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アバターシノビブレイカー_対電忍【小説家になろう版】  作者: 桜崎あかり
第9話『雪華ツバキ、初配信します』

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第9話その1

「リアル空間に、あの忍者が……」


 とある配信を部屋で視聴していた雪華(ゆきはな)ツバキは、現実に姿を見せたあの忍者に驚いていた。


 配信に蒼影(そうえい)が出てきたことには、視聴者も動揺しているのだが、忍者構文を知る者は「本物が来た」や「イベントなのか?」と様々な反応をしている。


「一体、何が起こったというのだろうか」


 思う部分は色々とあるかもしれないが、まずは様子を見ることにした。


 反射的に反応したとしても、炎上しか生み出さないのは明白だからである。


 その一方で、アバターの方も忍者という事で完成しているが、まだ調整する部分はあった。


 特にアバターのデザインは問題ないが、ある部分で悩んでいるのである。



 悩んでいるのはダンジョン(しん)も一緒だった。


「ガイドラインを色々と組んではいるが……」


 ガイドラインを強化しても迷惑配信者のような存在が現れるのは、どういうことなのか?


「装備の販売も開始した所で、このような話題は不要なのだが」


 彼にも思う個所がある。配信者は入場禁止にすれば、迷惑配信者が現れることはないだろう。


 しかし、そうした運営をしたとしてダンジョン神のダンジョンがメジャーになるのかと言われると、そうではない。


 ルールやガイドラインは必要だが、それが必要最低限でなければいけないだろう。


 過剰なガイドラインを追加すれば、逆に……。


『下手に宣伝すれば、リアルダンジョンで起きた迷惑配信者による事件が起きないとは限らないですが……作っただけで放置されるのも何か違うのです』


 ダンジョン神は、いつかの動画配信者の言葉を思い出す。炎上騒動からしばらくして、あの動画を発見してひそかにチェックをしていたのである。


 ダンジョンである以上、誰も入らないようなものを作ったとしても意味がない。彼のいう事には一理あった。


 ダンジョン探索を体験し、そこでしか得られないものを知ってもらいたい……そういった思いを彼は持っているのだろう。


 動画を作成し、解説をするだけでも労力は大きい。それも、メジャーなリアルダンジョンではなく、バーチャルのダンジョン、それも自分のダンジョンを紹介したのだ。


 それなのに、どうしてまとめサイト勢力や『バズり』勢力の承認欲求の為だけに……というのもあった。


「装備にもう少し工夫をしてみるか」


 ダンジョン神も、ダンジョン探索をしている冒険者に応えるような装備を準備しなければ……そう思いつつ、新装備を考える。


 しかし、この行動が思わぬ事件を生み出してしまうのは、装備販売を始めた翌日に判明した。



 装備解禁が行われた8月の翌日、そこではまさかの状況に驚きを隠せない男性社員がいた。


 ダンジョン運営サポートサービスでもあれば、と企画原案を会社に持っていき、会議が行われた後に、その事実を知る。


「装備の転売ヤー、一体、どういうことだ?」


 男性社員も詳しい事情は知らないので、この状況に驚くしかない。


 ダンジョン神が人工知能を使用しているのは知っているが、転売されている事実を知っているのか、と。


 学習したうえで装備の販売をしているのであれば問題はないのだが、これも向こうは想定しているのか、というのもあった。


(このままでは運営サポートサービスも水の泡に……)


 男性社員は、このままでは自分の企画も白紙になってしまい、水の泡に……と動揺する。


 しかし、だからと言ってダンジョン神に指示を出すわけにもいかないだろう。また学習した知識をリセットするような事態にもなりかねない。


 そこで男性社員が考えたのは、ガーディアンへの情報提供だった。こちらならば、ダンジョン神に影響が出たとしても大きくはないだろう。



 ダンジョン神のダンジョンの装備が転売されている一件は、既にガーディアンも若干把握していた。


 理由はタケが調査していた過程で転売ヤーの存在を把握していたのもあるが、それ以上に……。


「明らかにどこかで見覚えがある装備が……」


「版権作品のコピペとは違うようですが、あの武器は何か見覚えがありますね」


 ガーディアンからも実際に自分たちが使っているような装備がオークションに流れている、という情報が寄せられて調査した結果が……まさかの物だった。


 ダンジョン神のダンジョンの武器のベースとなったのが、ガーディアンの武器と同じルートの物だったのである。


 たたき台が同じ以上、似ている部分があるというのは当然の話だが、それ以上にガーディアンを驚かせたのは、出品されているものにもあった。


「フレームだけとはいえ、まさかのこれも出品されているのか」


「これはさすがに、ガーディアンの技術が海外へ流出することも避けられないぞ」


「しかし、使用できるのはダンジョン神のダンジョン限定とある。そこまで危険なものかどうかは……」


 同じ出品者のリストには、何とガーディアンで運用している巨大ロボットのフレームだけと思わしきものまで出品されていた。


 フレームだけというのには理由があり、カスタマイズ用のアーマーなどは別売りとのことだが……。


 それでもものがものだけに、ガーディアンの中で動揺が広まっているのは言うまでもないだろう。



 一連の転売ヤー騒動を見て、ツバキはふと思った。今こそ、初配信をする時だと。


 しかし、転売ヤーの件に便乗して『バズり』を狙っているだけと言われるのも、考えものである。


 それでも、転売ヤーのやっている行為はアウトであり、彼らの得た資金がジャパニーズマフィアの勢力強化に使われている実例だってあるのだ。


 転売ヤーの殲滅、ツバキは最初の配信する目的は決まったものの、どのダンジョンで配信を行うのか……という悩みが浮上することに。


「ダンジョン神のダンジョンのガイドラインがどうなっているか、調べてみるか」


 自室のパソコンでダンジョン神のダンジョンのガイドラインを調べると、そこには衝撃的な一文があった。


【ダンジョン配信をするにあたって、許可は不要とします】


【ただし、悪質と判断される行為、他ダンジョンや配信などでの誹謗中傷は禁止です。場合によってはアカウントの凍結を行います】


 ダンジョン探索でアカウント停止とは……どういうことなのか?


 ぱっと見、ガイドラインを見る限りではダンジョンを舞台としたゲームという訳ではない。


 それでアカウント凍結とは……と思ったが、バーチャルアバターのアカウントを凍結、とも受け取れるだろう。


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