そこが根本的に違う」


 大まかな部分さえわかれば、それでいい。そんな感じで男性の発言をハルカは流しで聞いている。


(さて、そろそろ行くかな)


 整備のスタッフから起動許可が出たので、そこからフレームを立たせることなく、そのままコンテナが動き始める。


 ハルカは周囲の状況を見て、今は動くべきではないということで待機し、待機している間に他の起動スイッチなどを確認し始めた。


 数分後には、駐車場とは別のフレームコンテナ出口に到着し、そこからフレームを起動して立たせ、そこから数歩づつ歩くのではなく、そのまま走り出す。


 最初は歩いてから慣れるようなことをせず、そのまま走り出したハルカを見て男性スタッフも驚くしかないのだが。


「あれがプロゲーマーというものか」


 別のスタッフはつぶやくが、これを聞いているようなスタッフはいなかった。



 一方で、バーチャル空間で次々と転売ヤーを撃破しているのは青凪(あおなぎ)だったのである。


 バーチャル空間といっても、新規オープンしたダンジョンの冒険者ばかりを狙っており、ダンジョン(しん)のダンジョンへは向っていない。


 何故に別空間のダンジョンの転売ヤーばかりを……と思うが、単純に転売ヤーを討伐してガーディアンに貢献したい……のではなかった。


(まさか、こちらにまで来ているとは)


 迷惑配信者の中で転売行為の推奨をする配信者が確認され、その配信を見ていた人物のリストを手に入れ、その転売ヤーを青凪は討伐している。


 何故に迷惑配信者の配信者ばかりを……と思うが、これには別の理由があった。その売ろうとしていたものの正体、それは……。


(一連のARウイルス、あれを転売推奨するような転売ヤーが出てくるとは予想外だ)


 青凪が討伐していた転売ヤー、その多くが転売行為の推奨動画でARウイルス……ガーディアンで言うチャフグレネードの転売を行っている人物だった。


 そのため、ダンジョン神のダンジョンへは一切向かわず、例の装備品転売ヤーなどもスルーしていたのである。


 せっかく集めたアレを、転売でもされて海外へ流出したら最後、こちらが捕まるのは時間の問題だったからだ。


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