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アバターシノビブレイカー_対電忍【小説家になろう版】  作者: 桜崎あかり
プロローグ『その名はダンジョン神』
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プロローグその3

 一般社員のやってきた場所、それは足立区にある地下鉄の駅。


 厳密には、地下鉄の駅にあったダンジョン、というべきか。地図アプリではあったはずのダンジョンだったが、アプリごと運営が……というオチになった。


「結局、ここにダンジョンはなかったのか」


 冒険者のコスプレをした男性と別れ、彼は別の地図アプリを立ち上げ、指定された場所へと向かう事に。


 丁度、この地下鉄に乗って1駅越えた先である。ただし、地下鉄の駅から直通でダンジョンへ行けるわけではない。


 まさか、地下鉄の駅からデパ地下へ行くような感覚でダンジョンへ行けるとでも思ったのか……そこまでダンジョンが日常に溶け込んでいたら、反応も異なるだろうが。



 駅を出て、徒歩1分も満たない場所に、それはあった。見た目は高層ビルなのかもしれないが、正真正銘のダンジョンである。


 先ほどのバージョンが古かった地図アプリにも、このダンジョンは登録されていた。営業に関しては……。


「メンテナンス中のため、臨時休業?」


 入口の自動ドアは開き、エントランスとでも言えるようなエリア及びゲームコーナーは営業をしているのだが、肝心のダンジョンは臨時休業だった。


 デジタルで表示しているような立て看板には『本日、ダンジョンシステムの緊急メンテナンスを行っております』と表示されている。


【ダンジョンシステムのメンテナンスが完了次第、ダンジョンを開放いたします。そのほかの施設は利用可能です――】


 こうは書かれているが、ダンジョンシステムとは何だろうか?


 一般社員にはわからずじまいなので、他のエリアを散策して様子を見ることにした。


 エントランスでは装備を購入でき、このエリア以外でもダンジョンであれば使用は可能となっている。先ほど遭遇した冒険者も、ここで装備を買ったのだろう、と品ぞろえを見て納得した。


 ゲームコーナーはダンジョンとは無関係なリズムゲームや対戦格闘ゲームといったジャンルの物が置かれているが、システムとしては類似のものを使っているため、ダンジョン探索用の装備でプレイすることも不可能ではない。


(拡張現実、ARを使用した物か)


 他のゲームを見ていくうちに、一般社員はダンジョンのシステムが拡張現実を利用したものだという事に気づく。


 そうなってくると、ダンジョンに存在するモンスターなども実際はCGであり、リアルには存在しないことになるが。


 ダンジョン自体はメンテナンス中だったが、一部モニターではデモムービーが流れており、それを見て一般社員は今回のダンジョンのからくりを知った。


 廃墟を再利用したようなダンジョンでは、近隣住民やゴミの問題もあるだろう。迷惑配信者によるアフィリエイトや承認欲求目的だけのダンジョン配信によって、被害を受けた場所は数知れない。


 こうした配信者に対応するために、ある企業がダンジョン配信用の拡張現実フィールドを用意し、それが迷惑配信者以外の配信者などが拡散、現在に至っているという。


 ここまでの流れになるのに2年は必要だった、と公式ホームページには書かれているが、それをわずか数時間で構築したダンジョン(しん)は別の意味でも革命を起こしたのかもしれない。



