第8話その2
【忍者とはありとあらゆる炎上を阻止するために存在する、対電脳の刀。忍者とは悪意ある闇の全てを斬る存在でなければならない。彼らが斬るのはあくまでも悪意ある炎上であり、それ以外のものを切り捨ててはならない】
これがいわゆる忍者構文の冒頭で使われるのは有名な話になっているが、これにはガイドラインとしての意味合いもあった。
しかし、これをガイドラインと認識しているものは少ない。当たり前であるが、この一文にガイドラインとも明記されていないのだ。
その結果、ただの一文が飛躍して忍者構文や忍者大喜利、果ては忍者動画や忍者配信に使われるような、いわゆるフリー素材と化していく。
中には忍者構文をきっかけに忍者VTuberになったりする者もいるが、これは本当の意味でもイレギュラーであり、レアケースだろう。
一説によれば300年以上前に書かれた一文と噂されているが、江戸時代にバーチャル配信者や動画配信があったとは思えない。
それを踏まえると、結局は300年以上前に書かれたというのは後付け設定、というのがSNS上での見解だろう。
今回は、そういった流れを踏まえ、忍者構文で有名な一文を考察していこうと思う。
ただし、この考察には個人差があり、事実ではないことに注意されたし。
【ありとあらゆる炎上を阻止するために存在する、対電脳の刀】
この部分は、SNS炎上に限らず、厄災となりうる脅威を指すのだろう。
対電脳とはあるが、これは実際の戦いなどを想定したものではないのかもしれない。
今ならば、バーチャル配信者やメタバース的なアバターもある。電脳とは、そういう意味なのだろう。
ただ、この場合は対の漢字が使われているのが気になる。
何と戦う事を想定していたのか……この辺りは資料不足で調査が必要かもしれない。
【忍者とは悪意ある闇の全てを斬る存在でなければならない】
ここはざっくり省略してもいいだろう。
いわゆる『バズり』勢力や迷惑配信者のような存在、それ以外にも色々とあるが拡大解釈が過ぎれば、それこそ斬り捨てられる。
【彼らが斬るのはあくまでも悪意ある炎上であり、それ以外のものを切り捨ててはならない】
悪意ある存在を対電忍は斬り捨てていき、それ以外は倒してはいけない。
つまり、彼らが斬り捨てるのが悪意ある炎上を呼ぶ存在であり、それ以外の物を無差別に斬り捨ててはいけないのだ。
対電忍は偽善者などではない。だからと言って、ガーディアンのような過剰正義であってもいけないのだろう。
このようなまとめサイトの記事も拡散するほど、対電忍と忍者が結び付けられようとしていた8月、その時だったのである。
飛天雷皇忍将軍の出現、それはサイズがリアルというよりはSDに近い忍者ロボットだったのだが……忍者構文を拡散させるには充分だった。
実際、その実力は他の忍者大喜利や忍者動画で紹介されるような忍者よりもケタが違っていたのである。
動画として残っているものが少ないので、忍者番付を付けるにしてもデータが足りないというべきか。
【あの強さは尋常じゃない】
【迷惑配信者の一部が、アカウント凍結し始めているのは……】
【普通に忍者関係なしに凍結はあるし、新聞報道されているケースだってあるだろう。しかし、数が数だ】
【そのうち、迷惑配信者をどれだけ凍結したかという忍者ランキングも実装されるのでは?】
【忍者に斬られるのを恐れ、迷惑行為をしないというのは良い傾向かもしれないが、忍者がいなくてもそうしてほしい】
SNS上では、様々なつぶやきが存在し、それこそ……というのはあるだろう。
かれらもまた、忍者というワードを利用して『バズる』ことを目的とした勢力の可能性も、否定はできない。
その状況下で蒼影の目撃情報が寄せられた。
場所は、何とARダンジョンだというのである。蒼影はバーチャル空間だけの存在ではなかったのか、と。
ダンジョン内の空間には、確かに蒼影が映し出されている。サイズが若干見切れているかというと、上手くダンジョンに合わせてサイズが調整されているらしく、違和感はない。
初めてこのダンジョンへ訪れた配信者は、これをダンジョン内のモンスターだと生配信で言及したが……どうなったのかは想像に難くない。
「リアル空間に、あの忍者が……」
この配信を部屋で視聴していた雪華ツバキは、その存在に驚いていた。
まだダンジョン配信は行っていないので、どういう配信をすればいいか考えて別の配信者の配信を見に行っていたのだが、まさかの事態に発展している。
配信に蒼影が出てきたことには、視聴者も動揺しているのだが、忍者構文を知る者は「本物が来た」や「イベントなのか?」と様々な反応をしていた。
忍者構文を踏まえると、明らかにダンジョン内で炎上行為があった……とみるべきなのだろうか?