 一方で、ダンジョン神の方もダンジョンの製作後、モンスターデザインなどを行い、次々と設定していく。


 しかし、彼の方はこれだけでは他の似たような電脳空間上におけるダンジョンと変わりない、と考える。


 何か他と違う要素が必要だ、と。その中で、彼は各エリア内に何か微妙な何かを感じた。


「このエリアは、こちらのアクセスを……受け付けない?」


 ダンジョン神のような高性能AIでもアクセスができない、本当の意味でも謎のエリアが各ダンジョンに1つ存在したのである。


 4エリアのダンジョンまで作り終えているので、それぞれに未開拓エリアが合計4つある計算だ。


「現状では放置するしかないか。ダンジョンを運営していくうえで不都合が発生したら、その時に対応すればいい」


 ダンジョン神も、これに関しては仕方がないので放置を決めることにする。


 一方で、様々なダンジョン配信を見てきて思う部分もあった。


「しかし、他のダンジョンとは別の一面を出せれば……」


 考えはするが、なかなかアイディアが浮かばない。他の配信動画を見ても、決め手となる要素が分からないのである。


 いくらAIとはいっても、学習能力があったとしても、人間の手ではなければ出てこないようなものだってあるだろう。


 その中で、ダンジョン神はある存在に気付く。


「これは、まさか……?」


 アクセスを受け付けなかった謎のエリアの一つ、そこに突如として侵入者が現れたという警報音が鳴ったのだ。


 このダンジョン自体、まだ宣伝や告知といったたぐいもしておらず、ある意味でもオープン前といえる。


 その中で、まさかの侵入者が現れたことはダンジョン神にとっても痛手だった。対処を間違えると、サービス前にサービス終了になりかねない。


 侵入者に対し、ダンジョン神はあるものを差し向けることに。モンスターの方はデザイン途中や調整前なものもあって、出すことは出来ないのだ。


 唯一調整が完了し、今回の侵入者に対して出せたのが……セキュリティ対策用に準備していたロボット。


 その形状は、いわゆるリアル系列と呼ばれるようなSFチックやミリタリー色が強いものではなく、平成時代のスーパーロボットにも近い重量感のあるようなデザインをしていた。


 このロボット自体はダンジョン神がデザインしたものではなく、ダンジョン内に放置されていたデータのリサイクルに近い。


 そのため、デザインは終わっても中途半端に調整されていなかったモンスターよりは、こちらを使った方が都合がよかったのである。



 侵入できない謎のエリアのドア、その目の前にいたのは……全長2メートルという蒼をベースにしたカラーリングの人型ロボット、その外見は明らかに忍者といえる存在だった。


 人型ロボットではあるのだが、人が乗っているわけではない。だからといって、意思が宿ったロボットなのか、といわれると、疑問はあるだろう。


 しかし、この人型ロボットには明確な目的があった。目の前にある謎のエリア、それは悪意ある『バズり』勢力に利用されかねない存在だったのである。


 忍者刀や種子島をベースにしたようなライフルも装備しているが、そうした武器を使うような素振りも見せない。


 全体のデザイン自体は日本の忍者をたたき台としているのだが、所々が忍者というには微妙な箇所もある。


 頭部デザインは忍者をベースにしたデュアルアイだが、このようなデザインの忍者がいたろうか?


 昭和にいたか、もしくは……という疑わしい部分もある。しかし、版権作品を流用したような忍者というわけでもなかった。


 この忍者自体、SNS上で目撃された事例もなかったからである。それだけは間違いない。


(……)


 周囲を見回し、正体不明エリアの何かを発見した次の瞬間……何かを察した忍者ロボ、蒼影(そうえい)はすぐに姿を消した。


 ジャミングの類や光学迷彩(ステルス)の類ではなく、本当の意味で消えた、と言ってもいい。しばらくして、セキュリティガーディアンとしてのロボットが複数現れたので、そういう事なのだろう。


「侵入者は、すでに消えた後か」


 ダンジョン神は正体不明のエリアを見て、特に荒らされた形跡もなかったために侵入者の事を深くは考えなかった。


 忍者ロボと全長が変わらないようなセキュリティガーディアンも、持ち場へ戻るかのように正体不明エリアからは離れる。



『忍者とはありとあらゆる炎上を阻止するために存在する、対電脳の刀。忍者とは悪意ある闇の全てを斬る存在でなければならない。彼らが斬るのはあくまでも悪意ある炎上であり、それ以外のものを切り捨ててはならない』


 この一文から始まる忍者構文、その忍者が現れたのは間違いない。一部ユーザーによるSNS上にアップされた蒼影の画像、それは間違いなくダンジョン神のダンジョンで撮影されたものだった。


 何故、オープン前のダンジョンの画像が流出したのか、これは一種のリークなのではないか、という意見も出てきたが、この際どうでもいいだろう。



 間違いなく、忍者は実在したのだから。

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